早稲田大学 36-12 東海大学 (準決勝/2009年1月2日 at東京・国立競技場) 早大ディフェンス、東海大を制し8大会連続で決勝へ 今年度対抗戦で2敗、苦しい戦いを続けてきた早大が、これまで大量得点で勝ち上がってきた東海大を激しいタックルで仕留めた。東海大の強みは2次、3次から深くグラウンド一杯に拡げたアタックラインに相手ディフェンスを引き込み、CTB付近に立つNo8マウ、FLリーチが縦に突破を図る。タックラーが一人なら、余裕を持ったボディコントロールからディフェンスの裏へドライブしてサポートプレーヤーにオフロードパス。そのラインブレイクの瞬間から15人の分厚いサポートがどんどん傷を押し広げトライを奪っていく。この東海大の展開ラグビーに早大は真っ向からディフェンス勝負を挑み、その強い意志でリーグ戦覇者の壁を乗り越えた。 早大の勝因はまさにタックル。特にマウ、リーチへのダブルタックル。リスクを恐れず思い切って前に飛び出し、一人目のタックラーが足元に刺されば、二人目が上体に激しくあたり確実に倒す。ボールゲットのチャンスとみれば素早く3人目が相手をスイープしながらボールをオーバー。小柄ながら俊敏なCTB宮澤、BKに劣らない走力をみせるHO有田の身を挺するタックルが何度も観衆を唸らせた。 早大最初のトライはこのディフェンスの激しいプレッシャーから生まれた。前半8分、東海SO市原のキックをチャージし、SH榎本の突進からラック、早大らしいテンポで大外に展開しライン参加したNo8豊田、WTB中濱、FB田邊とつないでトライ。32分にはショートサイドを攻め、榎本からボールを受けた豊田が状況判断良く見事なロングパスを有田へ。41分には東海陣の中央スクラムからCTB長尾の縦を起点とし、SO山中が孤立するが東海大3人のタックルに恐れず飛び込んでトライを決めた。(前半19-0) その後、早大は後半11分にもリーチのキックをチャージしたPR瀧澤、30分には長尾の縦突進から宮澤が切れ味鋭くゴールに飛び込み勝負を決めた。 早大の激しいタックルからブレイクダウンが受身に回った東海大は、自分たちのリズムでゲームがつくれない。ボールを大きく動かすことで流れを取り戻そうと図るが、早大ディフェンスの飛び出しに外への展開を阻まれた。攻めに徹した後半はペナルティから早大の隙を突き連続攻撃。終盤、ついに早大ディフェンスを切り崩すと、37分にFB豊島が初トライ。そして42分には両チームの激しい攻防からリーチがグラウンド一杯に走りきって連続トライ。この日最後に日本代表レベルのスピードとフィットネスの差を見せつけた。(照沼 康彦) 東海大学の木村監督(左)と、岸キャプテン 東海大学 ○木村季由監督 「本日はありがとうございました。早稲田さんの素晴らしいプレーの厳しさ、すべての面で完敗です。自分たちが準備してきたことを出し切ることがテーマでしたが、できませんでした。チームにとって初の準決勝進出は、一つの通過点です。改めて上を目指していきたいと思います」 ──早稲田のどこにプレッシャーを受けたのか? 「ブレイクダウンが強いのは予想通りでしたが、こちらはボールを大きく動かそうと意図したのですが、バックスもフロントスリーでプレッシャーを受けて内に内に行かざるをえませんでした。そこで相手のディフェンスの網に引っかかって、早稲田さんのタックルの強さ、ボディコントロールでターンオーバーされました」 ──ハーフタイムの指示は? 「後半は風下になるので、ぎりぎりの点差と思いましたので、立ち上がりに攻めようと、ラインアウトも若干修正して臨みましたが、結果的にうまくいきませんでした。ただ、プレイについては迷いなくやれたのではと思います」 ○岸直弥キャプテン 「本日はありがとうございました。前半は、僕のラインアウトをはじめ、パスもミスが多くて、なかなか準備してきたことを出すことができませんでした。後半は攻めるしかなかったのですが、早稲田さんの激しいディフェンスにプレッシャーを受けてしまいました。しかし、後半は少しではありますが、自分たちのやってきたことを出せたと思います。この悔しさを次の世代の糧としてほしいと思います」 ──コンディションは? 「きついことなく、逆に練習でも動けている状態でした」 ──早稲田の印象は? 「速いディフェンスと一人ひとりのワークレートの高さ、予想したよりもしつこいブレイクダウンが印象に残りました」 早稲田大学の中竹監督(左)と、豊田キャプテン 早稲田大学 ○中竹竜二監督 「今日は東海さんの、本当にどこから出てくるか分からないアタックに、理論どおりで行けば得点に大差がつくところを、いかに早稲田が崩すかというゲームでした。ラグビーセオリーでいけば、普通やらないリスクを選択してやりきった、覚悟を決めたプレーに徹することができました。最後に2本獲られたシチュエーションには東海大さんの意地を感じましたし、選手も負けたような顔で引き上げてきました。最後は反省しきりのゲームでした。今年はラグビーを知っている人は誰もが東海大が強いと言われていたと思いますが、チャンスを掴んで何とかしたというゲームです。大きかったですね。今年はいろいろ実のあるゲームをしてきましたが、最後の残り一つ、早稲田らしいゲームにしたいと思います」 ──ゲームプランは? 「ボールを蹴らせないためには、人数をかけてもブレイクダウンで圧倒するというプランでした。多分、東海大さんももう一本パスができれば良い形で出せたでしょう。多分、無茶な古臭いシャローディフェンスはやらないと思っていたのではないでしょうか」 ○豊田将万キャプテン 「やることを明確にして徹底できました。そのため、伝統対実力の試合でしたが、何とか勝つことができました」 ──間が短かったが? 「中4日と少ないので、新しいことはできない、1年やってきたことを出そうと、ガムシャラで良いと臨みました。マイクや安井君にボールを持たせないという意識は特になく、こちらのディフェンスが良かった結果です」 ──リスクがある戦いだったが? 「僕らとしては、そんなにリスクを背負っている感じはないので、思い切って勝負できました。セットプレイも普通でした。いつもの通りです」 ──決勝への抱負は? 「僕は『荒ぶる』が歌えれば後はどうでも良いと皆に言っています。残りの時間を有効に使って、中竹さんを泣かせたいです」