「みなとスポーツフォーラム~2019年ラグビーワールドカップに向けて~」の第三回目は、サッカー解説者で、1998年のサッカーワールドカップフランス大会の出場経験を持つ元日本代表の山口素弘氏をお迎えし、7月14日に開催しました。つい最近幕を閉じた2010年サッカーワールドカップ南アフリカ大会の決勝が、スペイン対オランダとなることを6月11日付の日本経済新聞で見事分析されていた山口氏、タイムリーな話題も含め講演していただきました。

ゲストの山口素弘氏(右)  
ゲストの山口素弘氏(右)

「競技の幅を超えて観たいと思えるのがワールドカップです」
「自国開催は、サポーターの応援はもちろん、環境、準備段階でアドバンテージになります」
競技は違えども、サッカーのワールドカップを日本代表選手として、また、解説者として経験した山口氏のお話からは、2019年ラグビーワールドカップ日本開催の成功へのヒントが多く語られました。

2010年サッカーワールドカップ南アフリカ大会の興奮冷めやらぬ中、前評判以上のベスト16で大会を終えた日本代表躍進の理由について、「最大の勝因は、運動量で上に立つというベースを変えないで、相手に応じて戦えたことですね」と語り、大会直前まで日本国内でJリーグ戦がある難しさの中、対外試合での成長が勝利につながったと、マッチメイクが重要だと指摘されました。
ご自身のサッカーワールドカップフランス大会出場経験からは、「どの国の選手にも緊張や怖さ、プレッシャーがある。格上相手でも意識の差でどうにでもなるのがスポーツですよ」と、ワールドカップは4年間の全てをかける試合であることを強調されました。また、同大会でのメキシコやチリなどの南米各国の躍進についても「基本は国内のリーグ戦のレベルがその国のレベルです。だけれども、リーグ戦のレベルがそんなに高くはないが集まるといい戦いができることはヒントである」と山口氏ならではの視点から分析していただきました。

サッカーとラグビーの交流についてもお話しされ、現サッカー日本代表監督の岡田氏が、「接近・展開・連続」というラグビー元日本代表監督の故大西鉄之祐氏が提唱したキーワードをサッカーに取り入れていたことを挙げられました。日本人が海外選手に比べ体格、体力的に劣ってしまう点など、考え方は似ている、とラグビーの要素をサッカーの練習に取り入れることもあるそうです。
ワールドカップの自国開催についても、2002年サッカーワールドカップ日韓大会時の例を挙げられ、「経済効果や視聴率だけではなく、子供にとって身近で接することができるのは大きな財産ですよ」と、ワールドカップをきっかけにサッカー熱が高まったと、ワールドカップから社会現象を引き起こすことへの期待を語ってくださいました。そして、ラグビー日本代表選手に対しては、「自分達らしい戦いをしてほしいですね。監督、スタッフ、選手でつくり上げたものを披露してほしいです」とエールを送られました。

フォーラム参加者との質疑応答

  自身の経験をたっぷりとお話しいただきました
自身の経験をたっぷりとお話しいただきました

日本のラグビーには一体感がないように思います。日本代表選手に一体感をもたせるためにはどうしたらよいと思いますか? という質問に対し、
「代表チームの難しさはいろんなクラブの選手がいることですね。集まる時間の短さはありますが、それでも合わせられるのが代表です。大きな目標を立てることですね。今回のサッカー日本代表はうまくいっていると思います。選手が、試合に出られる、出られないはあっても、チームとして何をしなければいけないのかがわかっています。他国はエゴだらけでした。それが結果につながったと思います」
と岡田ジャパンをずっと見てきた視点からお答えいただきました。

サッカーワールドカップフランス大会の時、現地で快く感じたこと、不快に感じたことはありますか? という質問に対しては、
「グラウンドの整備がパーフェクトだったことです。キャンプ地は我が家のようなものです。たとえ深夜に帰ってきても、ベッドの硬さなどの無理を聞いてもらいました。日本代表を心から応援してくれて、負けた時には一緒に泣いてくれましたね。不快に感じたことはなかったですね」と選手として現地の人と交流した体験を披露しつつ、お答えいただきました。

また、山口さんは地域との交流が深いチームとそうではないチームでプレーされたと思いますが、ファンとクラブの在り方についてどのようにお考えですか? という質問に対しては「この方はよくご存じですね。違うチームを経験して地域密着、クラブとは何かと考えさせられましたね。ファンが練習を見に来てくれることはもちろん、老若男女が楽しんでいるのに勝てないと申し訳ないです。新潟でプレーしていた時は、震災にあった方たちがサッカーを見て勇気づけられたという話を聞きました。そういう勇気の与え方があることを知ることができるのは地域密着していて良かったことです」とあまりに詳しいフォーラム参加者に驚きながらも、正直にお答えいただきました。

ワールドカップを通じで、多様な人々との交流や感動、興奮を経験した山口氏は「競技の幅を超えて観たいと思えるのがワールドカップ」と、ワールドカップとは、競技自体の面白さとは別のパワーであり、そこから生れるものがあると表現されました。自国開催で求められる日本代表の勝利については、「サポーターの応援はもちろん、環境、準備段階でアドバンテージになります」とワールドカップ成功になくてはならない日本の勝利を得るための助言をいただきました。まさしく「みなとスポーツフォーラム」が目指す、応援、環境、準備などの「支える」コミュニティーが必要であるとおっしゃいました。
今後は山口氏自身も解説者としてメディアなどを通じ、ワールドカップという4年に1度の大きな大会の魅力や、老若男女に勇気を与えることができるスポーツの魅力を伝えていきたいと語ってくださいました。

◆次回開催のご案内
次回のみなとスポーツフォーラムは平尾誠二氏が登場!!
9月7日(火)に開催いたします。詳しくはこちら