マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

筑波大学 55-28 慶應義塾大学
【セカンドステージ 2012年12月16日(日) /東京・秩父宮ラグビー場】
衆議院選挙のこの日。一戦目に早稲田、二戦目に慶応と対抗戦の伝統校が試合をすることもあり、8,000人以上の観客がスタンドを埋めた。
プールAの2戦目、ここまで1勝同士の勝ち点10の筑波と、勝ち点6の慶応。慶応のキックオフで試合が始まった。

対抗戦からの連戦の為か、筑波バックスの動きが重い。そこへ慶応の低いタックルが容赦無く突き刺さる。攻守が変わっても、やはり筑波フィフティーンの動きは精彩に欠ける。1分過ぎ、筑波バックスにオフサイド。慶応、敵陣ゴール前でラインアウトの機会もチャンスを生かせず。
陣地を取り合うキックの応酬で、お互いに相手の出方を探り合う。ゲームが動いたのは9分、FWからのボールを慶応13番 大石選手が切れの良いステップで切り返し中央を突破。この密集から出たボールを、慶応10番 宮川選手が右コーナーに向けキックパス。レイトチャージ気味のタックルを受けながらも蹴られたボールは、完全にフリーとなっていた慶応14番 瀧口選手の胸にスッポリおさまりそのままトライ。ゴールも成功し0-7。慶応が狙っていた先制点を挙げる。

このまま波に乗りたい慶応であったが、1分後、自陣22mからのタッチキックを筑波7番 粕谷選手にチャージされ、そのままトライ。あっさり同点に追いつかれてしまう。
15分にはPGで筑波が3点を追加。このまま流れが筑波に傾きそうになった前半20分。筑波にノットリリースの反則。ゴール前でラインアウトの機会を得た慶応、ショートラインアウトからハーフの位置に入った慶応7番 森川選手が、ジャンプキャッチしたFW選手からリターンボールを受け取りラインアウト中央を突破、そのままゴールエリアに飛び込みトライ。ゴールも決まり10-14と再びリードを奪い返す。慶応のサインプレーに対応出来なかった筑波。シーズンを通して慶応のラインアウトの精度が徐々に上がってきた現われである。

追いかける筑波、ここからようやく本来の動きを取り戻し、すぐさま反撃。22分、筑波14番 彦坂選手が力強い走りでカウンター、50mを突進。ゴール前のラックから早い球出しで15番 内田啓太選手に繋げてトライ。キックも決まり17-14とあっさり逆転。

30分にはFWのサイド攻撃から筑波5番 鶴谷選手がトライ、24-14。
35分には筑波9番 内田啓介選手のコーナーに向けたキックに15番 内田啓太選手がすばやく反応し猛然とチャージ。ラッキーバウンドもあったが、無難にキック処理をしようとした慶応BKを置き去るかのようにボールを奪いそのまま中央にトライ。絶対にあきらめない、筑波キャプテンの今シーズンに対する気持ちを表すかのようなトライだった。ゴールも決まり31-14で前半を折り返す。

サイドが変わった後半。前半の反省を活かし序盤から筑波が攻め続ける。8分にはFWがモールトライ、11分にはペナルティーからFWが素早く対応し連続トライ。一気に43-14と点差を広げる。
何とか食いついて行きたい慶応、選手を入れ替え流れを変えようとする。筑波陣地にてボールを支配し続けるもなかなか突破口が開けない。25分、ゴール前で筑波の反則を誘い、PKから5番 山田選手が飛び込み、ようやくトライ。ゴールも決まり43-21。
追いつきたい慶応であったが、終盤やはりフィジカルで勝る筑波の動きが際立つようになる。入れ替えで入った21番 片桐選手のステップに観客もどよめく。
筑波が28分、36分にもトライをあげ、55-21とゲームを決定付けた。

しかし最後まで諦めない気持ちを見せてくれた慶応フィフティーン。終了間際の40分、筑波のディフェンスに気の緩みが出たその隙を突き、左サイドに展開し22番 川原選手がトライ。ゴールも決まり55-28となったところでノーサイド。
負けられない試合にきっちりと勝った筑波が、プールAからのファイナルステージ、準決勝進出を決めた。念願の日本一の夢へまた一歩近づいた。
また、最後まで諦めなかった慶応のトライを、セカンドステージ最終戦、そして来シーズンに繋げてもらいたい。

会見リポート
 

慶應義塾大学の田中監督(右)と茂木キャプテン

慶應義塾大学

○田中真一監督

「9月の対抗戦初戦から3ヶ月後の成果を見せようと、意気込んで本日の試合に臨みました。最初の立ち上がり20分は良いスタートでしたが、スコアを取ってから、また相手に取られるということで突き放すことができず、筑波大学さんのペースになってしまいました。低く突き刺さるタックルで対抗しましたが、相手のフィジカルの強さや細かいプレーの精度の差がスコアの差に表れました」

──ファイナルステージ進出が難しくなった中での、次の試合へのモチベーションは?

「次の法政大学戦は、伝統校同士の戦いでもあり、慶應義塾大学のラグビーのプライドをかけた試合になります。全力を尽し、来年につながる試合としたい」

──フィジカルを重視されているが、筑波大学との対比で足りないところは?

「フィジカルの積み上げで、秋から冬に向けて力の充実を感じていた中で戦いました。しかし、筑波大学さんは勝ち方や勝負勘に鋭く、ピッチでの冷静さなどがありました。相手との点差はつめきれませんでしたが、我々は気持ちで負けることなく誇りをもって戦いました。本日は、学生達が本当に良く頑張ってくれました」

○茂木利和キャプテン

「3ヶ月ぶりの対戦なので、今季やってきたラグビーを出して慶應の成長ぶりを見せたかった。大学選手権では、ディフェンス、ワンキル、攻撃のシェイプを重点に取り組んできました。前半はサインプレーが決まりましたが、後半は思うようにいかなかった中での最後のトライは、まさに15人によるトライで嬉しかったです」

──3ヶ月で筑波大学が変化したところは?

「基礎スキル、ブレークダウンで、筑波さんはさらに成長していました」

──最後のトライはボーナスポイントを意識したものですか?

「いえ、最後まで攻める、慶應のラグビーを貫くという気持ちによるものです」

 

筑波大学の古川監督(右)と内田キャプテン

筑波大学

○古川拓生監督

「簡単なゲームになるとは思わなかった。選手達の体が重かったが、フィットネスを全面に押し出す慶應義塾さんに勝つことができたのは大きい。シーズン後半となり上り調子となっており、力強いメンタリティも発揮できました」

──本日4トライを取られたことについては?

「ディフェンスのセットの重さ、体の重さ、ディフェンスの対応の悪さで4トライを取られたのが今後の課題です」

──プールAで1位が確定したが、次戦に向けてのイメージは?

「次戦は、厚みを含めてチームをもう一つ上げていくために重要な一戦と考えています」

──竹中選手のケガの状態は?

「まだ良い状態ではありません」

──ファイナルステージに上がっていく対抗戦の他のチームと再戦することについては?

「ミスや精度の部分にこだわり、筑波のプレーを信じたい」

○内田啓太キャプテン

「セカンドステージで最も警戒すべき慶應義塾大学に勝つことだけを考えていましたが、個人個人のところで圧倒し、ディフェンスを修正した結果、勝つことができ嬉しい」

──筑波大学には研ぎ澄まされた勝負勘とピッチでの冷静さがあると慶應義塾大学の監督が記者会見で発言されていたことについては?

「ミスやペナルティが減っています。相手のペースになったところで、それを止められるチーム力をシーズン通じて覚えてきたことが、成長の証になっていると思います」