マッチリポート 第49回 全国大学選手権大会

早稲田大学 10-38 帝京大学
【ファイナルステージ 準決勝 2013年1月2日(水) /東京・国立競技場】
正月2日恒例の準決勝第1試合には、対抗戦の早大と帝京大が登場し、好ゲームを期待するラグビーファン19681人が国立競技場に集まった。

快晴、しかし強風の国立競技場で、帝京はあえて風下を選択してこの勝負に挑んだ。
12時20分、早大SO小倉がキックオフ。
風下でキックを封印した帝京は、自陣からもFWがショートサイドを連続して攻める強気の立ち上がり。また両チームがこだわったスクラムでは、PR出渕が早大キャプテン上田と激しく組み合った。
風上で得点にこだわりたい早大は、開始7分にSO小倉がロングPGで先制。
その後もスクラムからのカットパスでWTB中づるを走らせリズムを掴みたい。13分にはキック処理のミスをついて帝京陣深く入り、ラインアウトモールからHO須藤がゴールに飛び込みリードを奪う。(10-0)

一気に波に乗りたい早大だがスクラムでの苦戦と勝負所でのハンドリングエラーが続く。帝京は自陣でのタックルで耐え、少しずつエリアを奪い取った。
この日も前半19分にSHに流を投入し、早くも勝負をかける。

帝京は大学ナンバー1の強いヒットと激しいスイープで、徐々にブレイクダウンを支配していく。早大陣中央でのペナルティからはPGよりもラインアウトを選択し、強気のFWが前に出る。ここから早大ゴール前でのラインアウト、スクラムと連続するセットプレーを押し続け、ついに30分LO小瀧がポスト下に飛び込んだ。(10-7)

後半風上に立った帝京は、早大陣に確実に入り、ゲームを自分たちのリズムで展開していく。SO中村の深い位置へのキックオフから攻撃にかかると、ラックからのアタックにFWを前でぶつけると見せ、その裏へ、外側へとボールを動かす。前半は良く前に出て激しいタックルを繰り返してきた早大がボール周辺に寄りすぎたフェイズを見逃さずに思いきってオープンにボールを廻すと、開始2分でFLイラウアがDFを突破して逆転のトライ。(10-14)

ここからは風上に立った帝京が自分たちのペースをしっかりと守り安定した攻撃を繰り返す。その後も、帝京は付け入る隙を与えずPGと3つのトライを奪って早大を圧倒。前半の我慢と後半での攻撃というプラン通りの戦いをみせ、確実な勝利で決勝に進んだ。(10-38) (照沼 康彦)

会見リポート
 

早稲田大学の後藤監督(左)と上田キャプテン

早稲田大学

○後藤禎和監督

「こんな結果になってしまいましたが、あれだけ、後半に点差がついたということは地力負けだと思います。今日はセットピース、スクラム、ラインアウトが勝敗のポイントと考えていました。どれだけペナルティをしないで、ディフェンスし続けられるかに焦点を絞ってきました。前半、ちょっとスクラムの前段階のとっかかりでプレッシャーを受け、ゴール前で失点させられました。それがすべてです。風上の前半で、もう少し1本、2本獲って後半に臨みたかったですね」

──ハーフタイムの指示と、スクラムの出来については?

「基本的には、前半のスクラムでのペナルティをなくすことと、風下になるので有効なキックオプションが使えなくなることを伝えました。向こうはFWで来るので、こちらは外で勝負とも言いました。スクラムの優劣については、帝京さんも当然プレッシャーを掛けてきましたし、準備が我々を上回っていたと思います。後半は相手との間合いなど、スクラムは修正できたと思います」

──帝京との力の差は?

「点差がすべてです。これだけの点差ですので、遠い背中を追いかけている状況です」

──大学選手権のシステムが変わった影響は?

「システムがいかに変わろうと、どのチームもイコールコンディションです。早明戦からハードな試合が続くのはシーズン前から分かっていましたので、チーム力の底上げを図ってきました。ある程度の成果は実感しています。せっかく、こうしたシステムにするのであれば、伝統的スケジュールを調整する難しさはあると思いますが、それぞれのプールから2チームずつ準々決勝に上がるのも、大学ラグビー全体の底上げにつながると思います」

○上田竜太郎キャプテン

「本日はありがとうございます。後藤さんも言ったように、セットピースで体を張らなくてはいけないのに、チームをまとめられませんでした。僕のペナルティから崩されました。本当に悔しいです」

──前半から修正できたスクラムは?

「前半、相手は3番の選手が逆ヘッドになるスクラムを組んで来ました。そこを修正して8人で組むようにして、後半からは良い形で組めました。点差が開いても負ける気はなかったので、トライを獲ろうとしていました」

──対抗戦よりスコアが開いたが?

「帝京さんは一人一人が強いです。特にセットピースのスクラム、ブレイクダウンが強かったです」

 

帝京大学の岩出監督(左)と泉キャプテン

帝京大学

○岩出雅之監督

「あけましておめでとうございます。本日の試合では、4月からどれだけ伸びてきているか、まずはその実感をしようと、勝負だから勝ち負けは大切だが、中身をしっかり出そうと臨みました。セカンドステージで勝利しましたが、勢いが感じられないと、両チームのスタッフは同じことを考えていたと思います。前半、風下からのスタートで、選手は我慢強く戦ってくれて、後半はしっかり詰め切ることもでき、トータルとして良い集中力でコミュニケーションができた試合でした。できれば、決勝戦で戦いたい相手でした。僕自身にしっかり恩返ししたいとか、いろいろな思いが早稲田さんに対してあります。後藤さんも我々のことを口にしてくれて、チームを鼓舞してくださったし、くじ引きで相手が決まるのは止めてほしいと思います。気持ちの入ったゲームになったのも、素晴らしい早稲田さんのおかげです」

──ハーフタイムの指示は?

「やってきたこと、やるべきことを確認し、ゲームプランの修正はまったくするつもりはありませんでした。学生は爆発力を持っている空気がありました」

──史上初めて四連覇に臨むが?

「指導者として一年積み上げてきて、良い時も甘くなる時もありました。厳しくするときもくよくよさせず、さらに、この時期は備えをしっかりしたいと思います。当然、嬉しさ、喜び以上にやりがいがあります。その思いはしっかり大切にして、それ以上に、この一年やってきたこと、やるべきことをしっかり出せる試合にしたいと思います。結果は優勝と四連覇が付いてきますので、悔しい思いをしないように、プラスアルファで使えるものは使っていきたいと思います」

○泉敬キャプテン

「あけましておめでとうございます。抽選で早稲田さんと当たることになり、自分たちは気迫あふれるプレー、前半のホイッスル直前からファイティングスピリットを見せようがテーマでした。前半、風下でしたが、我慢できた部分があったし、攻め切れたところもありました。後半は風上でどんどん攻めようと臨み、良いコミュニケーションで良い攻め方ができました。課題もあるし、良かった点もありました。決勝戦に向けて修正し、自分たちらしくチャレンジャーとして臨みたいと思います」

──良かった点は?

「まず、FWでしっかりゲームを進めようとして、コントロールできたのかと思います。ノックオンなど細かなミスもありましたが、セットピースも今日はスクラムもラインアウトもしっかりプレッシャーを掛けられました」

──コイントスは?

「勝って風下を取りました。前半、しっかり我慢して後半は風上で攻めていこうという考えでした」

──スクラムで圧倒できたが?

「自分たちが強化してきた部分で、この一週間は8人全員で組むことをやってきました。3年の出渕がよくやってくれました」

──史上初めて四連覇に臨むが?

「決勝戦に進めるのは、非常に幸せなことです。過去の先輩たちがひたむきに積み上げてきてくれた結果だと思います。チャレンジできる幸せを感じて、日々過ごしています。悔いのないように、部員全員で戦っていきたいと思います。部員146名が一緒の方向を向いていると思います。本当に、これからまだまだ伸びるチームだと思います」