マッチリポート 第50回 全国大学選手権大会

筑波大学 17-16 東海大学
【ファイナルステージ準決勝 2015年1月2日(金) /東京都・秩父宮ラグビー場】
今年度の大学選手権も年越しチームは関東勢の独占となった。また、その中でも、3チームが対抗戦グループのチームが占めている。その一角、筑波大学は第2ステージ最終戦、明治大学に対抗戦での大敗の雪辱を果たして上がってきた。一方、対抗戦グループの早稲田大学との接戦を制して対早稲田戦初勝利、唯一リーグ戦勢から準決勝に上がってきた東海大学。国立競技場改修に伴い久々の秩父宮ラグビー場に舞台を移しての戦いとなる。

年明け早々一級の寒波により底冷えのする中、筑波のキックオフで始まり、そのまま筑波が東海陣深く攻め入り攻撃を続ける。しかしながら、なかなかフィニッシュに持って行くことができない。そんな中、東海は筑波のミスに乗じて筑波ゴール前に一気に攻め入る。そして9分、22mライン上ほぼ中央から東海FB野口竜司がドロップゴールを成功させてあっさりと先制する(0-3)。

このあともほとんどの時間を筑波が東海陣で攻めを続けるが、東海のすばらしいディフェンスが機能し、キャプテンCTB林大成を中心に好タックルが炸裂。筑波自慢のBKを走らせない。東海も少ないチャンスながらバックスリーが展開を図るが、これも筑波がしっかりと止める。お互いのディフェンスが機能して期待通りの閉まったロースコアゲームとなっている。

次に得点が動いたのは、ようやく31分、東海FB野口竜司が再びDGを狙う。筑波はこれに素早く反応、鋭く3人が野口めがけて飛び出す。これを見てとった野口はすかさず外にボールを展開、WTB近藤英人が余って筑波WTB福岡堅樹を振り切って左中間にトライ。1年生ながら冷静に判断した野口のプレーが光るトライであった。FB野口竜司の兄、SO大輔のゴールも決まって0-10とする。前半40分を告げるホーンが鳴った直後にも東海FB野口竜司がゴール正面約30mのDG成功。0-13と東海大学が大きくリードして前半終了。

後半先制したのは筑波、FB山下一がPGを決めて3点を返す。3-13。しかし、この後もなかなか得点が動かない。前半同様筑波が攻めるが東海の鋭いタックルで得点につなげることができない。お互いに小さなミスが続く。

試合が拮抗する中、24分、これまで筑波FWに対し有利に組んでいた東海FWがこの日3度目のスクラムコラプシングのペナルティーを獲得。おおいに自らを鼓舞する。ここから攻め込んで27分、東海FB野口竜司がこの日3本目、約30mのDGを決めて3-16。ほとんど誰もがこれで勝負ありと確信した。試合後の記者会見でも林キャプテンが語っている。「今日はディフェンシブな戦いになる。DGで着実に得点を重ねることが重要」と、ここまで狙い通りの戦いとなっている。

しかしこの状況でも筑波フィフティーンはあきらめていなかった。ここまで良い場面でボールを持てていなかった日本代表WTBエース福岡堅樹が快走ではないものの、粘り強く大きくゲインしたところからチャンスをつくり、最後はFWでねじこんで、34分No8山本浩輝がゴールポスト左にトライ。(ゴール成功)10-16。ワンチャンスで逆転できる得点差とする。

直後のキックオフ、定石通り東海は深く蹴り込み逃げ切りを図る。しかし、自陣22m付近でボールを受けた筑波HO村川浩喜がタッチライン際を好走、WTB山内俊輝につなぎ、FLゲームキャプテン水上彰太がゴール前5mに迫る。東海はかろうじて止めるものの、筑波は展開、36分PR橋本大吾がゴールポスト下に走り込んでトライ。真正面のゴールをFB山下一が決めて大逆転。16-17として勝負あり。終盤でのHO村川の好走、PR橋本のトライといったところが差となったか。この両チームの戦いは過去にももつれてきたが、今日の戦いも最後の5分に勝敗が決まるゲームとなった。

東海は最後に若さが出たか。先発4年生は6人。一方、U20日本代表メンバーも多く抱える。今日の反省を活かして、来季もう一度チームをつくりなおせば十分に頂点が見えてくる。

決勝までの1週間、もう一度自分たちを見つめなおして、今日の最後の10分間の戦いをいかに80分間続けられるか。今一度鍛え直して、初の優勝を目指してほしい。十分にそのポテンシャルは持っている。

(澤村 豊)
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(c) JRFU 2015, photo by H.Nagaoka
会見リポート
 

監督・キャプテン
筑波大学の古川監督と水上ゲームキャプテン

筑波大学

○古川拓生監督

「本日はありがとうございました。本当に選手一人一人がやり切った試合でした。東海大学さんはセットプレーも接点の圧力も厳しいものがあって、80分、選手がやり切ってくれたことがこの結果になったと思います」

──勝負どころのラインアウトが崩れたが?

「選手に聞いていないので、何とも言えないが、やはり、マイボールを維持できなかったところがあったと思います」

──次は決勝だが?

「自分たちは一戦一戦、取り組んで来ました。勿論、帝京さんのことは意識してきましたが、目の前の相手を超えることを目指しました。自分たちのやっていることに焦点を当ててきました」

○水上彰太ゲームキャプテン

「明けましておめでとうございます。今日の試合は、最初、エリアとか時間とか、いろんなものを取って行こうと考えすぎて、自分たちの強みの速い集散などができませんでした。最後の時間になって、攻めるという意識に全員でなったことが、この結果に結び付いたのかと思います」

──勝負どころのラインアウトが崩れたが?

「ラインアウトではマイボールを保持した戦いをしようとしましたが、あれだけの圧力に確保するのが厳しかったと思います」

──あと6点差で、残り5分の意思統一は?

「キックを蹴る前に集まった時、全員明るい表情でした。この接戦で勝てたらものすごく大きいと言って、負ける気がしませんでした」

──前半から、スクラム、ラインアウトでやられたが?

「やはり、東海さんの主な得点がトライでなく、ドロップゴールでしたので、3点ずつ刻まれるのは、心理的にはきつかったです。しかし、点差を離されて、13点差になったときも真ん中へ決めれば、まだあると言っていました。実際、75分にトライを獲って、そこからのキックオフでトライ獲って逆転してからは、落ち着いて締めていこうと。自分たちはフィジカルでも持久力でもなく、80分やっていくことを目標としていたので、相手もラスト20分で足が止まってきたので、そこは意識していました。グラウンドにいる選手たちも、ものすごくいろんなコールが出ていたので、あとは、そこに持って行くだけでした」

──残り10分でグラウンドの中では?

「まず、東海さんは一人一人が強く、身体大きく、スピードがあり、BKは決定力があり、FWもブレイクダウンの獲得率が高いです。自分たちはスタープレーヤーが何人かいるけれど、全員強いわけではありません。集散しかないと。試合残り10分まで、何をするかチームとして統一されていなかったのが問題でした。自分たちは80分で走り勝つことができたのが、この結果になったと思います」

──次は決勝だが?

「相手はどこか分かりませんが、自分たちがやってきたこと、力をすべて出せるようにしたいと思います。満足できる練習をして、しっかり臨みたいと思います」

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(c) JRFU 2015, photo by H.Nagaoka
 

監督・キャプテン
東海大学の木村監督と林キャプテン

東海大学

○木村季由監督

「本日はありがとうございました。今日は自分たちの力を100%出すと、やってきたことをしっかり出そうと臨みました。結果としてこのような形になりましたが、本当に一人一人がやってきたことを信じて集中してプレーできたと思います。この結果は残念だけれど受け止めるしかないですが、チームがより伸びるための、悔しい思いとして成長の糧にしたいと思います」

──ドロップゴールは指示したのか?

「もう、その辺は彼の判断に任せていました。このゲームに使おうと臨んで出せたし、本当に見事に決まったと思います。そういう部分だけに関して言えば、こちらの意図どおりのゲームでした」

○林大成キャプテン

「本日はありがとうございました。筑波大学さんのディフェンスに対して、僕らのアタックをぶつけていこうと、練習から一つ、ドロップゴールを取り入れてきました。お互いにアタック力よりディフェンス力が上回るゲームになると予想していました。質の高いゲームを残り10分までできたと思います。ああいう時ほど、良いディフェンスができなかったのは、筑波大学さんが上回ったところだと思います」

──最後に1本獲られた後と、2本目を獲られたリスタートについて?

「1本目の6点差の場面では、敵陣奥に入ればダメージはないと意図して、キックオフを奥に蹴ったところを、止められず、少ないフェイズで持ち込まれました。2本目は獲得しようと、意図的に短く蹴ったのですが、そこでキープされ、ターンオーバーできませんでした」

──相手のキックオフからのビッグゲインは?
「コールされたので、しっかり絡めず、組織が崩れていたのが原因です。フィットか、気の緩みか、重要な時間帯というのはこちらも分かっていることでした。筑波さんとは、僕が入学して3回目の対戦で、同じように負けて、どこかに、その差があるのじゃないかと思わされた試合でした」

──接点は東海が強かったが?
「個々のフィジカルで、圧倒的に筑波さんが強いわけではなかったと思います。しかし、最初にも話したとおり、ディフェンスがオフェンスを上回る試合ですので、筑波さんがしっかりとゲインラインに走り込んできて、そこで筑波さんに上回られたと思います」