前半終了間際までリードを許す苦しい展開も
大切なワールドカップイヤー初戦で白星発進

18日、韓国・仁川でアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)2015初戦、韓国―日本の第1戦が行われ(南洞アジアード・ラグビー競技場)、前半38分のペナルティトライとFB五郎丸歩バイスキャプテンのゴールで逆転した日本は後半6本のトライを重ねて56 –30でワールドカップイヤーの初戦を白星で飾った。

(text by Kenji Demura)

ARC初戦を白星で飾った日本代表。課題も出たとはいえRWC2015へ好スタートを切った
photo by RJP Kenji Demura
前半32分トライを奪うWTB松井。代表初キャップで記念すべき初トライを記録した
photo by RJP Kenji Demura

「日本代表の悪い習慣としてスロースターターというのがある。それをなくして、こちらからしっかり仕掛けていくというのをひとつのターゲットにしたい」(PR畠山健介キャプテン)

5ヶ月後のラグビーワールドカップ2015イングランド大会を見据え、立ち上がりからしっかり主導権を握っていくことが大きなテーマだったARC初戦。
日本は韓国の前に出るディフェンスに苦しみ、序盤はなかなか自分たちのペースにならない厳しい時間帯が続いた。

2分にFB五郎丸歩のPGで先制したものの、6分に韓国にPGを返された後、11分にPKからの速攻で、15分にはパスインターセプトから韓国FBチャン・ソンミンに連続トライを奪われ3―17とリードを許す苦しい展開となった。

「自分たちの方がシャープじゃなかったというのもあるし、最初の30分間は韓国のプレーが良かったという面もある」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ=HC)
昨年の対戦で「最初の20分間で韓国をスマッシュする」(同HC)という宣言どおり前半20分までに3トライを重ねて17―0とリードしたのとは、正反対と言っていい立ち上がり。

それでも、24分に敵陣深くのラインアウトからモールを押し込んでFLヘイデン・ホップグッドが押さえて追い上げた後、32分には「(ボールもらったのが)自分の得意なポジションだったので、取り切りたいなと思った」という初キャップのWTB松井千士が外のスペースを走り切り、さらに前半終了間際には再びモールを押し込んでペナルティトライを獲得し、何とか22―20と逆転してハーフタイムを迎えた。
「ワールドカップを見据えて、チームとしてダイレクトプレーで行こうとしたけど、相手の詰めのディフェンスにはまってしまった。インターセプトもあったり、パニックというほどではないが、相手の熱に押されてしまった」(LO伊藤鐘史バイスキャプテン)

アウトサイドCTBで起用されたヘスケスは後半6分にトライを奪うなど慣れないポジションながら活躍を見せた
photo by RJP Kenji Demura
後半38分のFLアイブスのトライで9トライ目。アタックを修正した後半はテンポがよくなった
photo by RJP Kenji Demura


松井、村田毅、宇佐美が初キャップ獲得

「アティチュードのところで負けている。どんな戦術があっても、ハードに走って、ハードにタックルしないと、何もできない」
ハーフタイムでそんなことを選手に語りかけたというジョーンズHC。

後半に入ると、慣れないアウトサイドCTBに入りながら「いいプレーをしてくれた」とジョーンズHCも高い評価を与えたカーン・ヘスケスがWTB藤田慶和の好ランから右サイドを走り切ったのを皮切りに6トライを重ねて、最終的には56―30というスコアでワールドカップイヤーの初戦を勝利で終えた。

「新しいアタックオプションも試すつもりだったが、ハーフタイムでしっかりスコアできるようにプレーしていこうと修正して、後半は失点はしたがアタックはよくなった」(PR畠山キャプテン)

この日、ジョーンズHCから「いいプレーをした」と名前が挙がったのは、松井、ヘスケス、途中出場の山中亮平。

慣れないポジションでプレーしたCTBヘスケスは「自分のチームで3、4回は13番でプレーした経験があるが、インターナショナルレベルでは初。正直ナーバスになっていた。でも、アウトサイドCTBはボールタッチ回数が多いし、ボールを持つことが好きな自分には向いているかもしれない」と、新たな役割に対して自分のポテンシャルを感じているようだった。

また、松井以外にも、FL村田毅が後半9分から10分間(出血交替出場)、さらには後半35分からの5分間プレーして、やはり初キャップを獲得。
LO宇佐美和彦も同じく後半35分から途中出場して、新たな日本代表キャップ保持者となった。

「素直に嬉しい気持ちもあるが、ようやくみんなと同じスタートラインに立てたという気持ちの方が大きい。キャップを取っていない以上、ワールドカップを目指すと言っても自分の中では現実味がなかった。他のみんなほど、日本代表のジャージが似合っていないので、このジャージの似合う男になれるように頑張っていきたい」(村田毅)

「嬉しかったけど、出場時間が短くて、アッという間でした。仕事をいっぱいやるつもりで出た。スウィープも3回くらいしかできなかったけど、やるべきことはやれたかなと思います」(宇佐美)

「前半2本のインターセプトトライを取られたように、まだ決め事どおりにしかプレーできていない。相手のDFを見ながらプレーするというような部分がもの足りなかった。一番残念だったのはアティチュードの部分。
ただ、今日も韓国戦だけを考えたなら80点を取って勝っていただろう。しかし、我々が見据えているのはワールドカップ。ARCでは今後もこういう試合があるかもしれない」
ジョーンズHCはそんふうに、ワールドカップイヤーの初戦に関して総括した。

「オプションが増えた中で選手同士の意思統一ができなかった部分があった。去年までは順目にアタックしていくという自分たちが立ち返る部分がはっきりしていたのが、オプションが増えた中どこに立ち返るのか、実際のグラウンド上で指示できなかった」(五郎丸バイスキャプテン)

5ヶ月後に控えるRWC2015で8強入りするため、新たな戦術なども加えながらのプレーとなったARC初戦。課題も多く出たが、ここから毎試合、成長した姿を見せながら5ヶ月後のイングランドでの8強入りを目指すことになる。

後半23分から途中出場したCTB山中も積極的なプレーでジョーンズHCから高い評価を得た
photo by RJP Kenji Demura
「要所要所ではコントロールできた」(畠山主将)。厳しいアウェー戦をものにした日本代表は19日からはイングランド視察へ
photo by RJP Kenji Demura