ポルトガル、フランス破りシールド優勝
コアチーム残留は果たせずも成長は実感

16、17日の2日間にわたって行われたロンドンセブンズでHSBCセブンズワールドシリーズ2014-2015の全日程が終了。
今季初めてコアチームの一角として全9シリーズに参加した男子セブンズ日本代表は、最後のロンドン大会で、ポルトガル、フランスを倒してシールド優勝。東京大会以外では今季最高成績の13位となり、勝ち点3を加えたが、シーズン総勝ち点では14位のポルトガルを逆転することはできず、来季のコアチームからの降格が決まった。

(text by Kenji Demura)

シールド決勝でフランスに大逆転勝ちして有終の美を飾った男子セブンズ日本代表。五輪予選へ大きな収穫を得た
photo by RJP Kenji Demura
コアチーム残留のためには重要だった初戦の豪州戦は0-41で大敗に終わった
photo by RJP Kenji Demura

シーズン第7戦にあたる東京セブンズで8強入りして、コアチーム残留への期待が高まった日本だったが、ロンドンセブンズの1週間前に行われたスコットランド大会では勝ち星を挙げられずに再び最下位に沈んだ。
この結果、ロンドン大会前時点でのポルトガルとの総勝ち点差は9。
ニュージーランド、豪州、ウェールズと同組のプール戦を勝ち抜き、最低でも勝ち点10を獲得できるカップトーナメントに進出することが、ロンドン大会でコアチーム残留を決める絶対条件だった。

初戦の相手は、シーズン成績で5位につける豪州。
前述のとおり、同じプールには昨季まで4シーズン連続でシーズン王者を続けていたNZがいるだけに、初日の午前中に行われる初戦の豪州戦は日本にとって大きなポイントになる試合であることは間違いなかった。
「セブンズは7分、7分の14分で終わってしまうゲームなので、入りが悪いとうまくいかないまま終わってしまう。特にいまの日本は勝ち続けているチームではないので、どうしても浮き足立ってしまう」(瀬川智広ヘッドコーチ)

降格を避けるためにこの試合にかけてきた日本の一方で、豪州にとっても、このロンドン大会、そしてその初戦は大きな意味のあるものだった。
シーズン成績で5位の豪州にとって、最終成績で4位イングランドの上に行くためにも、プール戦をしっかり勝ち抜くことは絶対必要なこと。
試合の方は、立ち上がりからそんな豪州のいいところばかりが目立つ内容となってしまう。
1分にPKから左右に大きく振られて豪州に先制トライを許すと、前半4本、後半3本の計7トライを重ねられた。
課題だったブレイクダウンでペナルティを重ね、ハンドリングエラーやタックルミスが目立った。
「トップ8に入らなければというプレッシャーの中、縮こまったラグビーになった。うまくプレーしようとし過ぎて、反応が遅くなり、やってきたことが全然出なかった」(坂井克行キャプテン)

続く対戦相手はNZ。豪州―日本戦後、NZと豪州が共にウェールズに勝利したために、日本は世界王者に敗れた時点で来季のコアチームからの降格が決まるという厳しい状況での試合となった。
それでも、「切り替えるしかなかった」(同主将)という日本は、初戦とは見違える動きを見せて、王者と対等の戦いを続けた。
前半1分にPK から藤田慶和、トゥキリ ロテ ダウラアコなどがゲインした後、桑水流裕策の先制トライでリード。
3分、6分とNZに連続トライを奪われて、いったんは逆転を許したが、前半終了間際にキックオフから藤田が再び抜け出してトゥキリがトライを決めて、14―12と逆転してハーフタイムへ。
後半に入っても、羽野一志がパスインターセプトから独走するシーンもあったが、追加点は奪えず、逆にNZに3分、6分とトライを重ねられて、残念な敗戦(14―26)。
この時点で日本のコアチームからの陥落が決まった。
「準備もしっかりできていたし、気持ちも入っていたので、(降格が決まった時のテンションは)言葉には出さないけど、裏では下がっていた部分はあったと思う」
自らの独走がトライにつながっていれば、さらに金星に近づいていただろう羽野は、降格が決まった後のチームの雰囲気をそう語る。

それでも、「トゥイッケナムでプレーするのに小さいプレーしても返ってこないから、大きいプレーしよう」(坂井主将)と、もう一度切り替えてプール戦最後の試合に臨んだ日本はウェールズとも一進一退の攻防を繰り広げた。

前半は後藤、そして初戦で足を痛めた坂井主将に代わって先発起用されていた合谷和弘がトライを決めて14―12とリード。
結局、勝負どころでのミスとペナルティが響いて後半ウェールズに2トライを許して21―24で敗れ、翌日のノックアウトステージではボウルトーナメントに回ることになった。

「セブンズの経験値を高められたのは大きい」(瀬川HC)

すでにコアチームからの降格が決まった状態で迎えた2日目。
「残留できないのがわかっていたので、自分たちが今年1年間やってきたことを全部出そうと臨んだ」(瀬川HC)日本だったが、初戦のボウル準々決勝のケニア戦は前日の豪州戦を思い出させるような立ち上がりの悪さ。
前半だけで4トライを重ねられ、後半、トゥキリ ロテ  ダウラアコ、羽野一志のトライで追い上げたものの、12―24で敗れた。

続く、大会5戦目となるシールド準決勝の相手は奇しくもシーズン成績で上回ることを目標にしてきたポルトガル。
初のコアチームとして計9大会のSWSを戦続けてきた瀬川HC率いる男子セブンズ日本代表にとって、そのライバルとの直接対決で負ければ、その時点でシーズンが終了する状況での対戦となった。
坂井主将が「もう1試合するのと、ここで終わるのとどっちがいいんですか」という話をして臨んだというポルトガル戦は、4試合の出場停止処分が終了して、今大会初出場することになったレメキ ロマノ ラヴァが2トライを奪う活躍を見せるなど26―21で勝利。
今大会6戦目となるファイナルステージに勝ち進んだ。
「試合に出られることになって、誕生日を迎えた子どもみたいに嬉しかった。勝つイメージしかなかった」(レメキ)

泣いても笑っても今季のSWS最後の一戦だったシールド決勝戦の相手はフランス。
「いつもあと一歩で勝てないフランスだったのでモチベーションが高かった」という日本だったが、なんと前半6分までに3トライを許す最悪の展開に。
それでも、前半終了間際に坂井キャプテンのチャンスメイクからトゥキリが突破して1トライを返すと、後半は「アタックしよう。この1点に絞った」(同キャプテン)という積極姿勢でフランスを追い込み、1分にレメキ、2分にも自陣から藤田が抜け出して連続トライ。
坂井キャプテンがすべてのゴールキックを決めた日本は21―19でフランスを振り切り、有終の美を飾った。

「日本のリズムになってボールをリサイクルできている時は、ボールを動かした、いいアタックができていた。ただ、課題としている粘り強いディフェンスはまだまだコンスタントに出すことはできなかった。それが現時点での実力であり、降格という結果にもつながった。
世界のトップと試合ができたのが一番の収穫。セブンズの経験値を高めていくことができたのは、選手、スタッフのみならず、協会としても大きい。シーズンを通してメンバーの入れ替えが大きく、せっかく世界のトップと戦えるチャンスをもらったのに、そこに向かって集中して強化ができたのかどうか。マネージメントとしての課題は残った」

今季、なかなか勝てなかったフランスに対して、19点のビハインドを背負いながら逆転してシールド王者としてロンドンセブンズを終えた男子セブンズ日本代表。
コアチーム残留こそ果たせなかったものの、シーズンを通しての成長はトゥイッケナムの観衆が送った大歓声が証明していた。

前半終了間際のトゥキリのトライなどで前半をリードしたが、後半NZに逆転される
photo by RJP Kenji Demura
ウェールズとも接戦を繰り広げたが3点差で惜敗(写真は先制トライを決める後藤)
photo by RJP Kenji Demura


2日目の初戦ではケニアに完敗したが、「攻める」気持ちを取り戻してシールドTへ
photo by RJP Kenji Demura