前人未踏! 帝京大の7連覇なるか
東海大が悲願の大学日本一奪取か

1月10日、東京・秩父宮ラグビー場で「第52回全国大学ラグビーフットボール選手権大会」ファイナルステージ決勝戦が行われる。
決勝に勝ち上がったのは、前人未到の7連覇を目指す王者・帝京大と、今季大学選手権までたどり着いたチームの中で唯一の無敗チームである東海大。

昨秋のラグビーワールドカップ2015での日本代表の活躍もあり、いつも以上にラグビーに注目が集まる中、大学日本一を争うにふさわしい顔合わせとなったと言っていいだろう。

両大学のメンバーだけではなく、全国の大学生ラグビー選手たちの総決算となるような熱い一戦が繰り広げられそうだ。

BV2O3275

7連覇に王手をかけた帝京大。準決勝で4トライを奪ったWTB竹山などBKの決定力は例年以上か
photo by Kenji Demura

ここ数年間、大学ラグビーにおいて常に前人未到の地をフロントランナーとして力強く前進してきた帝京大。
6年連続して大学選手権を制して、昨シーズンは日本選手権でトップリーグの強豪NECグリーンロケッツを破る偉業も成し遂げた。
HO坂手淳史主将、SO松田力也など、昨季の主力も多く残った今シーズンも無敵ぶりは続くものと思われたが、意外にも浮き沈みも多いシーズンを過ごしてきた。

「関東大学対抗戦では筑波大に17—20で敗れて、3年ぶりとなる大学チームに対する黒星を喫し、大学選手権準決勝でも関東大学リーグ戦4位の大東文化大に計5トライを重ねられる苦戦ぶり(最終スコアは68−33)。

「チャンスファクター」
8年連続で帝京大を大学選手権決勝の舞台へと導いてきた岩出雅之監督は、そんな表現で順風満帆ではないからこそ、決勝戦に向けてチームがしっかり成長してきていることを訴える。

「(大学選手権準決勝は)厳しい試合になってよかった。対抗戦最後の負けやキャプテンのケガも決勝戦へのチャンスファクターとして捉えている」(同監督)

左腕のケガのため準決勝を欠場したHO坂手主将は決勝戦ではリザーブとしてベンチ入り。
もちろん万全な状態ではないだろうが、「チーム始動以来、常に先頭に立って引っ張ってきた」(CTB金田瑛司副将)という、主将をはじめチーム一丸となって大学日本一の座を獲りにいく姿勢を前面に出す意味もあってのメンバー入りだろう。
絶対的な存在感を示す主将の穴を埋めるHO堀越康介も大学選手権セカンドステージ最終戦の中央大戦で60分、そして準決勝では70分以上プレーしたが、主将不在を感じさせない活躍ぶりを見せて不安はない。

「FWはサイズがあって、バックスリーにはいいランナーが揃っている。彼らを走らせないこと」

金田副将は東海大の印象と対策に関してそう語るが、帝京大としてもセットプレー、ブレイクダウンで主導権を握り、テンポのいい攻めで決定力のあるBKを生かす帝京大らしい展開に持ち込みたいところだ。

帝京大側の自慢のバックスリーのうち、FB森谷圭介は左膝を痛めて決勝戦を欠場するが、こちらも堀越同様、昨年U20日本代表メンバーとして活躍した矢富洋則が代役を務める。

BV2O2730

帝京大・坂手主将の穴を埋めるHO堀越も準決勝で先制トライを挙げるなど遜色ない活躍ぶりを見せる
photo by Kenji Demura

東海大秘密兵器NO8タタフ再度の大暴れは?

前述のとおり、今季負けなしのまま大学選手権決勝進出を果たした東海大だが、準決勝の明治大戦は、関東大学リーグ戦の流通経済大戦(38—31)と並ぶ大苦戦を経験した。

試合終了まで残り10分強の時間帯まで明治大にリードを許す苦しい展開。
この苦しい状況で東海大の救世主となったのが、1年生NO8テビタ・タタフ。
先にも触れた昨夏イタリアで行われた「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2015」でも日本代表の主力として同大会の残留に貢献したタタフ(同大会は世界トップ12チームが参加。最下位は下部大会に降格)。

その突破力が世界レベルで通用することはすでに証明済だったが、左足のケガのため今季まだ東海大の一員としてはプレーしていなかった。
初お目見えとなった同準決勝の明治大戦では、14—19とリードされた後半14分に途中出場。同19分、28分と、いきなり2トライを挙げてチームの逆転勝ちに貢献。一人で試合を決める活躍ぶりを見せた。

タタフは決勝戦でもベンチスタート。
おそらくは準決勝同様、後半途中出場することになるが、東海大としてはとてつもないインパクトを誇るタタフがピッチに現れる時間帯になるまで競った試合を続けておきたいところだろう。

「去年の準決勝(対筑波大、16—17)で逆転されて負けてから、僕たちの時間は止まったままだった」
東海大FL藤田貴大主将はこの1年間、大学選手権決勝の舞台に立つために費やしてきた努力の時間に思いを馳せるかのように、そう語る。

帝京大も警戒するように、まずは大型FWがセットプレー、そしてブレイクダウンでいかに優位に立てるか。
準決勝で大東大が示してくれたように、無敵と思われる帝京大もDF面で不安を露呈する場面もある。
そこを自慢のバックスリーなどスピードランナーがうまく突いて、チャンスを確実にものにしながら食らいついていけるか。

「ここまでくれば集大成。自分たちの力を100%出すしかない」(木村季由監督)

「時間はようやく動き出した。もちろん結果を出す」(同主将)

当然ながら、1年間積み重ねてきたものをすべて出し切ることで、6年間君臨し続ける王者を引きずり下ろす可能性も見えてくる。

text by Kenji Demura

BV2O1840

チャレンジャー東海大としてはFW戦で上回り、自慢のBKスリーが走り回る展開に持ち込みたい
photo by Kenji Demura

C87W7616

準決勝で明治大を下したNO8タタフ。東海大としては秘密兵器を投入できる試合にしたいところ
photo by Kenji Demura