サクラフィフティーンらしいラグビーを世界に発信

4年後のワールドカップにつながる快勝で有終の美

 

 

女子ラグビーワールドカップ(WRWC)2017最終日、11位、12位決定戦で香港と対戦した日本は、前半3本、後半5本の計8トライを重ねて44—5で快勝。

厳しい日程で強豪チームと戦いながら高めたチーム力を世界に発信するかたちで有終の美を飾った。

 

香港に44−5で快勝。念願のW杯での勝利を挙げて喜ぶサクラフィフティーン

 

知り尽くしている相手との対戦となったとはいえ、女子ラグビーワールドカップという大舞台で悪戦苦闘してきたサクラフィフティーンがその成長ぶりを世界に見せつけた「いつもとは全然違う」(有水剛志ヘッドコーチ)香港戦となった。

 

この大会に入る前から「最初の20分と最後の10分」を意識することを徹底してきたサクラフィフティーンだが、香港戦ではいきなりキックオフから攻め込んで、ブレイクダウンでのターンオーバーから日本らしいアタックで香港DFを置き去りにしてFB清水麻有が先制トライ。

さらに、10分にも自陣からWTB堤ほの花が快足を飛ばして50m以上を走りきって早くも10—0とリードした。

前半12分にトライを挙げるなど快走を見せたWTB堤。BKが取り切っての快勝となった

 

香港はこの7月の女子アジアラグビーチャンピオンシップでも2戦2勝するなど、勝って当たり前の相手ではあった。

 

それでも、先制トライを挙げたFB清水が「ワールドカップで勝つのがどれだけ大変か、これまで4試合で経験してきた」と代弁するように、チーム全員がWRWCでの勝利に飢えていただけにモチベーションは全く落ちず、むしろ「次のワールドカップでベスト8になるために、つながる試合をしようと言って」(PR齊藤聖奈 キャプテン)試合に臨んでいた。

 

日本は前半36分にもWTB加藤あかりがいい流れのアタックの後に右隅に飛び込んで15—0。

前半36分にトライを決めるWTB加藤。日本らしくワイドにクイックに取り切った

 

この大会に入り、チャンスはつくりながらもトライを取り切れず、その結果勝ち切れない試合を続けてきた日本にとって、形にしたかった「クイックに、ワイドにアタックして全員で取り切る」(PR齊藤キャプテン)スタイルのアタックを完結させてバックスリーで仕留めた3トライ。

大会初勝利へ向けて着実にトライを重ねたという意味では、前半も及第点を与えていい内容に思えたが、有水HCの評価は厳しいものだった。

「前半の内容は不満。特にブレイクダウンのところ。香港だから出せているボールもあった。ハーフタイムではそこをけっこう厳しく言いました。アイルランド戦、豪州戦と同じメンタルでそのレベルでも通用するプレーをやろう、と」(同HC )

 

 

「21年につなげようと話して、後半はそういうゲームができた。

この感覚を次のW杯まで持ち続けないと」(有水HC)

 

ウォーマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたNO8高野。若い選手たちが貴重な経験を積んだ

 

そんな指示を受けて臨んだ、今大会最後となる40分間。格上の相手とばかり中3日(3戦目から4戦目にかけてだけ中4日)で戦うという厳しい戦いを続けながらチームとして成長し続けてきた証しをWRWCの場で刻みつけるようなベストパフォーマンスを見せた。

 

再び最初のトライゲッターとなったFB清水(3分)を皮切りに、LO櫻井綾乃(21分、39分)、CTB冨田真紀子(26分)、FL鈴木彩夏(41分)と5トライを重ねて、最終スコアは44−5で待望のラグビーワールドカップでの勝利をものにした。

 

最後のコンバージョンが決まり、歓喜のノーサイド。この経験を4年後に生かしたい

 

「2021年につなげようという話をして、後半はそういうゲームができた。我慢するところは我慢できていた。香港のポゼッションも結構あったがブレイクされる感じはなかった。この感覚を次のワールドカップまで持ち続けないと。個人としてもチームとしても」(有水HC)

 

LOという消耗の激しいポジションでフル稼働しながら2トライを挙げた櫻井は「昨日のミーティングの時に浅見(敬子=テクニカルディレクター)さんから『誰がトライを取るんだ。自分でしょ』という話があって、みんな自分がトライを取るんだ、そういう気持ちでいた。ピック&ゴーはBKがあそこまでつないでくれて、FWも何度も何度も出し続けてくれたおかげ。みんなのトライを最後にいただいた」と、チームで取ったトライだったことを強調。

 

一方、この日は後半15分でPR江渕まことと交代するかたちで退いたものの、イタリア戦まではフル出場に近いかたちで試合に出続けていたPR南早紀も「今日はBKで取り切ってくれたところがよかった。これまでできなかった、思い切ったプレーをしてくれて、そこがよかった。初戦からずっとタイトな試合。きつい部分も多かったけど、やり続けて最後に勝てたのはよかった」と、苦しみながらも、サクラフィフティーンらしいトライを取り切るかたちで有終の美を挙げられたことを喜んだ。

 

その南に代わって途中出場して、この大会初めての右PRのポジションに入った江渕も「持ち味はコンタクトの部分だと思っていて、通用した部分もあった。経験の少ない中、中3日で海外の強い相手と試合をするのは大変だったけど、ワールドカップで勝つことの難しさを実際に経験しながら学んでいけて、最後にいい試合ができてよかった」と、勝利を喜ぶ一方、「この勝利を21年のワールドカップにつなげたいし、いま代表を目指している子たちが何かを感じてくれていたら嬉しい」と、この勝利が日本の女子ラグビーの将来にプラスになっていってほしいとチーム全員の気持ちを代弁する。

 

「リオと今回のワールドカップ。日本の女子ラグビーにとって大きかった。ここからどう生かしていくか」(有水HC)

 

間違いなく、サクラフィフティーンは世界の列強と戦う中で、自分たちのラグビーが通用する手応えは掴んだ。

「しっかりチャンスをものにして、クロスゲームを勝ち切る経験値とちょっとの力があれば、ベスト8は夢じゃないし、それができていればベスト8には入れていた。ワールドカップで勝ち切るのがいかに難しいかみんな経験できた。このチームはまだ若い。この経験が次のワールドカップにつながる」(齊藤キャプテン)

 

4年後の絶対目標に向けて、いますぐ始められることはたくさんある。