4月8〜10日、香港でHSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2016-2017コアチーム昇格決定大会が行われ、プール戦でブラジル、モロッコ、トンガ、準々決勝で再びトンガ、準決勝でジンバブエと、すべて失点を0に抑える安定した戦いぶりを続けた日本は、決勝でも地元・香港に24—14で快勝。
「優勝できるかどうかかかっているゲーム」(桑水流主将)と重視した初戦ブラジルに36ー0で好スタート photo by Kenji Demura[/caption]
桑水流裕策・男子セブンズ日本代表主将がそんなふうに重要視していた初戦のブラジル戦では、いきなり敵陣で相手のアタックにディフェンスでプレッシャーをかけてPKチャンスから桑水流自らトライを奪ったのを皮切りに計6トライを奪って36—0。
相手に対する情報があまりなく、「ブレイクダウンの近場でいかれた」(レメキ ロマノ ラヴァ)ところはあったとはいえ、やはり一方的に7トライを重ねたモロッコ戦は45−0。
「後半変わってくる選手たちのコミュニケーション力が低い」(瀬川智広ヘッドコーチ)という課題が露呈するかたちで後半は終了間際に松井千士が奪った1トライだけにとどまったが、前半の4トライが効いて31—0とプール戦3試合連続での完封勝ちとなったトンガ戦。
「合宿で前に出て相手に間合いを与えないディフェンスに取り組んでいたが、そこの部分が出た」
全試合に先発出場し、日本のプレーメイカーとして欠かせない存在となっている合谷和弘がそう語るとおり、それぞれの試合で課題は出たものの、堅守は崩れずにプール戦3試合終わって無失点。
「世界トップ4に入ることを目標にしているので、こんなところで負けるわけにはいかない」(桑水流主将)
昨季はコアチームとしてワールドラグビーセブンズシリーズ(WRSS)を戦い、昨年11月には今回と同じ香港スタジアムで行われたリオデジャネイロオリンピック予選を勝ち抜いて五輪出場権を獲得。
さらに今季もすでにWRSS4大会に出場してきた日本だけに、「ワールドシリーズを1年間回るなどして、スピード、うまさ、身をもって学んできた」(瀬川HC)ことを印象づけるようなかたちでプール戦では他のチームを圧倒した。
準々決勝はプール最終戦で対戦したトンガとの再戦となったが、「フラットの浅いラインだけのアタックになっていたので、アングルを変えるアタックをすること。アタックを継続しながらトライを取りきること」(瀬川HC)という課題をしっかり消化して33—0。
豪雨に見舞われた大会3日目に行われた準決勝(キックオフ時には雨は上がっていたが)のジンバブエ戦でも、厳しい条件をものともせず4トライを挙げて、相手には1トライも許さず、とうとう無失点のまま決勝にたどり着いた。
「世界トップ4へ力試しをしたいというチームに変わってきている」(瀬川HC)
その決勝の対戦相手は香港。
「自分たちのやるべきことはできている」(瀬川HC)と、ソリッドなパフォーマンスを続けていた日本に対して、香港はプール戦でドイツ、ジンバブエに敗れるなど、大会前半戦はパッとしないパフォーマンスが続いたが、準々決勝で日本の最大のライバルと予想する向きも多かったスペインを破って勢いに乗り、準決勝でもドイツに競り勝って日本とのアジア決戦に持ち込んだ。
この決勝戦は昨秋のオリンピック予選決勝の再現でもあったが、5ヶ月前は「アウェーの香港コールに飲まれた」(桑水流主将)面もあって、いきなり2トライを奪われてリードを許す苦しい展開となった日本だったが、この日は終始冷静に試合を進めた。
「10分間の試合なら最終的には自分たちが勝てるという自信はあったと思う」(瀬川HC)
前半3分に相手ボールのラインアウトをターンオーバーして、「人が多いところでやるのは気持ちいい」と大舞台好きの彦坂匡克がタテにゲインし、フォローしたトゥキリ ロテが右サイドへ。そこから今度は大きく左に振って、坂井克行、羽野一志、レメキとつないで先制。
この後、香港のエースランナーでもあるジェイミー・フッドに左サイドを快走されるシーンもあったが、「僕の役割はあそこを抜かれたら止めると決まっていたので、最短コースを走った。タックルした瞬間、がっちりボール掴んだ感触があったし、ノートライだと確信した。間に合って良かった」という羽野のトライセービングタックルでピンチを防ぎ、逆に日本は10分にディフェンスでのターンオーバーからレメキが足にかけたボールを自ら拾って2トライ目。
この後、ハーフタイムを挟んだ2分間に香港に連続トライを許して逆転されたが(12—14)、「トライの取られ方がアンラッキーなもの。ディフェンスを崩されたわけではないので、慌てる感じではなかった」(坂井)
桑水流主将中心に「ノーパニック」という掛け声も上がり、あくまでも冷静に自分たちのプレーを続けた日本は、4分に再び彦坂、羽野などがチャンスメイクして、トゥキリが逆転トライ(坂井ゴール成功、19—14)。
最後は8分に大会最優秀選手に輝いたレメキが香港ゴールにダイブして点差を10に広げて、コアチームへの復帰を決めた。
「予定どおり」
桑水流主将とともに、セブンズ代表として多くの経験を積んできた坂井は今回の昇格決定大会での優勝に関してそう言ってのけた。
確かに、日本が世界で戦っていく中で結果を出すための戦術が明確化され、それをどんな相手、どんな状況でもやり切ることができるようになってきたという意味で、現在のチームが持つ安定感はかつてないレベルのものであると言っていいだろう。
「ディフェンスの堅さは2年前より断然上がった。2年前はロシアに準決勝でギリギリ勝った。今回はそういう試合もなく、ディフェンス面で収穫が多かった」(桑水流主将)
「去年はワールドシリーズでほとんど勝てなかったチームが、オリンピック予選も含めて1年間準備してきた。去年は世界と戦うのは準備不足だなと思っていたが、いまは世界トップ4へ力試しをしたいというチームに変わってきている」(瀬川HC)
充実したパフォーマンスで再昇格を決めた勢いそのままに、まずは16、17日のシンガポールセブンズ(HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ第8戦)で世界トップ4入りにチャンレンジする。
text by Kenji Demura
プール戦2試合目の対モロッコ戦では新鋭の徳永もトライを記録した
photo by Kenji Demura
準々決勝はプール最終戦で対戦したトンガとの再戦に。前回以上の内容で快勝(写真は彦坂)
photo by Kenji Demura
豪雨の後の厳しい条件となった準決勝でもジンバブエを寄せ付けず(写真はトライを決める羽野)
photo by Kenji Demura
香港戦でハットトリックを決めるなど絶好調だったレメキ。最優秀選手・最優秀フェアプレー(Best & Fairest)賞選手に選ばれた
photo by Kenji Demura