目標であるワールドカップ勝利へ向けて好発進
昨年苦戦した対香港アウェー戦で快勝スタート

7日、女子アジアラグビーチャンピオンシップ(AWRC)2016 、香港とのアウェー戦が香港フットボールクラブで行われ、女子日本代表は前半1分のWTB堤ほのかの先制トライを皮切りに、計7本のトライを重ねるいつ方、香港にはトライを許さず39—3で快勝。
今秋、予定されている女子ワールドカップのアジア予選に向けて、幸先いいスタートを切った。
当初、参加が予定されていたカザフスタン、そして、いったんは代替え参加が発表されたシンガポールともに不参加となり、香港とのホーム&アウェーのみとなったAWRCの第2戦は28日、東京・秩父宮ラグビー場で行われる予定となっている。

1年前の同じ香港とのアウェー戦では、女子の試合の後に予定されていた男子のテストマッチが途中打ち切りになるほどの悪天候だったことも影響して、なかなか自分たちらしいラグビーができずに苦戦。後半20分過ぎの時点で香港にリードを許す厳しい戦いとなった(最終スコアは27—12)。

「去年は全く自分たちのラグビーをやらせてもらえずに、なんとか勝ち切った。今年は自分たちがやってきたことを最初から出して、自分たちのテンポで戦いたい」
試合前日のキャプテンラン時にFB田坂藍主将が語っていたとおりに、昨年の反省を踏まえたサクラフィフティーンはキックオフ直後から試合の主導権を握ることに成功する。

開始1分、ハーフウェイライン付近でのラインアウトからFB田坂主将自らラインブレイク。フォローしたWTB堤ほのかが、スピードで香港DFを振り切って、右隅に飛び込み先制。

12分にはFWがモールを押し込んでつくったチャンスに再びFB田坂主将が相手DFのギャップを突いてトライ。

さらに22分には、有水剛志ヘッドコーチが「SOがコントロールできないフェイズでどれだけラインをコントロールできるか。BKリーダーも任せている」と期待感を表明し、キープレーヤーのひとりに挙げていたCTB寺内美樹が相手DFを十分に引きつけてWTB平野恵理子にパスを通して3トライ目。

26分にも、サクラフィフティーンらしいテンポのいいアタックで素早く大外までボールを回して、NO8鈴木実沙紀が右隅にトライ。

30分に香港にPGを返されたものの、ほぼ完全に試合を支配して22−3の19点リードで前半は終了した。

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ワールドカップに向けて最高のスタートを切ったサクラフィフティーン。試合後、最高の笑顔が溢れた
photo by Kenji Demura

大きくリードした後半も気を緩めずに
ワールドカップ見据えた戦い方を実践

「香港の戦意を喪失させるために、最初からたたみかけて、日本の強さを見せて圧倒しようと臨んだ」
チーム最年長であり、有水HCが「日本女子ラグビーの大野均」と評するFL乾あゆみが語ってくれたゲームプランどおりに前半を乗り切ったサクラフィフティーン。

ハーフタイムで「ブレイクダウンとスクラムの修正」(有水HC)の指示が出た後半は、敵陣で得たPGチャンスに、これもゲームプランどおりにFB田坂主将が狙ったが、2本続けて失敗。
「この展開ならひたすらアタックしても良かったが、ワールドカップで勝つということを考えると、ショットが必要になる」(同HC)

この試合を勝つだけではなく、ワールドカップでの勝利を目標とした戦い方を実践しながら、後半も香港にはトライを許さずに一方的に3トライを重ねて、39—3で快勝した。

「この試合はすごく大事だった。去年、チャンピオンになって、今年新たなチームで勝つか負けるか。ここで勝てたのは大きい」
FL乾がそう強調したとおり、新たなメンバーも加わった新チームとしてワールドカップに向けた第一歩を最高のかたちで踏み出したのは実に有意義なことだと言っていい。

新メンバーの象徴的な存在とも言える17歳のCTB中山潮音は「練習してきたとこはできた。今日は自分がタテに行くサインをうまく使って、自分の裏をついていけたので、次は自分がボールもらって、タテに突破していけるようになりたい」と、手応えおよび課題を語る。

「日本のラグビーの歴史が動いている中で、この試合に勝てたのは大きい。でも、まだまだワールドカップで勝つためには、このレベルでは厳しい。満足せずに歩み続けたい」(FB田坂主将)

あくまでも、サクラフィフティーンの目標はアジア予選の突破の先にあるワールドカップでの勝利。

「次のホームゲームで今日出た課題をどれだけ修正できるか」(有水HC)
香港での快勝を経たサクラフィフティーンが、28日に東京・秩父宮で行われる第2戦でどんな進化ぶりを見せてくれるのか、注目される。

Text by Kenji Demura

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WTB堤の先制トライをお膳立てし、自ら2トライも記録。チームを率先する活躍を見せたFB田坂主将
photo by Kenji Demura

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厳しい蒸し暑さの中、フル出場を果たした最年長FL乾。攻守に存在感を示した
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「このジャージを着てるなんて夢のよう」と語るCTB中山は17歳。80分間プレーし、収穫と課題を得た
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「なかなかタイトなゲームを経験できない」(有水HC)サクラフィフティーンにとって貴重なアウェー戦となった
photo by Kenji Demura