■「日本代表 vs トンガ代表」試合結果
日本代表、最後の10分に成長への課題 前回のフィジー戦にあと一歩のところで苦杯をなめた日本代表は、「ジャパン・ウェイ」の進化へ果敢にチャレンジすべく、昨年のワールドカップで潜在能力の高さを発揮した世界ランク9位のトンガを秩父宮に迎えた。 前半立ち上がりの日本は攻撃のキープレーヤーとしてSO小野がNO8ツイ、CTBニコラスをタテにぶつけながらトンガDFのギャップをさがすが、フィジカルで優るトンガのダブルタックルに阻まれてうまく前進を図れない。ブレイクダウンでの球出しにも苦労し、スローボールが多くなるFWのアタックはトンガの出足良いDFにタックル、インターセプトを浴びて攻撃の糸口がつかめない。それでもこの試合にかけるアグレッシブさと粘りで少しずつ球出しのテンポが上がってくると、トンガDFの薄いスペースにボールが廻り出す。ボールが日本のリズムで動き出した13分、トンガゴール前でラインアウトを獲得し、モールを押し込んで期待のヘンドリック・ツイがトライ。トンガFWの激しい抵抗でモールが崩れかけても、落ち着いてボールの位置をずらしながら日本FWの固まりが確実なトライを奪った(7-3)。 しかし、直後の15分に日本のDFがもろさを見せる。日本ゴール前スクラムでの「8・9」からSHタニエラ・モアにスペースを走られ、タックルの背中越しにブラインド側からSOのインサイドに走り込んできたブラインドWTBアラスカ・タウファにボールが渡ってトライ(7-10)。続く24分にも空いたオープンスペースをSHモアに走られ、タッチライン際で待つHOマアシとのコンビプレーからトライを奪われる(10-17)。 後半の日本は気持ちを切り替え、立ち上がりにビッグプレーを見せる。FWのショートサイドアタックでテンポが上あがったところに、BKラインに残るNO8ツイがトップスピードでインサイドに切れ込みビッグゲイン。そこで得たPGをFB五郎丸が狙うが、このボールがポストに当たり、あきらめずに走り込んだ五郎丸が自ら拾いDFを突破してトライを奪う(17-17)。 勝利にこだわる日本のテンポはここから一気にアップする。攻撃ではブレイクダウンでの球出しの早さにこだわり、2人目の判断、求めてきた動きが機能を開始する。攻撃が良くなるとDFも前へと動き出し、スペースを失い苦し紛れにプレーするトンガからボールを奪った。 しかし、後半21分にまたも予想外のプレー。連続攻撃でゲインできずにキックを選んだSO小野のプレーにBKの足が止まり、チェイスしない日本の外側のスペースをトンガがやすやすとボールをつないでトライ(17-24)。 「勝ちたい」という選手の気持ちは観衆にも伝わってくる。この日のブレイクダウンへのこだわり、アタックでのシェイプ、ボディポジション。エディ・ジョーンズヘッドコーチの目指す「ジャパン・ウェイ」の追撃をスタンドは信じた。NO8菊谷の中央突破からテンポアップした日本の執念にトンガが反則を繰り返す。29分にFB五郎丸のPGで4点差に追い上げると、30分にはトンガCTBマフィレオ・ケフがペナルティでシンビン退場に。残り10分をどう戦うか。秩父宮に「ニッポン!」コールがこだました。 最後の10分、CTBに仙波を投入し、SOに立川を上げて一人少ないトンガDFを崩しにかかるが、大事な局面でのミスが重なり、ショートサイドで時間を使ったトンガに逃げ切られた(20-24)。勝利のプランを授けたジョーンズヘッドコーチにとっても、スタンドの観衆にも悔しい敗戦だった。4月からの短い期間に強化されたもの、まだまだ足りないものが選手たちの心の奥に刻み込まれた試合だった。スタートしたばかりの日本代表の道は険しい。しかし、一歩ずつでも成長しようとする選手たちのひたむきな姿を、秩父宮の観衆は暖かい拍手で讃え続けた。(照沼 康彦)
![]() ◎トンガ代表 ──ジャパン攻略のポイントは? 「ジャパンがどう戦ってくるかは秘密でも何でもなかったので、集中して対応できました。トレーニング期間も4日しかありませんでしたので、少しダメな部分もありましたが、何とか対応できました」 ──今日のパフォーマンスと、フィジー戦は変えるのか? 「それは言うことはできませんが(笑)、メディカルを少しチェックしたいと思います。メインのシステムの変更はありません」 ──ジョーンズヘッドコーチを良く知っていると思うが? 「とても尊敬する偉大なベスト・コーチです。サントリーでの成功も知っています。ジャパンにとても良い影響をもたらしてくれると思います。ただ、結果にでてくるのには1、2年はかかるでしょう」 ○Taniela Moa キャプテン ──最後の10分間は一人シンビンで足りなかったが? 「タフな時間帯でしたが、我々は試合に集中しました。ジャパンはランニングラグビーをしてくるので、とにかくボールを確保しようとしました」 ──W杯でのジャパンとの違いは? 「特段、違いは感じませんでした」 ![]() ◎日本代表 ──テンポと二人目の意識が課題では? 「テンポを上げようとしてできなかったのには理由があります。まず、セットの所と二人目の入り方という複合的なエラーです。テンポを上げようという気持ちは良いことですが、ディフェンスラインが強い相手がスペースを与えないようにしてきました。やはり、ジャパンとしてゲインラインでクラッシュできる選手がいませんでした。すべてがハードワークです。今日はヘンドリックと五郎丸がボールを持っているときに良くやってくれました。仕方がないけれど、ミスが多く、テンポも足りませんでしたが、ブレずにやっていきます。相手は54分で足が疲れていましたが、そこでイージートライを与えてしまいました。勝負強さを見せるためには、次の流れをつかむべき時間帯でした。テストマッチでは簡単なトライはあり得ませんが、今日は相手の9番に簡単に走らせてしまうディフェンスでした」 ──最後の10分は相手が一人少なかったが? 「良くない。自分たちのアドバンテージをつかんでいませんでした。22mのラインアウトでフランカーに行くか、ウイングに行くかの選択がありましたが、スペースを作って順目に出すべきでした。今日はドライビングモールを選択しましたが、次は同じ事をさせないようにしたいです。7人でボールを獲得し、一人余ったセンターにボールを回すべきでした」 ──クラッシュできる選手をもっと選んでおくべきだった? 「(苦笑して日本語で)すごいクエスチョン。(英語で)NZでは10人ラグビーと言ってクラッシュする戦法があります。今、ジャパンにいる選手でどう勝つかを考えると、一人一人のランニングスキル、ポジションスキルが大切です。今日は、真壁のいままで通用していたハイボールは高すぎてテストマッチでは通用しないと分かったと思います。それでもジャパンの勝ち方を探しています。2試合とも、あと少しで勝てる試合でした。今は痛みを感じながら、辛抱強くやっていく時期だと思います」 ──ハーフタイムの指示は? 「二つの選択肢があると言いました。オーソドックスに戦うのか、日本の持ち味を出して戦うハードチョイスか。選手たちは後半に持ち味を出そうと努力してくれました。結果は出ませんでしたが、努力しています。それが嬉しいです」 ──判断ミス、選択ミスはプレーヤーのものなのか? 「まだ若い9、10、12番を起用しています。この3人がボールにさわる回数が多いし、フィジー戦より格段に良くなっています」 ──フィットネスは? 「今日は相手より上回っているところはあまり見えませんでした。経験がものを言う世界です。例えば、大野は試合開始前104kgで試合後は101kgに落ちます。そういう選手はコンタクトで勝っています。それが60試合テストマッチに出るということなのです。サイズを言い訳にしないでスキルを磨くべきです。ラグビーというゲームではどこからプレッシャーを感じているかを知ることが重要です。鍛えて、相手からボールをふりほどき、来年は15点差をつけて勝ちます」 ○廣瀬俊朗キャプテン ──どこに問題があったのか? 「基本的に1対1のタックルミスがありました。カバーする選手とのコミュニケーションにも問題がありました」 ──テストレベルでのスキルミス、判断ミスが出たのは? 「最後の70数分での疲労度もプレッシャーも違いました」
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