課題だった試合の入りを修正して香港を振り切る
アジア・オセアニア1位としてアイルランドへ

17日、女子ラグビーワールドカップ (WRWC)2017 アジア・オセアニア地区予選、日本対香港戦が香港フットボールクラブで行われ、20—8で香港を振り切った。これで日本は予選の成績を2戦2勝としてアジア・オセアニア地区1位となり、来年8月にアイルランで開催されるWRWCではプールCでフランス、アイルランド、豪州と対戦することが決まった。

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香港を20-8で下し、アジア・オセアニア1位としてワールドカップ出場を決めたサクラフィフティーン
photo by Kenji Demura

13日に行われた初戦のフィジー戦で55—0と快勝し、すでにアイルランド行きを決めていたサクラフィフティーン。
中3日で臨んだ香港戦では、アジア・オセアニア王者の座を勝ち取ることに加えて、WRWC本番での勝利を目指し、“ワールドカップモード”で臨む一戦となった。
「自分たちが目標としているのはワールドカップでのベスト8。世界でベスト8に入るためにはアジアチャンピオンになることはマスト。香港に勝てないとベスト8には行けない。ワールドカップがもうスタート。フィジー戦よりも緊張した」(PR斎藤聖奈キャプテン)

最終的には55−0で大勝したフィジー戦でも、前半10分の先制トライの後は同35分まで追加トライを奪えないなど、立ち上がりにどう試合に入っていくかがこのチームの課題でもあった。
「どの試合でも前半は苦戦する。そこを断ち切らない限り、ワールドカップの勝ちにはつながらない。前半の入りが課題」(HO鈴木岬実沙紀)

その点に関しては、これ以上ないと言えるほど、うまくいった。
キックオフから敵陣に攻め込んだ日本は前半2分にモールからHO鈴木が押さえて先制。8分にもゴール前でFWが攻めた後、外に振ってFB清水麻有が香港ゴールにと飛び込んだ。
いきなり10点をリードした日本だったが、前半の得点はこの10点のみ。
「途中からみんなバラバラ。わたしが、わたしがとなって、それが連鎖する。取り急いで、一発で取ろうとして、変なオフローをし始めた」(有水剛志ヘッドコーチ)

フィジー戦は欠場し、この日、SOとして復帰した山本実バイスキャプテンは「エリアをしっかり取って、22mに入ったらしっかりトライを取りきるチームにならないとワールドカップでは勝ちきれない」と語っていたが、完璧だったのは10分間だけで、その後の30分間はペースをつかめないままハーフタイムへ。

香港ペースになる時間帯もあったが、アタックでのミスはあったものの、DFでは粘り強くタックルに行き続けて香港に得点は与えず、10—0のまま前半を折り返した。

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W杯本番での勝利をイメージできる内容で香港を圧倒したかったが、課題も多く見つかる試合に
photo by Kenji Demura

「勝ててうれしかったけど、悔しい」(SH津久井)

「フィジー戦では、オフロードするなら絶対に成功させろと言ったが、今日はハーフタイムで『もうオフロードはするな』と言った。『自分たちは何をやってきたんですか、高速フェイズアタックでしょう。それをやっていこう』と」(有水HC)

自分たちのラグビーを再確認して臨んだ後半は、再びサクラフィフティーンらしい小気味いいアタックが随所に見られるようになり、7分にFB清水麻有が持ち前のランニング力を披露するかたちで50m以上を走りきって追加点。
後半28分にも、再びFB清水のロングゲインからチャンスをつくり、ゴール前のピック&ゴーからPR南早紀が潜り込んで4トライ目。
「清水がFBでラインブレイクするのはチームのかたち」と、有水HCも認める奔放なランニングが魅力の大学生FBが期待通りの走りを見せたこともあって2トライを加えた日本が香港の反撃を1トライ、1PGに抑えて20—8で振り切り、予選1位通過を決めた。

「香港をアウェーで圧倒できるようにならないと、ワールドカップでの勝利は見えてこない」
試合前にそう語っていたPR斎藤主将だが、2勝して1位で予選通過するという最低限の目標こそクリアできたものの、真の目標である「ワールドカップでの勝利」につながる試合にするという意味では内容的にはもの足りない面があったのは事実。

「勝ててうれしかったけど、悔しい。いいテンポで出してトライというのが少なかった」
高校1年生ながら、2試合続けてサクラのジャージの9番として勝利に貢献する玉さばきを見せたSH津久井萌も勝利の喜びの一方で思うようにテンポを上げられなかった悔しさも訴える。

「自分たちのスタイルじゃなくなった時に、自分たちのかたちはどうなんだと個々が立ち返られるようにならないと。ワールドカップで勝つのは難しい」(有水HC)

来年の8月にアイルランドで対戦するのはフランス(世界ランキング4位)、アイルランド(5位)、豪州(6位)。どのチームも優勝を狙える強豪ばかり。

「それぞれ各チームに戻って個人のレベルを上げて、数少ない合宿で集まった時にはチームのレベルの底上げをする」(PR斎藤キャプテン)

来年8月のアイルランドで、「運動量で相手に走り勝つ高速ファイズアタック。タックルラインの攻防とエリアで優位に立つ」(有水HC)ラグビーを披露するために大切なのは、これからの8ヶ月間のそれぞれの過ごし方であることは間違いない。

text by Kenji Demura

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試合開始早々にモールからHO鈴木が押さえて先制した日本だったが、ミスからリズムを崩す時間帯もあった
photo by Kenji Demura

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フィジー戦に続き、トライを記録するなど、思い切った走りでチームを勢いづけたFB清水
photo by Kenji Demura

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常に体を張るプレーで香港に勢いを与えなかった伊藤優、末のFL陣
photo by Kenji Demura