エディージャパンの国内初お披露目は、若手主体のメンバーに──。
アジア5カ国対抗ラグビー第2節、カザフスタン-日本戦は、5日、福岡レベルファイブスタジアムで行われる。
初戦、カザフスタンとのアウェー戦で87-0と大勝した日本は、注目の18歳・藤田慶和や橋本大輝の初キャップ組を先発メンバーに加えて、「歴代の日本代表の中でも最も若いチームのひとつ」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)という編成で、初のホームゲームを戦うことになる。
18歳の藤田がゆかりの地・福岡で代表デビュー
7人制に続いて、15人制でも日本代表デビューを果たす18歳のWTB藤田(写真は東京セブンズ時)
photo by Kenji Demura (RJP)
藤田同様、地元・福岡で記念すべき代表初キャップを獲得するFL橋本はラインアウトジャンパーとしても期待される
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ワールドラグビー最前線を知り尽くす指揮官ならではの粋な計らいではあるだろう。
「日本ラグビーにはスターが必要だ」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)
間違いなく、「こどもの日の福岡」こそ、スター候補のひとりである若武者の代表デビュー戦にピッタリの舞台である。
18歳と8ヵ月。この春、東福岡高校を卒業し、早稲田大入りしたばかりの藤田慶和は、高校時代の3年間を過ごした福岡で代表デビューを果たすことになる。

「福岡で初キャップというのは凄くうれしいこと。でも、あまり意識しないで、いつも通りのプレーを80分間続けていきたい」
そんなふうに初代表の舞台への抱負を語る藤田だが、当然ながら指揮官の温情だけで桜のジャージの11番を身にまとうことになったわけではない。
確かに、昨年の対戦でも111-0と圧勝しているUAEは、普通に考えて日本が負けることは想定しにくい相手。ジョーンズ監督も「もちろん、我々はUAEのことをリスペクトしている。それでも、自分たちのレベルを維持する必要があり、その一方で若手を試すチャンスともなる」と、単純な勝敗以外のところにポイントを置く試合となることを認めている。

前週のカザフスタン戦では、計10人の先輩選手が代表デビューを果たした。加えて、同じポジションの偉大な先駆者であるWTB小野澤宏時が諸事情によりUAE戦を欠場することも決まっていた。
時間の経過とともに「こどもの日の福岡=藤田の代表デビューのチャンス」という位置づけは深まっていったが、それも3月19日の代表スコッド発表以来、チーム最年少WTBが日々アピールを続けた結果でもある。

「(静岡・つま恋での)1次合宿の練習で5mチャンネルで仙波(智裕=CTB)と1対1になるシーンがあった。その時、何が起こったかというと、素晴らしいディフェンダーである仙波が、藤田に触れることすらできなかったんだ。セブンズの試合でも、ボールに近づいてくる時と、パスをもらう時の走るコースを変えていたが、そういうプレーができる選手というのはなかなかいない」(ジョーンズHC)
「ボールを持った時のワクワク感はもの凄いものがありますよね。練習の中で1対1になったりしてもスピードに驚かされるし、なかなか取り切れる日本人ウイングがいない中で、彼ならやってくれるという期待感を抱かせる」(廣瀬俊朗主将)
4月2日に初集合して以来、正味3週間にわたる日々の練習、そしてひと足先に代表として世界を体感した7人制での活躍ぶりが評価されての福岡デビューなのだ。

メンバー発表で自分の名前が呼ばれた時には、「エディーさんに奪ってみろと言われたチャンスをものにできて嬉しかった」という藤田が、慣れ親しんだ福岡で爆発的な走りを披露してくれそうな予感は色濃く漂っている。
カザフスタン戦では、この春からの日本代表合宿期間中、宿舎で藤田と同部屋になることも多かった小野澤がハットトリック(3トライ)を決め、右WTBの廣瀬主将が逆サイドに回ってトライを奪うシーンもあった。

「アルマティでの初戦、ジェネラルプレーでは日本は1度もキックを使わなかった」という点も含めて、ジョーンズHCは選手たちへのアタッキングフィロソフィーの浸透ぶりを喜んだ。
「ボールを使って、常にゲインラインを越えることを意識して攻めながら、スペースが使えるチャンスには、ウイングがトライを取っていく」(ジョーンズHC)という「ジャパンウェイ」のフィニッシャーとして、「夢はスーパーラグビーの選手になること」と語る若者にかかる期待は大きい。

福岡出身、初キャップの橋本はサポートのキーマンに

前述の小野澤の3トライをはじめ、カザフスタン戦では計13トライを重ねたエディージャパンだったが、初戦ということもあり、大勝の裏側でいくつか課題も浮上した。


ワークレートで高い評価を受けるPR畠山(中央手前)は1番としてプレー。福岡出身のHO有田(右端)も2試合連続での先発
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ジョーンズHCは「アタックでもディフェンスでもセカンドマンのサポートが遅かった」ことを一番の課題に挙げていたが、この領域でUAE戦のキーマンとなりそうなのが、藤田同様、ゆかりの地・福岡で代表デビューを果たすことになるFL橋本大輝だ。
「速いラグビーの中でボールを出したり、痛い仕事をしていくこと」が自分の役割だと語る橋本は福岡県出身。北九州市の帆柱ヤングラガーズでラグビーを始め、九州国際大学付属高校(同市)出身選手としては、初の日本代表キャップホルダーとなる。
橋本がいかにスムースに2人目のサポート役をこなしていけるかが、攻守に日本のリズムで試合を進められるかの鍵を握る。

「福岡での試合ということで、どうしても力が入るんですけど、力を入れ過ぎないようにして、やるべきことをやっていきたい」
そう冷静に語る橋本をはじめとする第3列のリザーブには、やはり福岡が地元と言っていい初代表の桑水流裕策(鹿児島工高→福岡大→コカ・コーラウエスト)が控える。
「2人のオープンサイドFLには日本人の強みでもあるハートの強さを見せてほしい。共に福岡にゆかりのある選手なので、最高のパフォーマンスを見せてくれるはず」と、薫田真広アシスタントコーチは「日本人らしさ」を意識したプレーを期待する。


カザフスタン戦ではSOとして途中出場した立川はCTBで先発。SO小野とのダブル指令塔に注目だ
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また、やはり福岡出身でカザフスタン戦で代表デビューを飾ったHO有田隆平は2戦続いての先発。PR陣はカザフスタン戦では"古巣"の3番としてプレーした畠山健介が「ワークレートの高さを生かすため、インターナショナルでは1番として成長させいていきたい」(薫田AC)という意図を受けてルースヘッド(1番)で先発。3番にはカザフスタン戦で途中出場した坪井秀龍が入る。
畠山は「日々、勉強。1番で組むスクラムは徐々に良くなっている」と、新しい役割での自らの仕事ぶりに手応えをつかみつつある。
LO陣は福岡での練習中に篠塚公史が右胸部を強打したこともあり、大野均-真壁伸弥というカザフスタン戦と同じ顔ぶれ。第3列は、望月雄太-橋本のFL陣に佐々木隆道がNO8に回り、より一層スピード感が強調された組み合わせとなった。

BK陣ではSOには初戦同様、小野晃征が入り、カザフスタン戦では小野に代わってSOとして途中出場した立川理道がインサイドCTBに入る。
「自分とハル(立川)の2人合わせて80分間のパフォーマンスを考えている」(小野)といい、実際、カザフスタン戦でも後半15分までプレーした小野が近場を攻めた後、終盤、立川がうまく外側を生かすような場面も見られた。
今度は同時にプレーすることによって、それぞれの特徴をうまく生かし合うようなゲームメイクが見られるはずだ。
2人目のサポートと同様、カザフスタン戦で浮上した、アタック面でのシェイプを維持していくことに関しては、中心的役割を担う指令塔2人。
「カザフスタン戦では、ラインが深くなり過ぎる場面もあったので、ラインを浅くすることを意識して、FWともうまくリンクしながら動かしていきたい」(立川)

1次攻撃に関しては、すでにジョーンズ監督が高い評価を与えるレベルになっているだけに、課題であるサポート、そしてアタックシェイプの部分で改善が見られれば、スターWTB藤田がトライ量産なんていう場面も見られそうだ。

text by Kenji Demura


福岡での直前合宿で廣瀬主将を中心に円陣を組むエディージャパンの面々。国内の初戦で満足いくパフォーマンスを見せられるか
photo by Kenji Demura (RJP)

UAE戦を控えた福岡合宿でも独特のかん高い声で積極的に選手たちに指示を出し続けるジョーンズHCの姿が目についた
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