マッチリポート
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トーナメント表


慶應義塾大学 39-24 流通経済大学

【一回戦/2011年12月18日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

第一試合の興奮が冷め切らない秩父宮ラグビー場。第二試合も大学選手権一回戦屈指の好カードとなった。
対抗戦グループでは3勝4敗(5位)と不本意な結果に終わったが、ジュニア選手権で帝京大学との接戦を制しチーム全体のムードが高まっている慶應義塾大学。一方、リーグ戦グループ初制覇の勢いを強化合宿やサントリーサンゴリアスへの出稽古で更にパワーアップしてきた流通経済大学。昨年の大学選手権では共に二回戦で敗退しており「復活」と「躍進」への意地がぶつかりあった。

試合開始直後は流経のFWが慶應を圧倒、前半6分にゴール前のラックから出たボールを流経LO小野寺優太が持ち込みトライ(G失敗 0-5)。流れがなかなか掴めなかった慶應だが、19分に流経NO.8ヴァカウタ・イシレリが危険なタックルでシンビンとなった直後の20分、数的優位を活かし連続攻撃。ゴール前のラックからSO宮川尚之がインゴールに蹴り込み、CTB仲宗根健太が押さえてトライ(G成功 7-5)。33分には再び慶應がゴール前のラックから左に展開、9-10とつなぎ最後はブラインドWTBの鈴木貴裕がライン参加し左中間にトライ(G成功 14-5)。一方、流れを取り戻したい流経も37分に22m付近のラックからFW・BK一体となった攻撃で9-4-13-8とつなぎ左隅にトライ(G成功 14-12)。僅か2点差で前半を終了した。

後半に入って2分、まずは慶應の仲宗根が22m中央からPGを決めると(17-12)、3分には流経SO長谷川真人のキックを慶應FL石橋拓也がチャージ、そのまま押さえてトライ(G成功 24-12)。引き離されたくない流経は6分に連続攻撃からLO萩澤正太が左隅にトライ(G成功 24-19)。再び1トライ差まで詰め寄る。

しかし、ここからは少し足が止まった感のある流経に対して慶應が低いタックルと速いパス回しで猛攻を仕掛ける。9分、中央付近のオープン攻撃からWTB児玉健太郎が大きくゲインしゴール前にラックを形成、ここから右に展開、9-8-10-12-13とつなぎ鈴木が右中間にトライ(G失敗 29-19)。23分、仲宗根が右中間22m付近のPGを成功(32-19)、26分には22m付近流経のラックから出たボールを慶應NO.8栗原大介がインターセプトし、そのまま中央にトライ。(G成功 39-19)流経も30分を過ぎてから攻勢を仕掛け、36分にゴール前のラックからFB小澤大がトライ(G失敗 39-24)を奪うも時既に遅し。そのままノーサイドとなった。(久野彰也)

慶應義塾 39-24 流通経済 慶應義塾 39-24 流通経済 慶應義塾 39-24 流通経済 慶應義塾 39-24 流通経済
会見リポート
 

流通経済大学の内山監督(右)と鹿田キャプテン
流通経済大学の内山監督(右)と鹿田キャプテン

流通経済大学

○内山達二監督
「かなりミスも多く出ましたし、いつもの力を発揮できず、勝利できませんでした。しかし、このゲームのために全力で準備してきたことを学生は出してくれました」

──リーグ戦の優勝チームが1回戦で負けたが?
「リーグ戦のチャンピオンとして、他のチームに申し訳なく思います。スピーディな展開の対抗戦のラグビーに翻弄されたと言えるかもしれません。一発勝負での経験値がまだまだ足りないと感じています。結果を出せなかったことを受け止めて、我々はここからスタートしてやり直していきたいと思います。後半の慶應さんの試合運びもそうですが、本当に経験値が違うなと思います。我々もプレッシャーをかけて前へ一歩出られると思っていましたが、そうはいきませんでした」

○鹿田翔平キャプテン
「前半から自分たちのペースをつくれず、慶應さんのプレッシャーを受けてミスして、自分たちのラグビーができなかったことが敗因です」

──慶應のタックルは?
「低く来ることは分かっていましたが、自分たちが想像していた以上にブレイクダウンでのスピードがありました」

──選手権ということでリラックスできなかったのか?
「相手が特別な相手ということでしたが、自分たちは今年ずっとやってきた、いつもどおりのラグビーをしようと臨みました」

──慶應のパスは速かったのか?
「バックスに回すのは分かっていましたし、プレッシャーをかけようとしましたができませんでした」

──ブレイクダウン周辺の慶應は?
「ボールへの絡み、反則すれすれのプレーが全員うまいなあと感じました」

──地震の影響から見事にチームを立て直してきたが、この一年を振り返ると?
「地震の影響で1ヶ月ほどチーム作りが遅れましたが、終わったとき、最後にそれを言い訳にしないと皆で約束しました。1年間、流通経済でラグビーができて、本当に良かったと思います」

慶應義塾 39-24 流通経済 慶應義塾 39-24 流通経済 慶應義塾 39-24 流通経済 慶應義塾 39-24 流通経済
 

慶應義塾大学の田中監督(右)と仲宗根キャプテン
慶應義塾大学の田中監督(右)と仲宗根キャプテン

慶應義塾大学

○田中真一監督
「本日はこのような機会を与えていただきありがとうございます。大学選手権、秩父宮という素晴らしい舞台で、学生がこのように力をお見せすることができて嬉しく思います。寒い中、多くの皆様が我々の学生のプレーを見て下さったことに感謝申し上げます。対抗戦5位という、大変残念な敗戦の中から多くのものを学ばせていただきました。
その中で、苦しみ、もがき続けて参りましたが、ジュニア選手権の勝利が大きかったと思います。もし、我々に勝利の方程式というものがあるのなら、それは魂のタックルができたときだということをあの試合で確信しました。相手のイシレリ選手は一人で行っても倒せない素晴らしい選手です。こちらのタックルの精度にも問題はありましたが、大きな相手に下にタックルに入り、一歩でも前で倒そうとしたときに、勝利できました。流通経済さんの強みはFWのモールで、それをさせてしまったのが、序盤の苦戦の原因でした。途中からボールを動かして戦ったおかげで、流通経済さんの足が止まり、我々が縦に入れるようになったと感じています。
お互い、シーズン終盤で持ち味を出し合って戦い、勝てたのは自信になります。この試合が始まる前より、確実に選手が成長していると感じます。1日でも長くラグビーができることを目指してきましたが、また、一週間できるという嬉しさがこみ上げてきます。次の天理大学戦に向けて、低く鋭い魂のタックルを、153人の部員全員で体現できたらと思います」

──予想との違いは?
「対抗戦の試合では、平均トライ数が2で、失トライ数が4でした。いかにトライを2つ増やし、失トライを1つ減らすかをテーマに考え、ディフェンスの強化とモールの強化をしてきました。今日は意図したものでなく、アンストラクチャーのトライが多かったですが、相手のミスに素早く対応してスコアできました。まだ、精度の高さが求められると思います。イシレリ選手を核としたゴール前モールの相手のトライがなかったのは自信になります」

──栗原選手をナンバー8で起用したが?
「今年のチームは選手の良い部分をつなぎ合わせる考えです。栗原選手はボールを持つチャンスが少なかったのですが、持てばもっとチャンスを増やせるセンスが素晴らしい選手です。なるべくボールに触れる機会を多くしようと起用しました。今までは彼のウェイトでロックに起用し、スクラムを安定させたかったのですが、ここに来て藤本、熊倉両選手の成長が著しく、選手権を機にナンバー8で起用しましたが、非常に良かったと思います」

○仲宗根健太キャプテン
「本日は試合、会見のご準備をいただきありがとうございます。対抗戦5位の慶應としては大きな勝利だと思います。ジュニア選手権で優勝し、(この試合に出られない)4年生の支えがあって良い雰囲気で試合に臨めました。早稲田戦の負けを受け、低いタックルをしようと3週間やってきた練習の成果が勝利につながったと思います。
流通経済さんはリーグ戦1位で、次の天理大学さんも関西1位と、厳しいグループに入りましたが、ここを這い上がってこそ大学日本一になる資格があると、切磋琢磨し合えることを前向きにとらえ、天理戦に向けて練習していきます。決勝、大学日本一を目指したいと思います」

──パスのスピードで振り切ったが?
「試合前から流通経済さんのディフェンスが前へ出てくるので、外が空くと分析していました。外で対応された場合も考えていましたが、今日はそのまま勝負できました。今までと変わらず、内側のサポートを意識してやりましたが、ボールをブレイクダウンから早く出せて順目に走れました」

──去年の結果は悔しかったと思われるが?
「今年は、チームが始まったときに去年の22人中17人が抜けた状態でした。非常によい切磋琢磨がチーム力を押し上げ、良い影響を与えていると思います」

──苦しんだ対抗戦で成長できたところは?
「対抗戦では、惜敗が多かったです。その中で、80分間集中して戦う意識が付いたと思います」

──対抗戦とリーグ戦の違いは?
「対抗戦ほどのパスカットねらいやチャージがなかったと思います」