第14回目の「みなとスポーツフォーラム-2019年ラグビーワールドカップに向けて-」は前神奈川県知事の松沢成文氏をお迎えし、「ラグビーと地域社会」をテーマに7月21日(木)、麻布区民センターにて行いました。
世界的なイベントが何度も行われてきた、神奈川県知事のご経験をもとに、世界大会や世界規模のイベントが開催地や地域にもたらすもの、生まれるエネルギーなどを語っていただくとともに、2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップへの期待などをご講演いただきました。

松沢成文氏
松沢成文氏

【スポーツとは】
スポーツが私たちにとっていかに素晴らしいものかを、なでしこジャパンのワールドカップ初優勝の快挙により実感したという松沢氏。「平均身長10センチ以上もの体格差があるにもかかわらず点を取っていく最後まで諦めない精神が素晴らしかった。勇気や希望、感動を与えて、元気を与えられるスポーツが大好きであるし、どの競技においても選手が活躍している姿を見られるのはとても嬉しい」と述べられました。
また、先日石原東京都知事がオリンピック開催地への立候補を表明したことに触れられ、ラグビーワールドカップ日本開催はもちろん、女子サッカーワールドカップの日本開催を誘致するなどスポーツでの盛り上がりから世界中を日本から元気にしていくことができればと考えていると話されました。

【ラグビーの魅力】
中学からラグビーをしてきたという松沢氏。学生時代の練習はとても厳しい思い出ばかりだが、一生付き合える仲間を得られたことが何よりであった、またラグビーには他のスポーツにはない魅力があると述べられました。キャプテンシーやリーダーシップ、チームワークを重んじるスポーツであることも挙げられ、議会や組織において、リーダーシップとチームワークは背反する概念であると考えられがちだが、両方があってこそ良い組織が築けるものであり、ラグビーを通して学ぶことができると話されました。

【神奈川県知事での経験】
松沢氏は神奈川県知事として様々なスポーツと関わってきたと話されました。地域スポーツ、教育政策としてのスポーツ、施設の開発に携わってこられました。例を上げると野球…神奈川県にはいくつかの強豪校が存在し、プロ野球では横浜ベイスターズ、社会人野球では3年に一度は全国制覇をするくらい強いチームが存在しているそうです。企業スポーツの側面が強かったプロスポーツだが、これからは地域におけるスポーツの普及や、地域社会への還元という姿勢が大切、チームを強くし、皆で応援するという地域で育てる仕組みが必要であると述べられました。
また、Jリーグのチームが最も多い県も神奈川県です。Jリーグに来場するお客様に神奈川県産物を紹介しようという取り組みを行いJリーグと協力してきたと話されました。このように例を挙げられ、これからのスポーツは地域密着でなければ長続きしないし、スポーツの良さも広がっていかないのではないかと述べられました。

【ワールドカップについて】
ラグビーワールドカップに向かい、ラグビー界と国、地域がWIN-WINの関係を築いていくことが重要で、国際大会を通じて地域の団結力が生まれたり、国際性が生まれたりと街の発展につながっていくと述べられました。そのためにまずはハード面の整備が必要である。専用のスタジアムがあることで臨場感が高まり、観客への感動も大きい、観客数を増やすことにもなると話されました。また、米国メジャーリーグベースボールの例を挙げ、スポーツだけではなく、レストラン、ショップ、ホテル、シネマなど様々な施設を併設するなど、街全体を発展、再開発をしていくという発想もできるのではないかと提言されました。
ソフトの面においては、地域のみなさんが世界中のお客様を迎え入れる際のホスピタリティが求められると話されました。各地域で試合をするだけではなく、宿泊や、練習において地域の人々と選手が触れ合い日本で試合ができて良かったと思ってもらうことが日本の地位向上になり、国際交流にもなると述べられました。神奈川県も2002年のサッカーワールドカップの際、ドイツチームを迎え入れ、今でも地元のサッカーチームとの交流が続いていることは嬉しいことであると述べられました。
ラグビーワールドカップ日本開催においても、地域住民のみなさんがボランティアとしてなど交流していくことで港区の国際性にも繋がり、オリンピックの誘致にも繋がっていくと話されました。


【質疑応答】

新しい競技場はどうやったらできるとお考えですか、またネーミングライツについてどうお考えですか?
「国立競技場などは国主導でなければ建設できないでしょう。今、横浜でドーム球技場建設を目指す動きもありますが、横浜経済界を中心とした民間部門が推進役となり、地方自治体と連携するということも可能だと思います。ネーミングライツの問題も難しく、日産スタジアムの場合、維持管理費を賄うためネーミングライツを導入しました。しかし、景気動向などにより計画していた通りの収入が得られない場合もあります。また、県営の競技場に企業の名前を入れることで公共施設の管理上不便が生じてしまう可能性もあります」

地方自治体のスポーツ政策に対する提言はありますか?
→「私が関わったスポーツ施設に保土ヶ谷競技場があります。土のグラウンドだったラグビー場を人口芝に変えるために、ラグビー界だけではなくサッカー界とも連携をしながら整備を行ってきました。また、スポーツ団体は人を育てる場であると思います。神奈川県の高等学校の部活加入率を上げるための施策も行ってきました。学校を開放するなどより多くの住民の方々がスポーツ施設を使えるようにもしました。県知事という立場で自治体のスポーツが発展するための政策を行ってきましたが、まだまだ努力は足りないしできることもあるかと思います」

2020年のオリンピック招致について本当に東京が成功する可能性は?
→「2016年のリオデジャネイロ開催が決まった時よりも、誘致しやすい状況であるとは思います。震災復興が目的でもあり、日本復興に向けて世界中のみなさんから支援をうけ、その御礼を示すことができるのがオリンピックの場であると石原東京都知事も話しています」

2019年のラグビーワールドカップに向けて、松沢氏ご自身はどのように貢献していかれますか?
→「今後、ワールドカップに向けてどれくらいの観客が必要でどのような施設が必要かという問題が生まれてくるかと思います。もしご依頼があれば、知事時代の人脈を生かし、地方自治体の首長さんとの窓口として貢献することも可能かと思っています。また、今のラグビーファンはお父さんがやっていたからなど何かしら元々ラグビーとの関わりがあった方が多いかと思います。そうではない人にも応援してもらえるようPR活動にも貢献していきたいと思っています」

今回のみなとスポーツフォーラムにおいて、参加者からの参加費と、会場での募金額の合計16,150円は、東日本大震災の義援金として日本赤十字社へ寄付させていただきます。