2019年ラグビーワールドカップにて8強を達成するために、長野県菅平高原にて8月2日~5日の3泊4日でタレントIDキャンプを実施いたしました。試験やチームの合宿がある中、高校生14名、大学生2名の合計16名が参加して行われました。今回の合宿は従来のチーム強化合宿とは異なり「個別指導」が目的の一つであったため、各世代の監督コーチなどが一堂に集い、9名のコーチスタッフが密度の濃い指導を実施しました。コーチ、ストレングス&コンディショニング(以下S&C)、トレーナーなどハイパフォーマンス部門の担当者がそれぞれにセッションを全うし、8強を達成できる個人を育てるべく、とても内容の濃い合宿となりました。(以下、詳細レポート)

◎DAY1
昼過ぎに選手全員が集合し、測定に先立って行われた開校式では、中竹コーチングディレクター(以下CD)より「何か具体的な項目で必ず成長して帰ること」と本合宿のゴールが告げられました。雨上りのグラウンドで行われた測定では、西内勇人選手(法政大学)が20mシャトルランのターゲット数値である125をクリアし、ラグビーワールドカップ(以下RWC)にかける想いを体現してくれました。また併設して行われたセブンズアカデミー「中学生トライアウト」では、鹿児島オールブラックスの桑山聖生選手(鹿児島城西中学3年)が、5段跳びでU20のターゲットである13mをはるかに上回る14m越えを記録し、豊かなタレント性を発揮してくれました。

測定項目:20mシャトルラン、50mスプリント、立ち幅/5段跳び、7ミニッツテスト

夜のオープニングセッション第1部は「2019年W杯8強への道のり」。現在のワールドランキングとIRBジュニアワールドチャンピオンシップ(以下JWC)の順位を比較した場合ほぼ同じであることを示し、「JWCで8強を目指すこと。2019年のRWCは8年後ではないこと」を確認しました。また中竹CDより日本スタイルである4Hのいいイメージビデオが示され、明確かつ具体的で高い理想の目標を設定することの大切さが説明されました。
第2部は「ランニングセッション」。ラグビー以外の数々のトップチームで指導経験がある小野大輔氏(東海大相模高校陸上競技部監督)を特別講師としてお招きし、ランニングの仕組みについてわかりやすく説明していただきました。

DAY2
早朝に行われたランニングセッションでは、小野先生より「押す・引く・挟む・弾む」をわかりやすく指導していただきました。まだまだ不慣れな選手たちでしたが、午前練習の前に行われたウォーミングアップでは早くも感覚をつかみ始める選手が出始めました。
午前の初めもランニングセッション。見る見るフォームが改善されていく選手たちは、その後のスキルトレーニングにおいても、ラグビーの動作の中での身体の使い方に関しても熱心に質問していました。一貫指導において中高生世代では、ランニングセッションなどのアクティビティ(正しい動作)やスキルの習得が重要であると位置づけられています。ユニットスキル・ポジションスキル・個人スキルに関して、本合宿中に具体的な成果を得るべく、まずは選手個々人のスキルチェックが行われ、その後はポジション毎に分かれてスキルセッションが実施されました。

いよいよ夜のセッション。テーマは「世界レベルプレーヤー」。今回はスペシャルゲストとして、未来のW杯戦士のために二人のスペシャルゲストが菅平まで足を運んでくださいました。
現役トップリーガーであり、前回W杯にて史上最年少でJAPANのゲームキャプテンを務めた佐々木隆道選手(左、サントリーサンゴリアス)と、数々の国とチームをプロ選手として渡り歩き現在も海外で活躍されている四宮洋平選手(右、グランドゥカート[イタリア1部スーパー10])です。お二人に加え、元大学チーム(早稲田大学)の監督をしていた立場から中竹CD、U20監督であり現高校チーム(伏見工)の監督である立場から高崎利明先生の4名によるトークライブが行われました。

選手たちにとって忘れられない1日になったのでは 佐々木選手(左)と、四宮選手
選手たちにとって忘れられない1日になったのでは 佐々木選手(左)と、四宮選手

未来のW杯8強戦士が歩むべきラグビーキャリアについて、それぞれの立場からメリットやデメリット(リスクなど)がエピソードを添えて伝えられました。「サントリーでも具体的な目標を設定し毎日少しずつでも近づけるように地道に頑張っている。トップアスリートは生活のルーティーンを確立している(佐々木選手)」「失敗や負けを経験しても這い上がってくる選手がトップアスリート。味の良し悪しで食事を摂らない選手は有り得ない(四宮選手)」などの貴重な話に選手は真剣そのもの。トークライブの後には4人1組で4名の講師を10分ずつ回るラウンドテーブルが行われ、ゲストと選手の直接質疑応答が行われました。佐々木選手と四宮選手はもちろん、ご理解ご協力をいただきましたチーム関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。選手たちにとって忘れられない1日になったことと確信しております。

DAY3
3日目の朝もランニングセッションに始まり、午前中は体幹&スキルセッション。下農S&Cによるペアでの自重トレーニングが行われ、体幹および全身をきつく追い込みました。前日ゲストから「メンタルタフネスの重要性」を教わった選手たちは必死に食らいつき、成長のあとを見せてくれました。束の間の休息の後、疲労した状態で中竹CDによるスキルセッションが行われ、ゲーム後半をイメージした精度と集中力強化を兼ねたトレーニングが実施されました。
長めの昼休みをとり、午後は午前の反復練習をした後ユニットやポジションに分かれスキルトレーニングを実施しました。

夜の第1部は普及競技力向上委員会の担当理事である勝田隆氏により、日本初のオリンピック金メダリストである織田幹雄氏の「強いものは美しい」をテーマに講義が行われました。実際のオリンピックでの貴重なエピソードを交え、スポーツとは何か、強いとは何かについて学びました。いつもとは違う視点からラグビーを見つめ直し、あっという間に講義は終了しました。
明日の最終日を前に第2部は個人面談。選手一人一人に対し、コーチ・S&C・トレーナー・タレント発掘の項目から現状と具体的な目標、目標に対する課題が提示されました。RWC 8強を担う選手たちは自分たちのチームにおいて中心的な役割を果たす一方で、個人としても達成するべき目標があります。それらを明確にし、今後時間を有意義に活用してスキルアップを図っていきます。

DAY4
合宿の集大成ともいうべき最終日。コアスキルトレーニングに先立って20mシャトルランが実施されました。身体的にきつい状況でこそ、個人のメンタルタフネスが顕著に表れます。克服しようと努める選手の姿も見え、高崎先生から再度メンタルの重要性について指導がありました。最終日ともなると、合宿中の具体的な目標としてきたスキルにおいて、目に見えた成果が表れました。特にラインアウトの精度はコーチも驚くほどの向上を見せ、この世代の選手たちの呑み込みの早さを痛感しました。

今後は今回のようなタレント発掘と並行して、発掘された選手たちの強化も進めていく予定となっております。実効性と継続性を念頭に置いた日本らしい発掘・強化を進めてまいります。