text by Kenji Demura
W杯まで70日。
4年に1度の楕円球の祭典に向けた、カーワンジャパンの仕上がり度をチェックする意味でも特別な意味を持つIRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)2011が、いよいよ開幕する。
当初は全試合を日本で開催する予定だった2011年版PNCだが、東日本大震災の影響で日本-サモア戦のみ東京で行われ、その他の5試合に関してはフィジーでの対戦となる。
昨秋のリポビタンDチャンレンジ2010に続いて来日を果たしてくれたサモア代表は現在世界ランキング11位で、13位の日本よりも2ランク上。
過去の対戦でも2勝9敗と大きくリードされているジャパンだが、1年前のPNCでは敵地で31-23と勝利。ただし、その4ヵ月後には、雨中の秩父宮ラグビー場で10-13と返り討ちに遭ってしまったのは記憶に新しいところでもある。
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トップリーグXV戦で3トライを奪ったFL菊谷主将を中心に格上のサモアにチャレンジする |
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2年ぶりに代表復帰のHO青木はトップリーグXV戦に続いての先発出場となる |
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試合展開によってはトップリーグXV戦に続いてSOウィリアムスの出番もありそうだ |
サモア代表のメンバーに関しては、欧州でプレーする選手が参加していなかった昨秋の来日メンバーよりも、今回のチームの方が実力は数段上と見ていいだろう。
一部、南半球のスーパーラグビーでプレーする主力が欠けていたりするものの、欧州組も16人が参加。
サントリーサンゴリアスの指令塔として日本選手権制覇に貢献したSOトゥシ・ピシ、元ワールドファイティングブルのNO8ジョージ・スタワーズ、そして主将を務めるのが来季クボタスピアーズへの加入が決まっているCTBセイララ・マプスアと、日本とつながりの深いプレーヤーも含まれている。
もちろん、W杯を2ヵ月後に控えるいま、サモアにとっても日本戦は貴重な実戦の場であることは間違いなく、当然ながら真剣勝負で臨んでくることになる。
そんな本気モードのサモアを迎え撃つ日本代表は、49-7で快勝して貫禄ぶりを示したトップリーグXV戦(6月26日、東京・秩父宮ラグビー場)時の先発メンバーがほぼそのままのかたちで踏襲されることになる。
FW第1列はトップリーグXV戦に続いて平島久照-青木佑輔-畠山健介。
恐らく、セットプレーに関しては、日本代表のフロントローの中でも最強の組み合わせと言っていい3人を中心に組むスクラムでサモアにプレッシャーをかけられるかがポイントのひとつになる。
トップリーグXV戦が約2年ぶりの代表復帰だったにもかかわらず、終始安定したセットプレーと豊富な運動量で勝利に貢献したHO青木は「何でもないところでのミスもあったし、もっと運動量も上げていかないと」と、さらなる完璧さを求めている。
LOはトップリーグXV戦で先発だった大野均が北川俊澄に入れ替わる。
ヒザの故障でアジア5カ国対抗2戦目以降を欠場した北川は密集周辺の仕事ぶりでアピールして競争の激しいLOのポジション争いで先んじたいところ。
BK陣に関しては、トップリーグXV戦と全く同じ先発メンバーだが、試合展開によってはSOマリー・ウィリアムスや、太ももの付け根を痛めて宮崎合宿に参加しなかったWTB小野澤宏時が、早めに投入される可能性もありそうだ。
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昨年のPNCでは前半27分のWTB小野澤のトライ(写真)などで日本が31-23で勝利を収めた |
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昨秋の対戦では日本は集中力を欠き、2軍と言っていいメンバーのサモアに10-13で逆転負け |
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今回のサモア代表来日メンバーはNO8スタワーズ(写真左)など欧州組も含む強力メンバー |
セットで圧倒しながらも、事前にFL菊谷崇主将が「試したい」と語っていたワイドなアタックに関しては、あまり見せ場がなかったトップリーグXV戦。
「ラックの精度に問題があった」というのが、当の菊谷主将の分析だ。
よりフィジカルな相手に対して、ラックからテンポのいい球出しでワイドに攻められるか、そして、トップリーグXV戦で見せたようなDFで粘れるかも、格上の相手に勝利を収めるための大きなポイントとなる。
W杯前にジャパンが国内で見られるチャンスは、今回のサモア戦と8月に予定されている米国戦のみ。
公言どおり、W杯での「2勝」は可能なのか─。
サモア戦こそ、9月のニュージーランドでカーワンジャパンがどんな活躍ぶりを見せられるのかをいち早く自らの目で確認する絶好の機会となる。
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