才能ある若手と実績組の経験がミックス
6試合走り切り、コアチーム復帰に成功

2シーズンぶりとなるコアチームへの昇格を決めたサクラセブンズ
photo by Kenji Demura

4月6、7日、香港でHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ2017-2018 コアチーム予選大会が行われ、日本は大会初日の予選プールでジャマイカ、オランダ、中国、さらに同2日目のノックアウトステージでも中国(準々決勝)、イタリア(準決勝)、南アフリカ(決勝)を連破して優勝。2年ぶりとなる同シリーズのコアチームへの昇格を決めた。

リオ五輪組が5人に、10代の若手も5人。
経験と新たな力がミックスされたブランドニュー“サクラセブンズ”が最短での世界のトップステージへの復帰を決めた。

「体を他のチームを上回るスピードで回復(リカバリー)させて、6試合目でもしっかり動けるようにしていくのがポイント。1月から練習でも、2日間ハードなセッションをやる、というのを繰り返して、2日間で6試合戦うことに備えてきた。自分たちが走り勝つ、という自信を持って送り出すことができた」(稲田仁ヘッドコーチ代行=以下HC)

決して、平坦な道のりではなかった。
プール戦では、アジアセブンズシリーズ韓国大会で敗れていた中国に対して、相次いだシンビン退場者によって2人少ない状況となり、後半5分までリードを許した。
決勝戦でもスピードで勝る南アフリカに前半連続トライを奪われて、いきなり10点のビハインドを背負った。

それでも、前述のとおり十分な経験を持つベテランと、溢れる才能を惜しむことなく披露する怖いもの知らずの若手がうまくミックスされた新サクラセブンズは「走り勝つということをターゲットにやってきた。後半も、全然心配はなくて、やってくれると信じていた」(山中美緒キャプテン)という自分たちのスタイルを貫き通すかたちで逆転勝ちを収めた(対中国=21-14、対南アフリカ=22-10)。

「アタックでラインブレイクする、DFを突破していける選手が何人か出てきた」
稲田HCがそう評価する若手はそんな絶体絶命と言えるような状況でも物怖じすることなく、思い切ったプレーで勝利を引き寄せた。
中国戦(プール戦)後半、同点につながる追撃トライを奪った最年少の平田優芽は、決勝でも桑井亜乃の同点トライにつながる突破を見せるなど、とても高校生とは思えないスケールの大きなプレーでチームに勢いを与えた。
「緊張はあまりしなくて、いつもどおりの気持ちでプレーできた。ほとんどが後半からの出場だったが、短い時間の中でトライが取れて、チームに貢献できた」

さらに、決勝戦で南アフリカの息の根を止めるダメ押しトライを奪ったのも、堤ほのか、清水麻有という10代の選手たち。準決勝、決勝は男子の香港セブンズが行われている香港スタジアムでの試合となったが、そんな大舞台でも自分たちのプレーを貫く強心臓ぶりを見せた。
「これだけの観客の前で試合をするのは始めてなのでワクワクした。その中で自分の力を試せるチャンスだったので、緊張よりもワクワクのほうがちょっとは勝っていた。緊張も少しはしたが、楽しまないと後悔するので、楽しもうと思った」(清水)

プール戦の中国との試合でトライを決める平野。若い才能が躍動した
photo by Kenji Demura

北九州セブンズで世界トップチームに腕試し

そんな若手のラインブレイク能力を最大限に生かすかたちで「アタックでつなぐラグビー。ブレイクダウンではなく、できるだけつなぐ」(山中キャプテン)という新しいスタイルを披露したサクラセブンズだが、もちろんリオデジャネイロオリンピック組をはじめとする経験豊富な選手たちの存在があるからこそ、若い選手たちが伸び伸びと自分の力を発揮できたのも事実。

「本当にハーフブレイクをできる選手が多い。若い子たちがゲインしてくれたボールをうまくつないで、展開していくのが私の仕事。そこに尽きる」と、自分の役割を語る中村知春は、まわりに走力がある選手が増えたことで「つなぎ役」としての能力がさらに磨かれた印象。
10代の選手たちの走りに触発された部分もあるのか、横尾千里も「冷静になるためドラえもんのシールを指に貼って」、それを見ながら、キレのある走りで何度も何度も大きなゲインを重ね、決勝戦では貴重な追撃トライを奪った。

その南アフリカ戦での横尾のトライは苦しい状況の中、自陣からボールを持ち出したマテイトンガ・ボギドゥラウマイナダヴェのキープ力が生み出しものだったし、逆転トライのチャンスを決め切った桑井の、前に出る威力も凄みを増している。

「それぞれの個性がうまくはまっている。チームのテーマは『ラブ』。愛のあるパス、愛のあるサポート。2020年に向けていいスタートが切れた」(中村)

躍動する若手と、その高い能力を引き出す経験値の高い選手たち。
愛のある新しいスタイルで再び世界への歩みをスタートさせたサクラセブンズ。まずは、4月22、23日のHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ 2016-2017 北九州大会で世界トップチームへのチャンレンジをスタートさせる。

text and photos by Kenji Demura

思い切った走りでチームに勢いを与えた清水はキッカーも務めた
photo by Kenji Demura

北九州セブンズでサクラセブンズの「愛あるラグビー」に注目を
photo by Kenji Demura