自分たちのラグビーを80分間体現して

次のワールドカップにつながる勝利を

 

女子ラグビーワールドカップ(WRWC)2017は26日、大会最終日を迎える。

女子日本代表は、プール戦でフランス、アイルランド、オーストラリア、順位決定トーナメント初戦でイタリアと、格上の相手に対して4連敗。

15年ぶりに出場したWRWC本大会での勝利を目指し、大会最終戦となる11、12位決定戦でアジアでのライバル、香港と対戦する。

香港との11、12位決定戦に臨むサクラフィフティーン。待望のW杯での勝利なるか

 

「(試合前日の)最後のチームランでは、チームとしても個々としてもベストなものにしようという話をして、みんな自分のベストを出してくれた。チームとしてずっと合宿を重ねてきて、ワールドカップでの4試合も経て、集大成となる試合にいいかたちで臨める」

 

香港戦の試合会場となるクイーンズ大学内にある練習用グラウンドでの前日練習を終えた後、PR齊藤聖奈キャプテンは最終戦前夜のチーム状態をそう説明してくれた。

初戦のフランス戦では緊張感から自分たちのプレーができなかったサクラフィフティーンだったが、プール戦2試合目のアイルランド、3試合目のオーストラリア戦では、自分たちのペースで戦える時間は明らかに増えた。

それでも、タイトな試合経験のなさが響くかたちで、勝利をものにすることはできなかった。

「ポイントポイントでトライを取りきれなかった場面とか、ディフェンスで我慢しきれなかった場面とか。“勝負のあや“の部分を制することができなかった。そこがラグビーの難しさ」(有水剛志ヘッドコーチ)

 

プール戦の3試合は中3日。続くイタリア戦に向けては中4日の間隔となったものの、世界のトップ国ばかりと厳しい日程での対戦を続けた選手たちに知らず知らずのうちに疲労が蓄積していたことも間違いなかった。

 

有水HCが続ける。

「イタリア戦は、スタッツ自体は悪くなかった。それでも、スタート時点から、一歩ずつ、半歩ずつ遅れた。自分たちでは感じてなかったけど、疲れがあったというのを再認識して、そこを乗り越えないとワールドカップでは勝てないということに向き合ってほしい。その覚悟はできていると思う」

 

 

「クイックにワイドにアタックして、

全員でトライを取り切る」(齊藤主将)

 

 

最終戦で対戦する香港は、初戦から先発出場を続けるCTB長田いろはが「(今回のWRWC前までは)香港くらいとしか試合したことなかった」というように、この7月にもホーム&アウェーで戦ったばかりでもあるし、知り尽くしている相手であることは確か。

 

勝手知ったる香港だが、まずは体を張り続けられるかがポイントに

 

それでも、舞台はワールドカップ。他の試合とは全く異なることが起きがちなのは、この4試合を通じてサクラフィフティーンが経験してきたことでもある。

「香港もまだ1勝もしていない。死ぬ気でくる。ウェールズ、スペイン戦で思ったよりできたと思っているはずだし、自分たちのかたちが少しずつ出せてきているようだ。こちらが受けてはダメ」(有水HC)

 

もちろん、相手どうのこうのではなく、自分たちの持っている力を出し切れるか。

そして、それがものすごく難しいことであることも、わかっている。

 

「ワールドカップで勝つ事自体がとても難しい。勝ちというところにこだわって、試合に臨む」と、チーム全員の心構えを代弁してくれたのは、香港戦で今大会初となる先発出場を果たすHO鈴木実沙紀。

具体的には、HOというポジションということもあって、セットプレーの安定を心がけてプレーしたいとも。

「まずFWではセットプレー。スクラムもですが、特にラインアウト。自分たちは自陣でも敵陣でもラインアウトが多い。マイボールを確実に取ることが、相手の勢いを止めることにもつながるし、流れをつかむことにもなる。あそこで流れをつかめたなというふうにしていきたい。それぞれのポジションで仕事をやりきるだけ」

また3試合の出場停止処分が解けて、大会初戦のフランス戦以来の先発復帰を果たすCTB冨田真紀子も、「ワールドカップで勝つのがどれだけ難しいのかはわかっている」と世界最高峰の場で戦うことの困難さに同意しながらも、今度こそチームの勝利につながる「体を張る」プレーをしてみせることを宣言する。

「覚悟とか我慢とか、試合を見ながらみんなの頑張りを肌で感じてきた。自分はスキルフルプレーヤーでもなく、うまいプレーヤーでもない。体を張る、タックルとかで、みんなに大丈夫だと感じてもらえる勢いをつけるプレー、みんなにいけるんだと思ってもらえるようなプレーをしたい」

 

香港戦に向けた練習では本番さながらの激しいコンタクトも。全てを出し切る準備はできた

 

ワールドカップという未知だった世界で厳しい戦いを続けてきたサクラフィフティーン。

 

「まだ自分たちのラグビーを80分間、やりきれていない。しっかり自分たちのラグビーを体現して、次のワールドカップにつながる試合にしたい。クイックにワイドにしっかりアタックして、全員でトライを取り切って、日本に帰る」(齊藤キャプテン)

 

W杯で勝利して再びこの笑顔を。アイルランドに来ることのできなかったメンバーの想いも感じながら戦う

 

産みの苦しみの後で会心の勝利をワールドカップの場で手に入れられたなら、それこそが本当の意味で未来につながる自分たちの力になる。

 

 Photo and text by Kenji Demura