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上野裕一氏(左)、岩渕健輔氏 |
3月6日(土)・7日(日)、「関西ラグビーフットボール協会ミニラグビー指導者講習会兼ブロック研修会」(主管:関西協会普及育成委員会、主管:奈良県協会)が親里球技場(奈良県天理市)において開催されました。
関西協会管下府県のミニラグビーインストラクター及び関西協会普及育成委員会ブロック担当委員を対象とし、上野裕一氏(日本協会競技力向上委員会委員長)、岩渕健輔氏(日本協会ハイパフォーマンスマネージャー)を講師としてお招きし、2日間の予定で企画されましたが、せっかくの機会ということで、ラグビースクールの指導者で参加を希望される方にも案内しました、自費参加ということで若干名の参加でしたが、皆さん意識レベルの高い方ばかりで、逆にインストラクター、ブロック委員の方も大いに刺激になったようです。
■1日目
受付時に受講者に「ホープ&コンサーン」と題し、まず今回の講習会に対して期待することと関心事を色別の2枚の紙に書いてもらい、それをボードに貼り付けて掲示します。それをその後のワークショップで出た意見や結論で解決できたものについては、その紙を取り去っていくことでこの講習会の成果と課題を明確にしていき、また次回の講習会で活用していくという手法で進められました。つまり現段階での受講者のニーズをさぐり、それを講習会に反映させることができ、解決されたものを取り除くことで残りの課題が浮き彫りにされていきます。
ホープ(期待すること)については、「子供たちが楽しくプレーするためにはどうすればよいか?」が圧倒的に多く、続いて「具体的な指導スキルをアップさせたい」「安全対策について知りたい」「子供の内面:自発性や協調性などを養いたい」「他府県の指導者と情報交換したい」といったことに続いていきます。ごく少数ですが「世界で勝てるには?」といったものもありました。
一方、コンサーン(関心事)は「子供の安全について」が圧倒的で、続いて「指導方法」「楽しくプレーするには」「ミニラグビーの将来の不安:指導者不足、競技者減」「コミュニケーションスキルを学びたい」となっていきます。コンサーンついては、受講者に対し興味というより不安要素といったイメージを求めました。そこでホープとコンサーンの対比から、本講習会に対し求められているのは「子供たちが楽しくプレーするためには(ホープ)、安全を最優先させた正しい指導法(コンサーン)の確立というニーズである」という結論が見出せます。
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ホープとコンサーン |
しかしながらこの講習会は、それでは先の結論から具体的な指導法を導き、学びとるのが目的なのかといえばそうではありません。What to Coach(何を教える)ではなく、How to Coach(如何に教える)を学び取ってもらい、どのような指導者を育てるのか! に主眼が置かれていますので、この講義を進めていくにしたがって、受講者のニーズを解決させることができる指導者を育てることができるスキルを身につける指導者(コーチのためのコーチ)を最終目標においています。
まず各グループごとに自己紹介でIce Breakした後に「日本のラグビーを発展させるためには」「どのような選手を育てたい?」といったテーマでのワークショップと意見発表などで自由闊達な発言ができる雰囲気を作り上げていきます。
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自己紹介 |
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日本ラグビーを発展させるためには? |
その後、カバのダンスの映像を使って、その模倣ができるようにコーチングしていきます。ラグビーの指導では指導対象も経験者ということで、どう指導してもできてしまいます。そこでラグビーではなくダンスを題材として上手に指導ができているかを再確認し、“大切なことは如何に教えるか!”つまり題材が何であれ子供達が理解できるように上手に伝え、子供達ができるようにすることを目指します。その指導法を評価表のシートに沿って評価していきます。
その後、カバのダンスのコーチングを振り返って、現状分析→評価と再計画のプロセスを、Plan→Do→Check→Action(PDCA)というキーワードを使って認識していきます。
続いて、「コーチングスタイル」や「コーチの資質」といったテーマでスライドを使っての講義、そしてPRICELESS理論をもとに、コーチングの実践として各グループを明示法と暗示法に振り分けて明日の実技で発表する課題を提示し練習方法を考えます。
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カバのダンス |
■2日目
岩渕氏のウォーミングアップから始まり、選手の能力を最大限に引き出すための、PushからPullのアプローチの説明があり、この講習会の目玉であるコーチングの実践に入ります。各グループとも、明示法、暗示法の解釈に戸惑いながらもそれぞれに考案したドリルを紹介していき、コーチングの評価を受けていきます、真剣勝負の緊張の中で皆さん素晴らしいコーチングスキルを発揮してくれました。
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岩渕氏による実技 |
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コーチングの実践 |
最後に「理想の指導者像とは?」のテーマで各グループでのワークショップを行い、イメージした絵を紹介していただきました。それぞれに説得力のあるもので、「漁師のお父さん」と題し子供を船にのせて大海へ漕ぎ出す、「大きな木と果実」、それぞれ取れた魚や果実は『練習で身についたスキル』であり、『ゲームの結果』であり、『ラグビーを経験したことによって形成された人格』である、といったように、表現は違えども参加者の理想は同じ方向に向いているように感じました。
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理想の指導者像とは? |
参加者の方から「子供たちに対する愛情と、指導にあたっての情熱とパワーを感じました。体は疲れましたがエネルギーをもらいました。これを子供たちに伝えていきたいです」「コーチを育てるコーチング講習会!自分の頭の中で指導者像が変化してきた。地元へもって帰って実践していきたい」とコメントをいただきました。
また上野委員長からは「受講者の意識レベル、能力が高くもっと時間をかけて行いたかった」との評価をいただきました。
このように本講習会は受講者の感想を聞く限りは、充実かつ斬新で計算された講習と、非常にハイレベルな実技のおかげで大きな成果をみたと思われますが、欲を言えば講習会の環境での配慮が足りなかったり、実技スペースを充分に確保できなかったりと、受講者の方に最高のパフォーマンスを発揮していただけなかった、また講師の先生方にも充分に力を発揮していただくことができなかった点は悔やまれます。次回の課題としてさらに素晴らしい講習会を目指して行きたいと思います。