最終戦でウェールズに勝利もコアチームからの降格確定

成長も課題も明確になってセブンズシリーズ2018が終了

 

 

フランス時間の6月8〜10日、パリでHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ2017—2018 第5戦、フランス大会が行われた。

 

今季、コアチームとしてドバイ、シドニー、北九州、ランフォードのワールドシリーズ4大会を戦ってきた女子セブンズ日本代表。シーズン最後のフランス大会で上位進出をしてコアチーム残留を果たしたかったが、大会初日のプール戦でアメリカ、フランス、スペインに敗れてカップトーナメント進出の可能性が消えたと当時にコアチームからの降格が確定。同2日目の9〜12位決定戦ではロシアに敗れたが、最終戦のウェールズには競り勝ちして、最終成績11位で大会を終えた(シーズン総合順位も11位)。

 

パリ大会でも目標のベスト8入りは果たせず、コアチームからの降格が決まった
photo by Kenji Demura

 

前回のカナダ(ランフォード)大会でシールドチャレンジ優勝(9位)を果たした勢いと自信を持って臨んだフランス大会。

コアチーム残留の可能性を残すためにも、「アメリカ、フランスにチャレンジして、ひとつ、ひとつ勝っていく。特に、最初の3分間がポイント。キックオフ、セットプレーでマイボールをキープして、継続していく」(稲田HC)ことが求められたプール戦だったが、日本の狙いとはまったく異なる展開となってしまう。

 

初戦のアメリカ戦、続くフランス戦ともに、前半だけで相手に3連続トライを許し、いずれも後半追い上げたものの、それぞれ19—24、17—26で敗れた。

 

アメリカ戦でトライを決めるバティヴァカロロ。決定力を披露した
photo by Kenji Demura

 

今季コアチームへの再昇格を果たし、ワールドシリーズを転戦してきたサクラセブンズだが、第4戦までの成績は12位、11位、12位、9位でシーズン総合ポイントはコアチーム中最も少ない「8」。

シーズン総合順位でひとつ上位だったフィジーとのポイント差は「13」あり、コアチーム残留を果たすためには最低でもカップ戦でセミファイナル出場を果たすことが必須だった。

 

アメリカ、フランス相手に連敗したとはいえ、いずれも後半追い上げて点差を縮めていたこともあり、プール戦最終戦でしっかり結果を出せば、カップトーナメント進出が十分可能な状況で迎えたスペイン戦。

 

この大事な試合でも、前2戦と同じように課題の立ち上がりにボールキープを続けられずに前半2分、3分とスペインに連続トライを許す最悪の立ち上がりを繰り返し、反撃むなしく10—21で敗れた。

 

「トライ数はしっかり取れていたし、内容はよかった。どの試合も最初の3分で粘りきれずに取られた失点が響いて追いつけず、課題は明確」(中村知春キャプテン)

 

「最後に粘って、トップ4に入るような相手にもアタックできるようにはなっている。相手も元気で本当に強い試合の最初のところ、そこでもっと粘る、しっかり戦うというところが自分たちの一番足りないところ」(稲田HC)

 

プール戦3敗となった日本はカップトーナメント進出を果たせず、その時点で降格も決まった。

 

 

「アタックを継続してトライまで持っていけるようになった。

チームの文化みたいなもの、土台ができつつある」(稲田HC)

 

 

大会2日目のチャレンジトロフィー初戦ではロシアと対戦。降格が決まったショックもあったのか、今季2大会でベスト4入りを果たしたロシアに一方的に6トライを重ねられて、0—38という大差での敗戦となった。

 

「肉体的な疲労もそうだが、精神力、もちろんスキルも足りない。こういう状況でもしっかり集中して、自分たちのプレーをする。チームのために走る。そういうことができないのが、まだまだ自分たちの弱さ」(稲田HC)

 

それでも、コアチームとして戦ってきた日本のセブンズシリーズ今季最終戦となったウェールズとの一戦(11—12位決定戦)では、「今シーズンずっとやってきた『トリプルアクション、プレッシングセブン、フィジカルファイト』という自分たちのラグビーのクオリティをしっかり出すという意味でも恥ずかしくない試合をする」(稲田HC)という意思統一の下、前半0分での大竹風美子の先制トライの後、前半終了間際、後半7分に、今大会、決定力を見せ続けたバティヴァカロロ ライチェル海遥がトライを重ね、最後はウェールズのアタックを自陣ゴール前で粘り切って、17—12で有終の美を飾った。

 

ウェールズ戦での立山。若手が大きな経験を積んだシーズンとなった

photo by Kenji Demura

 

「最後、接戦を制して勝てたのは良かったが、それだけ。コンスタントに勝ち残っているアイルランドとか、スペインとか、そういうチームにあって私たちにない安定感。それが出てこない限りはベスト8に残れない」

今季、各大会で目標にしてきたベスト8進出を一度も果たせずに降格となった自分たちの実力に関して、冷静に振り返るのは中村キャプテン。

 

その一方で、「アタックを継続してトライまで持っていけるようになって、得点力は上がった。上位のチームにも得点を重ねられるようになった。チームの文化みたいなもの、土台ができつつある」と、稲田HCが評価するように、シーズンを通して厳しい戦いを続ける中で、チームとしての成長が見られたのも確かだろう。

 

個人個人としても、高校生(現在は大学1年生)でセブンズシリーズを転戦するという貴重な経験を積んだ田中笑伊、平野優芽の2人の存在に象徴されるように、それぞれが手応えとさらなる成長への課題を感じてもいる。

「シリーズ重ねるごとにスタメンで使ってもらえるようになって、少しずつ自分がチーム動かすプレーもできるようになってきた。1歩ずつだけど成長できた。

運動量、いいポジショニング。自分のプレーが出せるように、いい準備をしないといけない。もっと自分で積極的に動いてアタックを仕掛けていきたい」(田中)

 

「自分のアタックとスイーパーとしてのディフェンスで強い相手にも通用するというのが見えた部分もある。でも、大きい相手とのコンタクトになると、どうしてもボールを奪われたり、絡まれたり、まだまだ弱い。

明確になった体の弱さ、フィジカルの部分、あとは全試合走りきるフィットネス。このレベルにいるとスキルもまだまだ。もっとラグビーがうまくなって、またこのレベルで戦いたい」(平野)

 

今季のワールドシリーズは終了したが、7月にはラグビーワールドカップ・セブンズ、8月にはアジア競技大会とビッグイベントが続く。

 

「大事な試合が続くのはありがたい。結果は出なかったが、1歩ずつだが成長している。このレベルで、このフィジカルで、このスピードで。セブンズシリーズでしか得られないものというのは本当に大きいし、そう簡単に奇跡は起こらない。

ここで得たクオリティ以上に濃密な1年間を過ごさないと、セブンズシリーズに戻ってきても結果は一緒。離れちゃうのは痛手だが、どういうクオリティでやっていくかは私たち次第。リハビリ期間だと思って、レベルアップして帰ってくる」(中村キャプテン)

 

一人ひとりが課題に取り組み、1年でのコアチーム復帰を目指す
photo by Kenji Demura

 

サクラセブンズの世界へのチャレンジはまだまだ続く。

 

 

text by Kenji Demura