2年目の戦いが続いている「エディー・ジャパン」。8月から9月にかけて開催された「アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2025」では、昨年に続き決勝でフィジー代表に惜敗したが、若手主体のチームで臨み、着実に成長している姿を見せた。そして10月から11月にかけて格上との5連戦に臨むが、まず10月25日(土)、東京・国立競技場で開催される「リポビタンDチャレンジカップ2025」でオーストラリア代表にチャレンジする。
2年目を迎えている「エディー・ジャパン」こと15人制男子日本代表。8月から9月にかけて行われた「アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ(PNC)2025」は惜しくもフィジー代表に27-33で敗れて2年連続準優勝に終わった。
2027年のワールドカップまであと2年、24チームによる組み合わせ抽選がこの12月に開催される中で、立ち止まっている時間はない。3週間ほどの休みの後、日本代表トレーニングスコッドが発表され、すでに次の戦いに向けての準備を始めている。
(2年目の戦いが続くエディー・ジャパン。ここから更なる真価が問われる)
◇オーストラリア代表戦を皮切りに10~11月は格上との5連戦
10月2日(木)、エディー・ジョーンズHCは、25日(土)に東京・国立競技場にて行われる「リポビタンDチャレンジカップ2025」日本代表vs オーストラリア代表、さらに11月のヨーロッパ遠征「リポビタンDツアー2025」と、格上との5試合に向けたテストマッチへ向けた日本代表トレーニングスコッド39名と、同時に「アサヒスーパードライCHALLENGE MATCH 2025」へ向けてJAPAN XVのメンバー9人も発表した。※合宿参加メンバーはこちら
(合宿参加メンバー発表会見に臨むエディー・ジョーンズHC)
10月はオーストラリア代表戦だけでなく、48名の中から選手を選抜し、JAPAN XVとして10月18日(土)、大阪・ヨドコウ桜スタジアムで「アサヒスーパードライCHALLENGE MATCH 2025」JAPAN XV vs オーストラリアA代表、24日(金)には香港でホンコン・チャイナ代表とも戦う。
ジョーンズHCは「おそらく、日本代表がこれまでに行った中で最も意欲的なツアーになるでしょう。5週連続で強豪とテストマッチを戦うことは(現在、世界ランキング13位の)日本代表にとって非常に刺激的です。若いチームが(格上の)オーストラリア代表(同7位)、南アフリカ代表(同1位)、アイルランド代表(同2位)、ウェールズ代表(同12位)、ジョージア代表(同11位)と対戦する機会を得られるのは素晴らしい。一つひとつのプレーで全力を尽くし、一つひとつのボールを奪い合い、対戦相手を追い詰めて勝利を得ることを目指します。それが我々の挑戦です」と意気込みを語った。
◇準優勝だったが若手主体で自信と収穫を得たPNC
その前に、惜しくも準優勝だった8月から9月のPNCを振り返っておきたい。仙台でカナダ代表に快勝し、アメリカに渡ってアメリカ代表、トンガ代表に連勝し決勝に進出したが、今年もフィジー代表に敗れた。
ジョーンズHCは「(PNCを通して日本代表は)着実な成長を遂げました。選手たちの活躍には大変満足しています。昨年から今年にかけて、チームの平均年齢が下がり、経験値も低下した中で、特に攻撃面において、我々が目指すプレーの(キック、ラン、パスの)バランスを良好に出せた。守備面では(攻守が切り替わる)トランジションにおける向上は必要ですが、全体的に見れば着実に前進している」と手応えを口にした。
(PNCではキャプテンとしてチームを引っ張り、大車輪の活躍を見せたワーナー)
(PNC決勝フィジー代表戦で果敢に仕掛ける新戦力の木田)
決勝は前半の終盤に4トライを奪われたことが響いて27-33と6点差で敗戦したが、アタックが機能し62-24で快勝した準決勝のトンガ代表戦は、得点、得失点、トライ数をすべて対トンガ代表戦の過去の記録を更新しての白星だった。
「データを見れば、日本代表のキッキングゲームはかなり良かったし、さらなる向上を見込んでいます。また、攻撃にいくつかのバリエーションが出てきて、これにより効果的なキックがより容易になった」(ジョーンズHC)
また指揮官はPNCで、23歳の若さでキャプテンを務めたLOワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)を中心としたリーダーシップも手放しで称えた。
「ワーナーは常に冷静さを保ち、次のプレーを見据え、フィールド上の選手たちに積極的に関わっていた。ワーナーと李(承信/コベルコ神戸スティーラーズ)のフィールド上でのリーダーシップの賜物ですが、フィールド上の困難な局面に対処する能力において確かな成長があった」
◇3人のLOが新たに選ばれたが、一貫性のあるスコッドを発表
7月に12年ぶりにウェールズ代表に勝利し、PNCで大きな手応えを得た日本代表。今秋のメンバー発表時も、ジョーンズHC は「PNCから数名のケガ人を除き、チーム編成をほぼ一貫して維持するよう努めました」と話したように、やはり、一貫性を重視した選考となった。
2日のメンバー発表後、コンディション都合などで不参加者が出た影響で若干、メンバーが変わり、39名のスコッド(※JAPAN XVからWTBハラトア・ヴァイレアと、コンディション不良により不参加となったPR津村大志に替わってPR古畑翔が昇格。また、FL/NO8ファカタヴァ アマトがコンディション都合により離脱し、FLサウマキ アマナキが追加招集。個人都合によりNO8マキシ ファウルアが離脱)となったがPNCのスコッドから27名がそのまま参加し、FLリーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)など6~7月の代表活動に加わっていた8人も呼ばれ、新たに代表のトレーニングスコッドに呼ばれた選手は4人にとどまった。
指揮官が「特にロックにおいて、これまで手薄だった選手層が厚みを増した」と話した通り、PR古畑(埼玉パナソニックワイルドナイツ)以外の新選手3名はすべてロックの選手となった。
東京サントリーサンゴリアスでリーダーシップも発揮している身長208cmのLOハリー・ホッキングス、仕事人でバックローでもプレー可能なLOタイラー・ポールと、若きLOデーヴィッド・ヴァンジーランド(ともにクボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の3人が新たにスコッドに加わった。フィジカルの強い、格上との対戦が控える中、大きな戦力となることは間違いない。
(10月6日からスタートした大分でのFW合宿ではハリー・ホッキングスなどの新戦力も合流した)
「ホッキングスは、ワーナーに似たタイプの選手です。彼は身長も高く、空中戦にも優れています。攻撃的な選手でもあり、チームに深みを与えてくれます。ポールとヴァンジーランドは、献身的なロックです。彼らはやはり体格も良く、態度も良く、ハードワークするので、スピアーズでも本当に活躍していたので期待しています」(ジョーンズHC)
◇国内で今年最後のテストマッチとなるワラビーズ戦はどう戦うべきか
テストマッチ5連戦の中で、最もファンの注目を集めるのは、やはり10月25日、国立競技場で行われる、今年、国内最後のテストマッチとなる「ワラビーズ」ことオーストラリア代表戦となることは明らかだろう。
オーストラリア出身で、過去2度ワラビーズを率いた経験があるジョーンズHCは、母国との対戦に関して「様々な感情が伴う」と話した上で、「私は幸運にも世界中の様々な国でコーチングの機会を得てきました。どの国で指導にあたる場合でも、その時は100%の情熱を注いでおります。オーストラリア代表との試合においても、その姿勢は変わりません」と、今は日本代表の指導に全集中している。
最近のオーストラリア代表の印象を聞かれて「ここ数年で確実に力を付けています。ニュージーランド代表戦、南アフリカ代表戦、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦でも良いプレーを見せていた」と話した。
現在、世界ランキング13位で、12月のワールドカップの組み合わせ抽選に向けて1つでも2つでも順位を上げたい日本代表は世界ランク7位のワラビーズにどう立ち向かっていくべきか。
指揮官は「我々の最初の試練がオーストラリア代表戦でのゲインライン上(の攻防)にあることを認識しています。彼らは主に(スクラムハーフからの)ワンパスでゲームを展開する。だから我々はゲインライン上で相手の勢いを止められるよう準備しなければならない。そしてボールを奪った際には素早くスペースへボールを運び、彼らのディフェンスを崩す必要がある。いずれにせよ、オーストラリア代表との対戦は非常にフィジカルな試合となるでしょう」と本番を見据えている。
もちろん、ホームの国立競技場で戦えることは日本代表にとって、大きなアドバンテージとなる。
ジョーンズHCも「最善を尽くして(宮崎で)練習を重ね、オーストラリア代表戦に向けて40名、あるいは必要な人数が揃う万全の態勢で臨みたい。チケット販売が順調に進んでいると聞いています。5万人の観客の皆様に日本代表に対して声援を送っていただいて、国立競技場に素晴らしい雰囲気を作り出していただきたい」と日本代表のファンの後押しに大きな期待を寄せた。
(チームを引っ張る働きが期待されているワーナーと復帰したリーチ)
◇JAPAN XVはオーストラリアA代表、ホンコン・チャイナと激突
ワラビーズとのテストマッチの1週間前の10月18日(土)、JAPAN XVとしてオーストラリアA代表とも対戦する。オーストラリアA代表はワラビーズ経験がある選手や準じる選手で構成されたチームで、ジェイミー・ジャパン時代の2022年に3戦し、そのときは1勝2敗だった。いずれせよ、両国にとってテストマッチの前哨戦となる。
ジョーンズHCがオーストラリアA代表戦には「ワラビーズ戦や今後のテストマッチに臨む前に、試合出場時間が必要だと判断した選手たちを出場させる」と話した通り、PNCに参加しなかった選手やPNCで出場時間が少なかった選手、新たに代表に加わった選手を起用するはずだ。
(5月に行われたJAPAN XVのNZU戦でプレーする土永選手。今回もJAPAN XVメンバーに選出されている)
なおオーストラリア代表戦に出場予定の主力選手は宮崎で合宿を続ける予定だが、オーストラリアA代表戦で活躍した選手の中から、きっと、ワラビーズ戦やその後の欧州ツアーで試合に出場する選手が出てくるはずだ。またワラビーズ戦の前日の10月24日、香港で対戦するホンコン・チャイナ代表戦は、今回、JAPAN XVとして招集された若き選手が中心となって戦う方向になりそうだ(※10月12日、PR谷口 祐一郎、LO/FL伊藤鐘平、早稲田大学3年のFB矢崎由高の3人が追加されてJAPAN XVは10人となった)。
◇歴史的白星を挙げて、2027年へ加速できるか
2027年のワールドカップまで2年を切った。今回の5試合を含めて30試合ほどのテストマッチが行われる予定だという。
ジョーンズHCは「チームが完成形となるべき時期はワールドカップの予選プールの最初のテストマッチです」とまだまだチームが成長途中であることを強調した。ただ、ファンは、2年目を迎えて着実に成長しているエディー・ジャパンが格上から白星を挙げる姿を大いに期待している。
ジョーンズHCも「ラグビーではボールインプレーは35分ほどです。ボールインプレー時は常に競う、というテーマを掲げて、あらゆるプレーに全力で挑みます。わずかなスペースにも全力で挑み、一分一秒を全力で戦います。そうすれば、結果は自ずとついてくる。それが、我々が唯一コントロールできることです」と静かに闘志を燃やしている。
若いチームが成長を遂げつつあり、ウェールズ代表戦、PNCで力をつけていることを証明した2年目のエディー・ジャパン。国立競技場の日本代表のファンの前で、過去、0勝6敗といまだ勝利のないオーストラリア代表から初の歴史的白星を奪うことできるか。
もしエポックメイキングな勝利を挙げることができれば強豪との対戦が続く欧州ツアーだけでなく、2年後のワールドカップに向けても大きな弾みとなる。
(文・斉藤健仁)
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◇アサヒスーパードライCHALLENGE MATCH 2025
■日時:10月18日(土)13:00キックオフ
■対戦:JAPAN XV vs オーストラリアA代表
■会場:大阪・ヨドコウ桜スタジアム
■日時:10月25日(土)14:50キックオフ
■対戦:日本代表 vs オーストラリア代表
■会場:東京・国立競技場