日本ラグビーの未来を担う精鋭たちが集結し、ヨーロッパ遠征をおこなう高校日本代表。2025年度に編成された第51期は、3月12日から23日までイングランドに渡り、21日にはU19イングランド代表と対戦する。昨年は惜しくも敗れた先輩たちの悔しさを晴らせるか。多くのラグビーファンから熱い視線が注がれている。

(2024年度 第50期高校日本代表 U19イングランド戦後観客への挨拶)

◇年間計画の見直しで高い完成度

 

 50年の歴史と伝統を誇る高校日本代表は、日本代表の登竜門であり、国際舞台で日本の実力を示す絶好の機会だ。

 

 コロナ禍を前後して、欧州各国を相手に互角以上の戦いぶりを見せてきた。

 2015年度にU19スコットランド代表を10ー7で破る大金星にして、U19テストマッチ初勝利を挙げると、2017年度にはU19アイルランド代表を40ー24で撃破。その翌年もU19ウエールズ代表に29ー31と善戦した。

 

(2022年度 U19アイルランド代表戦 矢崎由高選手)


 3年ぶりに遠征が再開された2022年度には、再びU19アイルランド代表を22ー19で破り、翌年には36ー27とU19イタリア代表から初勝利を手にした。

 昨年度は2008年度以来となるイングランドとの対戦が叶い、47ー52と敗れはしたが、最後まで勝敗の分からない激闘を演じた。

(2024年度 U19イングランド代表戦での激闘)


 今回はそのリベンジマッチである。

 

 第51期は3月12日にイングランドへと渡り、14日にオックスフォード大U20と合同練習を実施。17日にはU19 ハーレクインズとの練習試合が組まれている。19日にはラグビー校を訪れて合同練習をおこない、21日にU19イングランド代表と対戦する。

 

 桑原立監督は日本を発つ前日、「例年以上に仕上がりは早い」と確信を込めて言った。

 遠征直前にはU20日本代表候補との合同セッションもおこなっており、「U20のメンバーたちもかなり良いですねと、昨年の自分たちと比較して言ってくれた」という。

 

(イングランド遠征前最後の練習 U20日本代表候補との合同セッション)


 1年間のスケジュールを見直した成果が早くも出た格好だ。今年度からチームづくりにかける時間を長く設けていた。

 例年では花園を終えた1月末に約50名によるセレクションキャンプをおこない、そこで遠征メンバーを決定していたが、今年度はその時点で候補メンバーを30人まで絞り、ユニット練習や戦術理解に多くの時間を割いた。

 

 相対的に「選考」の時間が短くなり、「強化」を前倒しで進めた形だが、「選考」でも工夫を凝らした。

 全国9ブロックに、各地域の選手事情やスカウティングに長けたブロックセレクター(高校の教員)を設置。より現場に近い指導者からの視点も加えることで、漏れがなく多角的に選手の情報を集約する体制を整えた。

 

(第1回TIDユースキャンプ(高校日本代表候補合宿) ジムでのトレーニング)

 

また、ユース世代の長年の課題である筋力アップを目指し、6月のキャンプでは1日3回のウエイトトレーニングを敢行した。タンパク質を多く摂取できるような食事メニューにも変更した。

 

「除脂肪体重やウエイトについては、その後も追跡をおこないました。S&Cコーチが月に1回ほど各選手のデータを収集し、動画でフォームをチェックしました。ただ大きくなるのではなく、戦える身体を作ることを目指しています。昨年よりも数値は良いと感じています」

 

 キャンプで集まれない日にも、コーチ陣からアプローチをかけた。「コンバインドチームなので、普段の時間の使い方が大事」と指揮官。「ハドル学習」と題して、ラグビーを考えさせる機会を作り、戦術の定着を図った。

 

◇キャプテンはロケティ。初の留学生抜擢

 

 代表メンバー26名のリストを眺めると、ケガによる離脱が目立つ。

 桐蔭学園を花園3連覇に導いたHO堂薗尚悟主将や、東海大大阪仰星のキャプテンで世代随一のリーダーシップを持つCTB東佑太、そして京都成章のエースだったCTB森岡悠良がいない。昨年度のU17日本代表NO8城内佳春(天理)も負傷で招集は叶わなかった。

 

 しかし、飛び級で昨季のU20日本代表に選ばれたSH荒木奨陽(中部大春日丘)をはじめ、PR喜瑛人(桐蔭学園)、CTB福田恒秀道(國學院栃木)、CTB林宙(京都工学院)、NO8須藤蔣一(東福岡)と各校のエースがズラリと並ぶ。LOには泊晴理(大阪桐蔭)を筆頭に190センチ級のタワーが4枚揃った。

 

 花園に出場できなかったチームからは5名が選出された。京都工学院からは昨春にU20の候補合宿に参加した先述の林宙に加え、片岡湊志と杉山祐太朗のハーフ団も選ばれた。

 

「林はとにかくコンタクトが強い。杉山はスキルや遂行力が高く、冷静さも兼ね備えたザ・スタンドオフです。片山はすごく成長した選手の一人です。ランスピードが速く、澱みないパス捌きが特長。3人でリスペクトし合いながら切磋琢磨してきたようです」

 

 天理のWTB坂田弦太郎は猛タックラーとして知られ、開志国際のLOマイカ・ダヴェタは192センチの体躯ながら柔らかい身のこなしができるフィジアンだ。

 

「マイカは飛び級でJTSに入れるべきとの声も挙がるほどのアスリートです」

 

 桑原監督が指名したリーダー陣は4名。キャプテンはNO8ロケティ・ブルースネオル(目黒学院)が務め、バイスキャプテンをCTB福田恒秀道(國學院栃木)、FW&ディフェンスリーダーをHO津村晃志(御所実)、BK&アタックリーダーを杉山が担う。

 

(第51期高校日本代表キャプテン ロケティ・ブルースネオル選手)

 

留学生がキャプテンを務めるのは高校代表では初めてだ。トンガにいる家族や目黒学院の竹内圭介監督に伝えると「びっくりされた」と本人は笑う。「日本語はそこまで分からないから難しいと思ったけど、そういうチャレンジは大事(な機会)だから。日本を背負って戦いたい」と気合い十分だ。

 

(第51期高校日本代表 桑原立監督)

 ロネティを抜擢した理由を桑原監督はこう説明する。

「今年のセレクションポリシーの一つに『勇気』という言葉を入れました。チームに勇気をもたらす選手が、キャプテンであってほしいなと。ロケティのハドルでの言葉はシンプルで私には刺さりましたし、プレーでもチームに間違いなく勇気をもたらしてくれると思います」

 

 それだけ「勇気」を大事にするのは昨季の試合で、開始20分で4トライを先行されたからだ。

「頭が真っ白になったと言いますか...。自分たちが試合の立ち上がりから"戦う"ためには勇気が必要です」

 

 サイズやフィジカルで上回る相手に対し、「ディフェンスの時間を短く、アタックの時間を長くしたい」という。

「スタティックなコンタクト、つまり待った状態でコンタクトを起こしたくありません。アタックでもディフェンスでも、自分たちから接近していく。走り勝つこと(相手よりも動くこと)は大前提で、相手の脅威を丁寧に消していきたいです」

 

 ロケティが福田と考えたスローガンは、結び目を意味する「KNOTS」。「この前の(天理)合宿ではまだチームがひとつになっていなかった」と、結束を呼びかけた。

 

「固い繋がりでワンチームにならないと、イングランドには勝てません」

 

 あらためて、決戦の日は3月21日。現地時間の14時にキックオフだ。

 ライブ配信も予定しており、23時から日本でも視聴できる。

 

 ロケティはこう意気込んだ。

「応援されているのも感じているけど、緊張感はありません。むしろワクワクしています。試合は楽しくやらないと。楽しんできます」