2008年に始まった、20歳以下の世界一を決める国際大会。世界中の若き才能が集う最高峰の舞台は、今年から「ワールドラグビー ジュニアワールドチャンピオンシップ」へと生まれ変わる。

これまでに950人以上が、その後フル代表キャップを獲得してきた若手の登竜門。

その舞台に、この夏、U20日本代表が挑む。


(チーム随一のゲインメーター獲得者、FB古賀龍人選手(明治大学2年)。

JAPAN TALENT SQUADプログラム2026のトレーニングスコッドでもある)


U17日本代表から始まる世代別日本代表街道。高校日本代表を経て、いよいよワールドラグビー主催の世界大会へと挑むステージが、U20日本代表だ。

 

その一方で、全国から集まった若き才能たちが世界へ挑むたびに、その壁の高さを突きつけられてきた場所でもある。

これまで出場した「IRBジュニアワールドチャンピオンシップ」、のちの「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」での通算成績は3勝27敗。2016年以降、U20日本代表は勝利から遠ざかっている。

 

近年では、2023年大会で最下位となり、翌2024年は下位大会「ワールドラグビーU20トロフィー」へ回った。優勝すれば再昇格となる大会だったが、開催国スコットランドに敗れ3位。上位大会への復帰は叶わなかった。

さらに2025年はU20トロフィー自体が開催されず、昨年度のU20日本代表活動は、大分で行われたNZU(ニュージーランド学生代表)との1試合のみにとどまった。


(昨年度のU20日本代表。ワールドラグビー主催の世界大会はなく、大分でNZU戦が開催された)


■再び開かれた世界への扉


そんな中で発表されたのが、大会のリブランドだ。

 

ワールドラグビーは今年1月、2026年大会から名称を「ワールドラグビー ジュニアワールドチャンピオンシップ」に変更すると発表した。参加チームも12から16へ拡大され、日本、フィジー、アメリカ、ウルグアイが加わることになった。

 

再び、日本の若き桜たちに世界への扉が開かれた。

 

20歳以下の新たな世界大会「ワールドラグビー ジュニアワールドチャンピオンシップ」(以下、JWC)は今年、6月27日から7月18日までジョージアで開催される。16チームを4組に分けてプール戦を行い、その順位に応じて順位決定戦へ進むレギュレーションだ。

 

日本が入ったのはプールB。昨年度準優勝のニュージーランドに加え、Six Nations U20で経験を積むイタリア、スコットランドが同組に並ぶ。

 

「最大のターゲットは、初戦のU20ニュージーランド代表戦です。6月27日午後3時30分(現地時間)キックオフ。その試合に勝つことだけを考えています」

そう語るのは、大久保直弥ヘッドコーチ。U20日本代表を率いて3季目を迎える。

 

そう、なにを隠そう、初戦の相手はいきなりU20ニュージーランド代表。もちろん今まで一度も勝利を収めたことのない相手。だからU20日本代表は、その一戦に照準を定め、強化を進めてきた。

 

今季のチーム作りが始まったのは、2025年11月末。関東・関西でのトライアル合宿を経て、2026年2月にはフォワード陣のみを先行して1カ月間強化した。

「フォワードが勝てなければ、試合には勝てない」と語る大久保HC。リーグワン各チームへ足を運び、世界のサイズとパワーに対抗するための“出稽古”を重ねてきた。

 

3月にはバックス陣も合流し、チームとして初の全体合宿を実施。4月には今季初となる実戦に臨んだ。

相手は花園近鉄ライナーズ、そしてコベルコ神戸スティーラーズ。リーグワン勢に胸を借りた。

 

花園近鉄ライナーズとの初戦では、スクラムで圧力をかけ、モールでトライを取り切り、54-36で勝利。

「2月から積み上げてきたスクラムを信じて体現してくれました。8人全員がサボらず結束した、素晴らしいスクラムだったと思います」

大久保HCも、試合後にその出来を称えた。

 

(「前列はしっかり固まって我慢し、後ろの押しを信じています」とはPR本山佳龍選手(静岡ブルーレヴズ))


続くコベルコ神戸スティーラーズ戦でも36-38と接戦に持ち込んだ。2年前にもU20日本代表として対戦していたが、その時は25点以上の差をつけられた相手。今年は食らいついた。

 

ただ、大久保HCは冷静だ。

「点差が縮まったからといって、安易にチームが成長したと考えてはいません」

リーグワン勢はシーズン中であり、朝9時半キックオフという条件もあった。結果だけに浮かれることなく、収穫と課題を見つめた。



■日本らしさを武器に


2試合を通して、浮かび上がった課題がある。

 

試合序盤に、相手の圧量を受ける時間帯があったこと。フィジカル差。そして、プレッシャー下での組織力。

「何度もタックルで吹き飛ばされる場面はありました。でも、それを経験すること自体が我々にとって大きな財産です」

(大学1年生らも恐れず体を当てた。写真は須藤蔣一選手(明治大学1年))


一方でコベルコ神戸スティーラーズ戦では、過去2年間抱いていたという発想から一歩踏み出し、チャレンジもした。

「自分たちがボールを持ち続けなければ、ディフェンスで守り切れない、と思っていたんです。でも一度そこから離れてみることにしました」

効果的にキックを使い、あえて相手に攻めさせる。そこからキックを蹴り返させるか、ディフェンスでターンオーバーを狙うか。選手たちのディフェンス力を信じた。

 

実際、そのチャレンジが機能する場面は見られたという。ただし、ボールを奪い返した後の攻撃には課題が残った。

「カウンターアタック時の組織力やスピード感は、まだ足りません。目指しているのは、誰か1人に依存するアタックではなく、15人全員で形を作りながら前進するラグビーです」

 

スクラムも、アタックも、ディフェンスも。U20日本代表が土台とするのは、チームプレー。

「日本人は責任感が強く、調和を守ることができます。だからいかにチームプレーを徹底できるかが重要です。誰か1人でもサボれば成立しないディフェンスになっています」

8人でスクラムを組み、15人でアタックし、全員で守る。日本人の特性を生かしたラグビーで、世界へと打って出る準備を整えている。



■3年代で1世代へ


もう一つ、今年のチームを語る上で欠かせないのが、大学1年生の多さだ。

 

U20日本代表の中心は本来、大学2年生。だが今年は、候補メンバーの約3分の1を “飛び級”選手たちが占める。大久保HC曰く「彼らはすでに『自分は世界で戦うんだ』という覚悟を持っている」のだという。

 

そう、大学1年生たちは去る3月、高校日本代表としてラグビーの母国・イングランドへ出向き、U19イングランド代表と対戦。そして史上初めて勝利を収める快挙を達成した。

だから世界と戦い、世界で勝つマインドを、既に有するのだ。その存在自体がU20日本代表候補全体に刺激を与えている、と大久保HCは感じ取る。

 

特に存在感を放っているのが、スクラムハーフ陣。

大久保HCが「この3年間で最もハイテンポにボールを動かせるハーフ。フィジカルも突出していて、ゲームの中で加速できる」と称する元橋直海選手(筑波大学1年)は、高校日本代表活動以降、急速に評価を伸ばした。

「スクラムハーフは一番ボールに触るポジション。だからこそ、競いながら成長してほしい」と期待を寄せる。

 

一方、グラウンドを離れれば、世代を越えて笑い合う姿もある。

最年長のうちの1人、早生まれの大学3年生・坪根章晃選手(帝京大学)はチーム随一のいじられキャラだそうだ。

 

以前から、U20日本代表は「3年代の融合」が必要だと提唱してきた大久保HC。

「以前は、大会が終わると経験値が次の世代へ還元されないこともありました。でも今は、高校代表とも連携しながら、同じアタックを継続できています」

だからこそ、新しい世代が加わってもスムーズに順応できるのだという。オン・オフ両面で、その成果は表れ始めている。

(早生まれの大学3年生にも参加資格がある。写真は坪根章晃選手(帝京大学3年))



■異国での戦い方を知るために


U20日本代表は、5月16日から16日間のニュージーランド遠征へと向かう。

 

ホークスベイデベロップメントと1試合。そしてNZU(ニュージーランド学生代表)と2試合。JWC前、最初で最後の海外遠征で「異なる環境の中でも平常心でプレーできるのか」テストを行う。

 

長時間移動、時差、食生活の違い。そうした環境に適応しながら、試合ではフィジカルバトルとプレッシャーに向き合う。相手の圧力を受ける中で、どれだけ組織力を保ち、自分たちのラグビーを遂行できるか。課題を洗い出し、改善へとつなげていく算段だ。

 

だからこそ、この遠征では多くのチャレンジを試みるつもりだ。

「U20日本代表のスローガンである『コスモ』――超速を超える意識でアタックする時間――を、どれだけ増やせるか。つまり、カオスな時間――陣形の整っていない混沌とした状態――を減らし、組織だった時間をどれだけ作れるかが重要です」

強いプレッシャー下でも、組織として戦い切れるか。それが最大のテーマとなる。

 

今回のニュージーランド遠征に参加するのは28人。もちろん、JWCメンバー選考にも直結する。

とりわけJWCは中4日で5試合を戦う過酷な大会ゆえ、限られた人数で戦い抜くには、タフな日程でも壊れない身体と、複数ポジションをこなせるユーティリティ性が求められる。

 

それでも、大久保HCが重視するのは、技術やフィジカルだけではない。

「コツコツ積み重ねられる選手かどうかは、世界で戦う上で大事な要素だと思います」

代表活動以外の時間で、どれだけ自分を高められるか。日常の中で、どれだけ自分を律することができるか、という要素もまた、世界と戦うための条件になる。

 

すべては6月27日、ジョージアでU20ニュージーランド代表から金星を挙げるため。

U20日本代表はJWC前、最初で最後の海外遠征へと向かう。

(昨年もU20日本代表候補合宿に参加していた林宙選手(帝京大学1年)。「自分の役割は、外でいい形でもらうこと」)


(文:原田 友莉子)


◇U20日本代表 ニュージーランド遠征スケジュール

日程:5月16日(土)~5月31日(日)

日程

内容

5月20日(水)

ホークスベイデベロップメントとの強化試合

5月26日(火)

NZU(ニュージーランド学生代表)との強化試合①

5月30日(土)

NZU(ニュージーランド学生代表)との強化試合②

※スーパーラグビー チーフス vs ブルーズの前座試合


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