IRBパシフィック・ファイブ・ネーションズ
ニュージーランド遠征
リポート‥‥1

6月23日(金)

ダニーデン5日目。今日のダニーデンは、昨日までの不安定な天候から打って変わって一日晴天に恵まれました。気温もそれほど低くなく、今まででは一番暖かいなかで練習ができたのではないでしょうか。

低く鋭くヒットする   8人で押し込む
低く鋭くヒットする 8人で押し込む

明日にオールブラックスジュニア(以下=AB Jr.)戦を控えた日本代表は、試合に備え最後の練習を行いました。
ウォーミングアップの後、ユニットに分かれ、FWはスクラム・ラインアウト、BKはキック中心のアタックを確認しました。
スクラムに関しては、AB Jr.は今まで対戦した中で最も強力なスクラムを組んでくることが予想されます。そのような中で安定したボール供給をするため、相手ボールではスクラムをコントロールし有効なディフェンスを行うために入念に確認しました。サモア戦同様、相手より早くしかけ低く鋭いスクラムで対抗していきます。ラインアウトは、常に100%を目指し安定を図ります。
BKは、これまで取り組んできたキックを使った攻撃オプションをチェック。地域・風・相手のプレッシャーなどを計算に入れ、SHで蹴るのか、SOで蹴るのか、または短く蹴るのか、長く蹴るのか、などを確認しました。

100%を目指すラインアウト   FWに指示を与えるSH池田選手
100%を目指すラインアウト FWに指示を与えるSH池田選手

ボールキャリアーに的確なサポート   深い位置から走りこむBK
ボールキャリアーに的確なサポート 深い位置から走りこむBK

その後は、15対13でアタックの確認を行いました。地域ごとに有効な攻撃オプションを選択しアタックしていきます。FWはサポートコースやランナーのときに孤立しないこと、BKはラインを深く取ること、間隔を狭くすることに注意して練習を行いました。
様々なオプションを一通り確認し、練習を終えました。

午後は、キックオフと同時刻に試合会場であるカリスブルックスタジアムに向い、ロッカールームやピッチを確かめました。特にキッカーの池田・安藤・大西等は実際にキックの感触を確かめていました。「House of Pain(お仕置き部屋)」の異名をとるこのスタジアム。由来は、オールブラックスが試合を行うとここでは、ほとんど負けたことがないからです。我々、日本代表は、お仕置き部屋の扉を開けに行きたいと思います。

夕食前には、チームミーティングを実施し、AB Jr.に向け映像を交え最終確認を実施。ミーティング終了に際し、大野主将から「やるのはすべて自分たち。体を張って戦おう。今夜は、明日のためにコンディションをしっかり整えましょう」と締めて終了しました。

ニュージーランド遠征もいよいよ最終戦です。相手は今までで最強の相手となるAB Jr.ですが、大野主将率いる日本代表は臆することなくチャレンジしていきます。ぜひ、日本代表への応援をよろしくお願いします。
なお、明日の試合では先日、他界されました故・宿澤広朗氏に哀悼の意を表し、試合前の黙祷と、我々日本代表は喪章をつけて試合に臨むことが決定しました。宿澤さんのためにもしっかりとした試合をしたいと思っています。


※ラグビバにて試合出場全メンバーのコメントを掲載しています。


◎大野均主将

「オールブラックス ジュニアは日本を格下に見ていると思うので、最初から積極的に仕掛け出鼻をくじき、やられる前にやります。我々は、良い試合をしに来ているのではありません。勝ちに来ています。そういう強い気持ちを持って臨みたいと思います。
ニュージーランドに来たくても来ることができなかった大畑さん・良太・相馬さんのためにもいい結果を残して、日本に帰ります。
また、明日は宿澤さんのためにも、恥ずかしい試合はできないので、きちんとした試合をしたいと思っています」。

激しいタックルが持ち味の吉田・守屋のCTB陣とWTBオト   試合会場となるカリスブルック・スタジアム
激しいタックルが持ち味の吉田・守屋のCTB陣とWTBオト 試合会場となるカリスブルック・スタジアム

カリスブルック・スタジアムを下見
カリスブルック・スタジアムを下見

6月22日(木)

ダニーデン4日目。昨夜は雹まじりの雨が明け方まで降り続き、今朝はあいにくの曇り空でした。練習中も晴れ間が出たかと思うと雨が降り出したりと非常に調整が難しい一日でした。

今日の練習は、選手のコンディションを考慮し、午前中のみの練習となりました。試合間隔の短さと度重なる移動などで、選手たちもさすがに疲れが見えたため、午後の練習を中止し休養にあてました。

ストレッチを行う選手たち   ウォーミングアップ1
ストレッチを行う選手たち ウォーミングアップ1

ウォーミングアップ2   ウォーミングアップ3
ウォーミングアップ2 ウォーミングアップ3

午前中の練習は、15対13のジェネラルプレーを実施し、攻撃の組み立てを中心に行われました。

アタックに関しては、次戦に向けて新しいことを入れるのではなく、これまで取り組んできたものの精度を上げることが重要です。ゲインラインをベースに前に出ているのか、下がっているのか。さらに、ボールが停滞しているのか、動き続けているのか。など様々な状況に対応するべくHB団を中心にゲームを組み立てます。

また、サポート体系など細かな部分も引き続き動きの中で確認し、試合に備えました。試合では、数少ないチャンスを生かし、得点に繋がるような攻撃を仕掛けたいと思っています。

その後は、FW/BKユニットに別れ、FWはラインアウト・BKはコードプレー&キックドリルを行いました。

FWは前回のサモア戦で課題となったラインアウトを修正し、安定した球出しとラインアウトを起点としたモールなどへの対応も併せて行いました。

BKはコードプレーの確認。ラインの深さ・広さを考え、プレーヤーのスペースの働きかけなどをチェックしました。

練習後、試合に出場する22名のメンバーが発表されました

6月24日(土)カリスブルックスタジアムで、桜の誇りと仲間との信頼を胸にしっかりと戦いたいと思います。皆さんの熱いご声援をお願いいたします。

日本代表、明日は午前に最後の練習を行い、午後は試合会場のカリスブルックスタジアムにて軽く体を動かし、感触を確かめます。

ボールキャリアーへ素早いサポート   ラインアウトモールはしっかり押し込む
ボールキャリアーへ素早いサポート ラインアウトモールはしっかり押し込む

SOの両側には必ずサポート   ラインアウト後もしっかりコンテスト
SOの両側には必ずサポート ラインアウト後もしっかりコンテスト

6月21日(水)

ダニーデン3日目。昨夜から降り続いた雨の影響か、冷たい風が吹く寒い一日となりました。街行く人も、手袋にニット帽そして厚手のコート姿の人が非常に多いです。そんな中、日本代表は午前・午後と練習を行いました。

午前中の練習のフォーカスはディフェンス。まずは、体を温め速やかにトレーニングに入れるように、入念にウォーミングアップ(以下W-Up)を行います。準備ができた選手から個人でグラウンドを2周し体を温め、ラダーを使い筋温を上げていきます。その後に全体でのW-Upを行います。これは、ダニーデンに到着後から行っているのですが、気温が低いため、体を十分に温めていないと思わぬ怪我が起きてしまう可能性があるので、その防止のために行われています。特に、今日は強度の高い練習をするため、入念なW-Upとなりました。

入念なウォーミングアップで体を温める   練習の説明を受ける選手たち
入念なウォーミングアップで体を温める 練習の説明を受ける選手たち

その後は、15対13を実施。主にディフェンスを中心とした練習を行いました。エリサルドヘッドコーチからは、インサイドブレークをされないこと、きっちり内側からディフェンスラインを押し上げることが指示されました。ニュージーランドに到着して以来、取り組んでいるプッシュアップコールも全員で意識してできるようになり、ディフェンスラインも大きく崩れることなく様々なアタックに対応できるようになって来ました。さらに精度を上げるべく繰り返し行われました。

その後は、ユニットに別れFWは密集周辺(ホットゾーン)のディフェンス。BKはFLを含んだ形でのディフェンス・アタックを行いました。

BKはラインディフェンスを確認   DFラインを押し上げプレッシャーをかける
BKはラインディフェンスを確認 DFラインを押し上げプレッシャーをかける

FWは密集周辺のディフェンスをチェック   アタックを仕掛ける安藤選手
FWは密集周辺のディフェンスをチェック アタックを仕掛ける安藤選手

アタック側はボールキャリアーに素早くサポート   内側は絶対に抜かれない
アタック側はボールキャリアーに素早くサポート 内側は絶対に抜かれない

午後は、15対13の練習をアタックにフォーカスを当てて実施。わずか1時間ほどの練習でしたが、集中力の途切れない、激しい練習となりました。アタックに関しては、ミスマッチを見逃さず的確に攻める、キックを有効なオプションとして使うなどの指示が与えられました。池田-大西、伊藤-安藤のHB団を中心に攻撃を組み立てました。また、練習中に起こる下のボールへの働きかけやボールを守るためのスクラッチなどにも、しっかり対応しながらの練習となりました。次第に激しさを増し、熱を帯びた練習は厳しいものとなりましたが、逆にミスの少ない非常に良い雰囲気の中で、練習は終了しました。

明日は、選手の疲労を鑑み、午後の練習を中止し午前のみの練習となります。明日は、いよいよオールブラックス・ジュニア戦のメンバー発表です。厳しいこのシリーズで最強の相手と戦う22名が決定します。皆さんの熱い応援をよろしくお願いします。

アタックにフォーカスを当てた午後の練習   キックも有効に使う
アタックにフォーカスを当てた午後の練習 キックも有効に使う

締めは大野主将を中心にプッシュコール、1・2・3!   練習後、ヘッドコーチを中心に円陣を組む
締めは大野主将を中心にプッシュコール、1・2・3! 練習後、ヘッドコーチを中心に円陣を組む

6月20日(火)

  試合のポスター
 
試合のポスター。街中のいたるところに掲載されています

ダニーデン2日目。

昨日は到着が夜だったため、ダニーデン市内の様子が分かりませんでしたが、今朝、外に出てみると伝統ある建物が立ち並ぶ歴史の重みを感じさせる静かな街でした。また、市内にはオタゴ大学があり、日本人留学生も多く滞在しているということで、所々に日本語の表示や日本食レストランも数軒点在しています。ラグビーももちろん盛んで、地元のスーパー14チーム、オタゴハイランダーズやNPC・オタゴのジャージーやロゴマークを多く見かけます。今週末の試合のポスターもメインストリートを中心にいたるところに貼ってあり注目度の高さが伺えました。

日本代表は午前・午後と練習を行いました。今日のダニーデンは、晴天に恵まれましたが、気温が非常に低く最高気温は5℃。グラウンドの芝生が凍る厳しい気候の中での練習となりました。

午前中は、バックスのみがグラウンドで練習を実施。FWは宿舎近くのジムを利用しストレングストレーニングを行いました。

バックスは、キックとキック処理を入念にチェック。このキックに関しては、ここ数試合の課題としてあげられている項目であり、一つのミスで失点につながりやすいということから多くの時間を使い修正を図りました。練習では、キックの取り方から、カウンターアタックの仕掛け方、カバーリングなど様々なドリルを実施しました。

午後は、午前とは逆でFWがグラウンド、BKがストレングストレーニングを実施しました。

FWのトレーニングはスクラム。前回のサモア戦で今まで取り組んできたものの成果はある程度出すことができましたが、さらに上を目指すために8人で組むということを目指すべく数多くのスクラムを組みました。

ウォーミングアップの後から、1対1→2対2→3対3→5対5→7対7と徐々に人数を増やして組んでいきました。当然、数が少なくても多くなっても重要となるのはしっかりとしたバインド、フットポジションを取ること。きちんとした体勢で一つの塊となってスクラムをコントロールすることが安定した球出しに繋がります。何度も何度も確認しながら組み込みました。

相手がスクラムマシーンになると、相手ボールを想定し、我々が有利となるようなスクラムをコントロールする練習も実施しました。

今週末のオールブラックス・ジュニア戦は今まで以上に、一つのミスが大きく得点に響く試合になります。残り3日となりましたが、チーム一丸となって挑んでいきたいと思います。応援よろしくお願いいたします。

ホテル前から見た市内の様子   ラダートレーニングで徐々に体を温めていく
ホテル前から見た市内の様子 ラダートレーニングで徐々に体を温めていく

終始キックの練習に費やした   どんな状況でも肘を締めてしっかりキャッチ
終始キックの練習に費やした どんな状況でも肘を締めてしっかりキャッチ

3人のペアでカウンターを仕掛ける   エリサルドヘッドコーチから細かな指示が飛ぶ
3人のペアでカウンターを仕掛ける エリサルドヘッドコーチから細かな指示が飛ぶ

しっかりとした姿勢をつくる   しっかりと押し込む
しっかりとした姿勢をつくる しっかりと押し込む

マイ・ボールは仕掛ける   相手ボールを想定し、コントロールする
マイ・ボールは仕掛ける 相手ボールを想定し、コントロールする

地元紙の取材を受けるマキリ選手
地元紙の取材を受けるマキリ選手

6月19日(月)

19日、日本代表は、24日に行われるオールブラックス・ジュニア戦のために一週間滞在したニュープリマスからダニーデンへ移動しました。

午前中にホテル周辺で軽く体を動かした後、ニュープリマス→ウェリントン→ダニーデンと空路で移動し、日中に現地入りするはずでしたが、思わぬトラブルに巻き込まれ現地到着が大幅に遅れてしまいました。

まず第一のトラブルは、ホテルの水道工事のため、断水になってしまったこと。早朝に各部屋へインフォメーションが投げ込まれたのですが、突然の断水にシャワーも浴びることも、ましてやトイレも入れず非常に困りました。さらに、ホテルの駐車場では朝から突貫工事が始まり工事機械が唸りを上げ騒音にも悩まされました。

追い討ちをかけるように、本日のニュープリマスを含むタラナキ地方は、局地的な暴風に見舞われ、飛ぶはずだった飛行機がすべてキャンセルになり、空港が閉鎖され、移動手段を断たれてしまいました。

急遽、NZ協会やタラナキ協会の速やかな対応により陸路でウェリントンに入ることになり、バスにてウェリントンを目指すことになりました。激しい横風に何度もハンドルを取られたり、あまりの強風にタイヤカバーが突然あいてしまったりするバスに揺られ、途中ワンガヌイで30分ほどの昼食休憩を挟み、約6時間の移動でウェリントンに到着しました。

ウェリントンからダニーデンの飛行機は順調に運航されており、19時発の便でダニーデンに到着、ホテルに到着し夕食を取れたときには21時を回っていました。しかし、ダニーデンのホテルでの夕食には、鮭の塩焼きや味噌汁も出され、しばらく口にすることがなかった懐かしい味に移動の疲れも癒されました。

思わぬ所で足止めをくってしまいましたが、これも海外遠征では珍しいことではありません。この海外の洗礼にAdaptabilite~適応~し、しっかり次戦への準備をしていきたいと思います。
20日は、午前中がFWストレングストレーニング・BKグラウンド、午後がFWグラウンド・BKストレングストレーニングとなります。引き続き、ご声援をよろしくお願いいたします。

ウェリントンの空港でリラックス
ウェリントンの空港でリラックス

6月18日(日)

サモア戦から一夜明けて、日本代表チームは次戦のオールブラックス・ジュニア戦に向け、準備をスタートさせました。

17日に試合に出場したメンバーは、宿舎近くのプールにてリカバリーを行いました。太田コンディショニングコーチの指導の下、プール内をウォーキングしながらストレッチ・スイムなどで前日の疲れを徐々に取り除いていきます。

選手たちの体には、細かな傷が無数に残り、昨日の激戦を物語っていました。

ただし、大きなけが人はなく、全員でオールブラックス・ジュニア戦に臨むことができます。

出場のなかった選手は、Yarrow Stadium内のフィットネスジムにてストレングストレーニングを実施し、大道ストレングスコーチの下、黙々とメニューをこなしていきました。

コーチングスタッフは、早速17日の試合の分析ミーティングを行い、修正点を洗い出しました。

サモア戦で前半25分までできたディフェンスを80分間し続け、さらに精度の高いアタックでチャレンジしていきたいと思います。引き続き、ご声援の程よろしくお願いいたします。

昨夜、宿澤さんの突然の訃報が届きました。あまりの突然の出来事にチーム一同驚きを隠せません。宿澤さんのためにも、次戦でしっかりとした試合をして、良い結果をご報告できるよう頑張ります。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

◎太田ジェネラルマネージャー

「突然のことで、本当に驚いていますし、未だに信じられません。宿澤さんは、これから日本のラグビー界を牽引していく人でした。また、改革の人でもあり、現在の代表チームの強化体制やトップリーグの礎を築いたのも宿沢さんでしたので、本当に残念でなりません。現役時代は、日本代表の監督と選手の関係でした。その頃は、宿沢さんのことを尊敬しすぎていてまともに話ができませんでした。

最も印象に残っているのはスコットランド戦に勝利した試合。この試合に向けて宿沢さんは、勝てるといい続けてきました。それが、現実となり戦略を含めて非常に自信を持つことができました。臨んだ第2回のワールドカップでは、明確な目標のもと、ジンバブエに勝利することができ、歴史的な1勝を上げることができました。

私にとって宿沢さんは、恩師というか師匠というか、言葉では言い表すことができない存在です。次の試合は、ぜひ、日本らしい戦い方で成長した姿をお見せしたいと思います。謹んでご冥福をお祈り申し上げます」