U23日本代表 ニュージーランド遠征リポート

4月29日(土)

いよいよ最終戦のNZUとのゲームです。地元ハリケーンズの本拠地「Westpac Stadium」でスーパー14のハリケーンズ対チーフスのカーテン・レーザーのゲームということに加え、昨日は元日本代表監督の向井氏と同キャプテンのマコーミック氏から、今日の一戦に臨む心構え等のお話をいただき、選手たちの気持ちは否が応にも高まってまいります。ロッカールームを出る直前には国歌を斉唱し、国の代表として戦う誇りと責任を胸に選手はピッチへと出ていきました。

日本国旗をバックにロッカールームでの国歌斉唱 ホラニの突進もNZUディフェンスに阻まれる
日本国旗をバックにロッカールームでの国歌斉唱 ホラニの突進もNZUディフェンスに阻まれる

試合開始とともに雨模様となり、風もあいまって非常にコンディションの悪い中でのゲームとなりました。KO直後の1分、ハーフウェイ中央ラックからNZU9→13→11とわたりあっさりトライを許してしまいました。相手に先制され浮き足立ったのか、その後も5分、14分と立て続けにトライを許してしまいました。JAPANも負けじと相手陣深くまで攻め込むものの、ラインアウトでのミスやターンオーバーで陣地を押し戻されなかなか得点ができません。しかし、これ以上得点を許してしまうと勝敗が決してしまうという危機感からか、NZUの攻撃を渾身のタックルでチャンスの目を摘み、前半を序盤に許した3トライのみの0-21で折り返すことができました。

後半も集中力を切らさず、すばらしいディフェンスでNZUの突進を再三阻止し続けておりましたが5分、自陣ゴール前から相手12番のキックパスを8番がキャッチしそのままトライ、2PGも加わって34点にしてしまいました。その後は体を張ったプレイでお互い拮抗したゲームが続きました。そんな中、37分に敵陣左ラックから9番吉田→10番野村→7番北川→13番ロコツイとわたり待望の初トライ。いよいよこれから反撃というところでノーサイドの笛が鳴ってしまいました。結局5対34、最終戦を勝利で飾ることができませんでした。

雨が降りしきる悪いコンディションのなか、両チームとも足を滑らせたりボールをファンブルしたりとミスの目立った試合でした。にもかかわらず、接点での激しさやボールへの執着力はNZUが上まわっておりました。しかし、JAPANも11番ポンギ選手や14番北川選手が度々ゲインラインを大きく越える走りをみせたり、6番佐々木キャプテンの体を張ったタックルでチームを牽引していたプレーは世界に通用する部分も見えたに違いありません。2011年ATQプロジェクトはこのツアーが始まりであり、これをきっかけに世界と伍して戦えるラグビーを追及し、選手を育成していかなければならないと思っております。2011年RWCには日本がベスト8以上の成績を残すことが必定です。そのためにも今回の敗戦を真摯に受け止め、選手、スタッフ総力をあげて目標を達成できるよう努力しなければならないと考えております。今後とも皆様の心温まる応援、よろしくお願いいたします。

◎加藤ヘッドコーチ
「最終戦、『新しい歴史を創ろう』を合言葉に臨んだゲームでしたが健闘むなしく敗退してしまいました。雨、風のためにキックを中心とした戦いをする中で、積極的な攻撃もできましたが、厚いディフェンス、コンタクトエリアにおける執拗なプレッシャーに何度もターンオーバーを許し、また、雨・風によりグラウンド、ボールが非常にすべる状況でのミスが相手のチャンスとなり、得点を許すきっかけとなってしまったことは否めません。しかし、選手たちのひたむきな戦いには敬意を表したいし、このメンバーでもっと多くのゲームを経験させたいと素直に思います。このゲームから、彼らの今後成長できるであろうポテンシャルを十分に感じ取ることができました。そして、日本代表チームの強化に、この年代層の強化は絶対必要不可欠であり重要であることは十分に承知しています。将来の日本代表チームの中心選手となりうる彼らの今後の成長のためにも、このツアーでの課題を明確にし今後、彼らの成長をサポートしたいと思います。
最後になりますが、U-23日本代表チームを多くの方に応援していただきましたことを心よりお礼申し上げます。ありがとうございました」

77分ロコツイ選手のトライ メインゲームのハリケーンズ対チーフス
77分ロコツイ選手のトライ メインゲームのハリケーンズ対チーフス

4月28日(金)

明日、29日はいよいよ最終戦であるNZUとのゲームです。この強力な相手に向けて今日は午前中のみをトレーニングセッションに充てました。ウォーミングアップの後ユニットに分かれ最終チェック。特にFWは昨日見たハリケーンズのスクラムをイメージして強固で激しい当たりを連発しておりました。BKSもサインプレーの最終確認、特に自陣からどう抜け出すか、敵陣に入った後どう攻撃するか、を入念にチェックしておりました。最後に明日の先発メンバーを中心にディフェンスのチェック、アタックオプションの確認を行い練習を終えました。

練習の途中に日本代表ヘッドコーチであるジャン・ピエール・エリサルド氏と勝田技術委員長がグラウンドに現れました。明日の試合における選手のパフォーマンスをチェックしに、はるばるニュージーランドまで来たわけです。選手も気がつき練習も自然に熱を帯びてまいりました。明日の試合でこの中からJAPAN戦士が生まれる可能性が出てきました。私たちの目標はあくまでも2011年のワールドカップにおいてベスト8に入るための選手養成ですが、来年のワールドカップに出場する選手が出てくればそれにこしたことはないのです。とにかく明日は選手、スタッフ一同持てる力をすべて出し切り、日本代表HCの前で歴史の新たな1ページを飾れるよう頑張りたいと思います。みなさんも日本から熱い声援を送ってください。

ロック・フランカー陣の三根、土佐、篠塚、北川(忠)の各選手
ロック・フランカー陣の三根、土佐、篠塚、北川(忠)の各選手

コメント紹介も今日がいよいよ最後になりました。最後を飾るのはロック、フランカー陣です。
◎三根選手

「最後のNZU戦に勝って良い形でこのツアーを終わりたいです。そしてこの経験をチームに持ち帰り赤い旋風を巻き起こします」
◎北川(忠)選手

「自分のプレーで少しでもチームの勝利に貢献することができるよう頑張ります。日本ラグビーの歴史を変えます」
◎篠塚選手

「15日間のNZ遠征もあとNZU戦だけになりました。目標のNZUに勝つことを実現します。4月29日は日本ラグビーの歴史が変わります」
◎土佐選手

「明日は出ないので外から勉強いたします」

チームによるディフェンスチェック JAPAN U23の練習に熱い視線を送るエリサルドJAPAN HCと勝田技術委員長
チームによるディフェンスチェック JAPAN U23の練習に熱い視線を送るエリサルドJAPAN HCと勝田技術委員長

4月27日(木)

26日、大勝で3連勝を飾ることのできた選手たちは当初、午前中をプールセッションに充て体をリカバリーする予定でした。しかしラトゥコーチの人脈でハリケーンズのトレーニングセッションを見学することができることになり、急遽予定を変更することになりました。

ハリケーンズのスクラム練習
ハリケーンズのスクラム練習

ハリケーンズのグラウンドはホテルからバスで約10分走った丘の中腹にありました。私たちが到着したときには既にセッションが始まっており、ボールのパス競争など遊び要素を取り入れながらウォーミングアップを行っておりました。全員で40人弱の選手たちにコーチ陣が6人、しっかり練習をチェックしておりました。体が温まったところで2チームに分かれホールドタックルでのアタック、ディフェンス。モールからやスクラム、ラインアウトからなど地域、シチュエーションを変えながら連続的にアタックを続けるというものでした。さすがにSuper 14のトップ3を走っているチームらしく、スピード、パワー等すばらしいものを見せてくれました。30分ほどしてユニットごとに分かれて練習。FWはスクラム、ラインアウト、BKSはディフェンスをつけたラインアタックの練習を行っておりました。JAPANの選手たちもそれぞれユニットごとに見学しました。

スクラムを見学していた選手たちは、体の大きさに少々圧倒されておりましたが、8人のスクラムが始まるとヒットの強さ、パックの強固さ、プッシュの鋭さにさらに圧倒されたようでした。非常に勉強になった見学でしたが、選手の中には完全にミーハー化し、バスの出発時間も忘れてハリケーンズ選手の姿をカメラで追いまくっていた者もおりました。

ホテルへの帰りには29日のNZUとの試合会場であるWestpac Stadiumに寄り、会場見学を致しました。ロッカールームの位置や設備内容のチェック、ピッチへの通路の確認の後には実際にピッチに立つことができました。選手、スタッフとも、ピッチに立った瞬間には明後日のことを考え気が引き締まる思いでした。2日後にはいよいよこのツアーの最終戦、NZU戦がこの会場で行われます。当日までに万全の体制で準備を整え、やり残すことのないようしっかり練習を行いたいと思います。

練習を見学する選手たち Westpac Stadiumにて全員で記念撮影
練習を見学する選手たち Westpac Stadiumにて全員で記念撮影

4月26日(水)

前日の雨模様から一転して朝から快晴のウェリントン。しかし風は強く吹き荒れ、これこそウェリントンという天気でした。第3戦、今日の相手はOld Boys Victoria University U23。All Blacks の歴代名S.HといわれるDavid Loveridge氏率いるチームでした。試合は山の高台にあるVictoria University の敷地内にあるKelburn Parkグラウンドで行われました。ただでさえ強い風が吹くといわれるウェリントン市内の高台ということで、我々が到着したときにはすでに強風が吹き荒れておりました。今日はこの風をいかに使うかが勝負のあやになると、ミーティングでは既に戦略の確認が徹底されておりました。

モールで圧倒するJAPAN 有賀選手から藤原選手にパスが通りTRY
モールで圧倒するJAPAN 有賀選手から藤原選手にパスが通りTRY

前半7分、ラインアウトからモールを押し込み7番北川が先制トライ。11分には10番野村と12番重見がクロス、重見が抜けてフォローしていた11番ポンギに繋ぎトライ、ゴールも成功しJAPAN ペースになる。その後も2番湯原、11番ポンギ、14番藤原の両ウイング、さらにはロック三根、No8土佐のFW陣がトライを重ね、前半を43対0で終了しました。

後半に入ってもJAPANの勢いはとまらず、開始2分には野村がトライ。8分には相手ボールをターンオーバーし12→13→18→9と繋ぎ9番吉田トライ。13分には右ウイング藤原がこの日2つ目のトライ。さらに有賀や後半変わった山田がトライを重ね、終わってみれば116対0でJAPAN U23の大勝で3連勝を飾ることができました。

3日後の29日(土)にはこの遠征の最終的な目標であるNZUとの試合が待ち構えております。TVでオンエアーされる予定であり選手も非常に張り切っておりますが、今日の試合内容ではまだまだ勝てる域には至っていないと思われます。ミスや反則を少なくしチームが一体となってアタック、ディフェンスにひたむきになれたときに、自ずから勝利が見えてくるでしょう。あと2日、今日明らかになった課題を克服すべく必死になって練習に取り組み、歴史に残る結果が残せるよう頑張りたいと思います。ファンの皆様にも一緒に応援していただき、皆の力でNZUから勝利をもぎ取りましょう。

本日はフロントスリーのコメントを紹介いたします。

◎野村選手

「NZUでベストを尽くせるよう頑張りたいと思います」

◎有田選手

「最終戦でも自分に任された仕事を着実にこなし、JAPANの勝利に貢献できるよう努力したいと思います。NZUの選手を一人でも潰せるように頑張ります」

◎重見選手

「NZU戦でベストパフォーマンスを出し、JAPANチームに貢献できるように頑張りたいと思います。絶対に勝ちます!」

ロコツイ選手の突進 この日活躍した有田、野村、重見のフロントスリー
ロコツイ選手の突進 この日活躍した有田、野村、重見のフロントスリー

4月25日(火)

24日は一日フリーになりました。しかしほとんどの選手が体のケアーにと、午前中はプールセッションならびにジムにてウェイトトレーニングに励んでおりました。午後は三三五五、散歩やショッピングに出かけリフレッシュを図っておりました。

今まで好天に恵まれていた今ツアーでしたが、25日は朝から一日中雨が降り続いたため、午前中はNPCのトップレフェリーであるJohn Kendall氏をホテルに招き、レフェリングに関するコーチングを受けました。過去2試合、選手たちはレフェリングに戸惑うことが多かったため、共通認識を確立するためにこの機会がもたれました。講習は氏が持参したパワーポイントをベースに実際に選手たちを使い、特にタックルシチュエーション、ラックシチュエーションについて行われました。講義の間、氏は精力的に動き回り選手の質問にも的確に答えておりました。この講義により選手の頭の中もかなりクリアーになってきたようです。

ポンギ選手の質問に答えるKendall氏 自ら姿勢をとりラックシチュエーションを説明する
ポンギ選手の質問に答えるKendall氏 自ら姿勢をとりラックシチュエーションを説明する

午後の練習はバスで10分ほどのところにあるPONEKE RUGBY FOOTBALL CLUB にて行われました。雨のためピッチ使用が不可能になりクラブ所有の室内練習場で練習を行いました。ユニット別の練習の後、2戦通しての課題であるディフェンスにおける立ち位置、コーリング等の再確認が入念に行われました。26日の相手はOld Boy's Victoria University U23です。明日もぜひ勝って、3連勝して良い雰囲気のままNZU戦に臨みたいと思います。朗報を期待してください。本日は日本人バックスリーのコメントを紹介いたします。


◎北川(智)選手

「NZUに勝つために自分ができることはトライを取ることです。絶対に勝つので日本からの応援、よろしくお願いいたします」


◎藤原選手

「NZUのゲームはU23JAPANにとってとても大事な試合だし、自分にとっても世界のプレイヤーと戦える重要なゲーム。今もっている自分の力を精一杯出し切って最高の舞台をエンジョイしたいと思います」


◎有賀選手

「4月15日に始まったこのツアーもあっという間に時が過ぎ、あと5日を残すのみになりました。29日のNZUに向けチームの調子が上がってきています。バックスリーダーとしてこのツアーに携わってきましたが、コンバインドチームということもあり意見や考え方の違いがあり難しい点もありました。しかし選手、チームともまだまだ伸びしろがあるのでこれからが楽しみです。疲れもたまってきていますが最後までしっかりやっていきます」


◎山田選手

「This camp has been good experience. I have learned many skills and developped my rugby. I want fans to have a magnificant time watching me play rugby. Thank you.」


◎浜島選手

「もうすぐツアーも終わるので、最後まで気を抜かずに1プレー1プレー集中したいです。キツイことが多いですが楽しみたいです。経験をつんで明治のラグビーに生かしたいと思います」

室内で行われたディフェンスの再確認 日本人バックスリー(有賀、山田、北川、藤原、浜島の各選手)
室内で行われたディフェンスの再確認 日本人バックスリー(有賀、山田、北川、藤原、浜島の各選手)