カップ準々決勝、プレート準決勝敗退も世界7位
着実な成長を印象づけてコアチーム死守の戦いへ

(text by Kenji Demura)

香港大会は不参加だった藤田だが、期待通りの思い切りのいい走りでチャンスメーカーとなった
photo by RJP Kenji Demura
スコットランド戦でトライを決める後藤。若手の成長もチーム力の底上げにつながっている
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アルゼンチン、サモア、フランスという強豪との対戦だったプール戦を1勝1分1敗で乗り切り、コアチームとして初のカップトーナメント進出を果たした男子セブンズ日本代表。
大会2日目のカップ準々決勝で対戦したのは、1週間前の香港大会を含め、今季のHSBCセブンズワールドシリーズで3度カップ優勝を果たしているフィジーだった。
「まずはしっかりタックルする。運動量を上げて、マイボールアタックに関してはボールを大事にしながらスペースに運んでいく。フィジーのディフェンスは相当堅いので一発では取れない。サポートの部分も大事になる」(坂井克行主将)

そんなプレーを意識しながら「チャレンジというよりは勝ちにいく」(同主将)気持ちで臨んだ一戦だったが、立ち上がりからいま一番勢いのある「世界一強いチーム」(藤田慶和)であるフィジーに圧倒されるかたちとなった。
開始26秒で取られたノーホイッスルトライを皮切りに4連続トライを重ねられて、前半6分までに0-22。
日本も前半終了間際に坂井主将が1トライを返すが、後半もフィジーの攻勢は続き、3トライを許して5―41での大敗となった。

「日本は各自のワークレートが高くて勤勉なチーム。ボールを持った時には危険なアタックをする」
フィジーのベン・ライアン監督はそんなふうに日本のことを高く評価していたが、今季一度も8強を逃していないフィジーと東京大会が初のカップトーナメント戦だった日本とでは、まだまだ力の差があることは歴然とした事実だった。

この結果、プレートトーナメントに回ることになった日本は同準決勝でスコットランドと対戦。

香港大会で7―28で敗れていた相手だったが、立ち上がりから一進一退の攻防を繰り広げた。
攻められてもディフェンスで粘るシーンが多かったが、4分に日本のノックオンをスコットランドに奪われて、そのまま先制トライ。
後半は日本が攻める時間が多くなったが、自分たちのミスでなかなか仕留め切れない。
ようやく日本がトライを返したのは同6分。PKから仕掛けて、坂井主将と藤田のコンビネーションで作ったチャンスを途中出場していた後藤駿弥が走り切って右中間へ。
直後のコンバージョンは決まらなかったものの、5―7と追い上げて逆転へ望みをつないでキックオフへ。
ところが、このキックオフをキープしたスコットランドにキック&チェイスでそのままダメ押しトライを決められて5―14での惜敗となった。

「必ず世界のトップ8に入るようにしたい」(瀬川智広ヘッドコーチ)という目標はクリアしたものの、カップT、プレートTでは結果を出せず、最終順位は7位タイで大会を終えた。

この結果、香港大会までの6大会で計7にとどまっていたシーズン総勝ち点は、東京大会で得た勝ち点10を加えて計17となった。
まだコアチーム中最下位の15位ではあるものの、14位のポルトガルとの差は8に縮まり、残り2大会での逆転が十分射程距離に入ってきた。
もちろん、勝ち点10を加えた今大会同様、スコットランド大会(5月9、10日)、イングランド大会(同16、17日)での上位進出が求められることになる。
「(カップTに勝ち進んだ)このステップから落ちないようにしないといけない。常にベスト8のチームと互角に戦えるようになって初めて地力がついたと言えるようになる。
セブンズは番狂わせも起きる競技。今回は藤田などが入って得点力がアップしたし、ディフェンスでも粘りが出てきて、競った試合ができるようになってきた。
キックオフのアタックの工夫。あるいは、そこで相手にボールキープされても、そこからディフェンスのリズムをつくっていけるような日本としてのキックオフのスタイルをつくっていきたい」
瀬川HCはチームの成長と残る2大会でコアチーム残留(シーズン総勝ち点で15位のチームが来季のコアチームから外れる)を勝ち取るための課題についてそんなふうに語る。

「まだまだ伸びる。やってきたことに対して今回100点の試合ができたと答える選手はひとりもいない。もっと成長できる」
坂井主将は世界8強入りを果たしたチームパフォーマンスについてそう振り返ったが、特に、今回が初の東京セブンズだった若手選手たちがそれぞれ手応えをつかんだ大会となった。

「(最後のチャンスにキックを使ってボールを手放した)フランス戦は絶対に忘れない。もっとゲームメイクをちゃんとしていく。ディフェンスで自分の仕事はできているので」(合谷和弘)

「スピードの部分、瞬発力の部分は継続してやっていきたい。フィジカルの部分で負けてしまっているので、ウェイトの部分などもしっかりやっていきたい」(松井千士)

「チームとしてはディフェンスの精度がよくなって、組織としていいリンクプレーができていた。自分としても持ち味のフィットネスを生かしながらアタックでもディフェンスでも、もっとまわりとリンクできるようになって、チームに貢献したい」(後藤駿弥)

それぞれが日本大会、東京セブンズでつかんだ手応えと課題に向き合いながら、5月に控えるグラスゴー、ロンドン・トゥイッケナムでのコアチーム死守のための戦いに備えることになる。

応援に駆けつけてくれた「ウルトラセブンズ」と。グラスゴー、ロンドンではウルトラパワーなしでコアチーム確保だ
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