再び掴みかけた初勝利をミスで手放しての5敗全敗
世界の壁を痛感しつつ悔しさは南アフリカで晴らす

12月5、6日、HSBCセブンズワールドシリーズ(SWS)2014-2015第2ラウンドとなるドバイ大会が行われ、今季コアチームの一員としてSWSに参戦している男子日本代表は、初日のプール戦でニュージーランド(NZ)、サモア、スコットランド、2日目のボール準々決勝でアメリカ、同じくシールド準決勝でカナダにそれぞれ敗れて5戦5敗。
1週間後に控える南アフリカ大会(ポートエリザベス)で、コアチームとしてのSWS初の1勝を目指すことになった。

(text by Kenji Demura)

豪州大会に続いて世界の壁を実感させられる結果となった男子セブンズ日本代表。南アフリカ大会でコアチームとしての初勝利を目指す
photo by RJP Kenji Demura
2大会続けての完封負けとなったNZ戦だが、試合終了間際に相手ゴールに迫るなど成長を感じさせる内容となった(写真中央は桑水流)
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大会初戦で対戦したのは4年連続でSWS年間王者を続けるNZ。
前回の豪州大会(ゴールドコーストセブンズ)でもプール戦で対戦し、0対59の大差で敗れていた。
「NZということを意識しすぎて、よそ行きな、チャレンジの気持ちが全くないような戦いになってしまった」
瀬川智広ヘッドコーチはそう前回大会の戦いぶりを反省。
今季コアチーム入りしたばかりの日本が王者に対してどれだけチャレンジできるかがテーマの初戦であることは間違いなかった。

キックオフから攻め込まれて開始32秒でNZに先制トライを許したのを皮切りに、計6トライを奪われ0―36。
2大会続けての完封負けとなったが、失点を大きく減らしたことからも明らかなように、1ヶ月前の対戦よりも随所にチャレンジする姿勢は垣間見られた。
「ゴールドコーストセブンズでは、ファーストタックラーが体にすら当たらなかったのが、今回はだいぶ体が当たるようになってきたというのはある」(坂井克行キャプテン)
「ディフェンスの粘れた部分もあったし、ゴールドコーストからは成長している」(桑水流裕策)

豪州大会も経験しているコアメンバーが指摘したのは守りの部分だったが、世界王者に 対してアタックで観客を沸かせる場面もあった。
坂井キャプテン、桑水流と共に、今回3人しか参加できていないコアメンバーのひとりである羽野一志が「後半の最後のプレーはいいラグビーができた」と振り返ったとおり、試合終了間際になって、百武優雅、鶴ケ崎(*崎は正しくは「山」へんに「竒」)好昭といった途中出場組の若手などが積極的にアタック。NZゴール前まで迫ったが、それが通っていればトライというラストパスが乱れて、無得点のまま大会初戦を終えた。

「正直、世界とは差があるが、前回は59対0だったことを考えても、少し粘り強さは出てきている」(瀬川HC)
前述のとおり、コアメンバーが3人しか参加できず、それ以外のメンバーも豪州大会でプレーしたのは4人(三木亮平、首藤甲子郎、後藤駿弥、百武優雅)だけ。しかも、三木と後藤に関してはコンディションの問題もあって、ゴールドコーストでは極端にプレー時間が少なかった。
そんなふうに、再び急造チームという状況でドバイ大会に臨まざるを得なかった“逆境”を考えてみてもポジティブになれる面も見られた初戦となった。

続くサモアも豪州大会に続いての対戦。
前回は試合開始早々に坂井キャプテンが先制トライを奪ったが、今回はいきなりミスが出る苦しい展開に。
試合開始のキックオフがそのままタッチに出た中央FKからサモアに攻められて、58秒で失点。
さらに4分、5分と、日本のミスに乗じたサモアがトライを重ねた。
「(豪州大会では)本当に何回かしかチャンスを与えていないのに、それを全部トライにつなげられた。何とか粘っていく」(瀬川HC )というゲームプランを描いていた日本だったが、ミスで自滅したかっこう。
それでも前半終了間際に吉田大樹、羽野、鶴ケ崎の好プレーから敵陣に入り、最後はPKから副島 亀里 ララボウ ラティアナラのオフロードパスを受け取った鈴木貴士がサモアゴールに飛び込み、ボールキープさえできればトライを取る能力はあることを訴えて前半終了。
後半も自分たちのミスからサモアに3トライを重ねられたが、試合終了間際になって後藤、百武、三木、吉田などの好プレーから最後は鶴ケ崎が左隅に飛び込み、最終スコアは38―12。

プール戦最終戦の相手は今年5月のロンドン大会で破っているスコットランド。当然、大会前から一番のターゲットと考えられていた。
「スコットランドは相性的には、トップユニオンの中では結果を出したこともあり、いい。特徴も過去に勝ったことのあるスコットランドとそう変わっていないと思う。ここで必ずひとつでも勝つ」(瀬川HC)

そのターゲットにしていた一戦で、日本はこの大会で最も悪いパフォーマンスを見せてしまう。
「ニュージーランド戦で出せた粘りをスコットランド戦では出せなかった。それは気持ちの問題もある。アタックしても、ブレイクダウンで全然ボールが出なくて、継続できなかった」(桑水流)

ファーストタックルが決まらず、NZよりもサモアよりも多い計7トライを献上。
0-47での惨敗に終わり、最低でもスコットランドに勝ってボウルトーナメントを勝ち上がる道筋をつけるというプランは思惑外れに終わった。
「厳しいです。トライ取りきれるところで取りきれなかった。取りきれればもっといいゲームができる。そこで取りきれずにターンオーバーされて、取られる。そういう流れができてしまっている。修正しないといけないのはブレイクダウンのところ。相手が強いので寄るところを早く、姿勢もしっかりして、ブレイクダウンができたらすぐ出せるように。
展開ラグビーをしていきたい」(羽野)

サモア戦では、途中出場して相手を引きつけて決定的なパスを出した三木(写真)のいぶし銀のプレーなどもあり2トライを奪った
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ターゲットにしていたスコットランド戦でまさかの大敗(0ー47)。ハーフタイムの円陣で厳しい表情で指示を与える瀬川HC
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完璧な試合の入りでリードした米国戦も
後半ミスから自滅して悔しい2点差負け

翌日のノックアウトステージ初戦は、豪州大会でも同じボウル準々決勝で対戦したアメリカ。
「徹底したのは、これはテストマッチなんだという意識の部分。15人制でもセブンズでも本当の国と国との戦いであるテストマッチで日本が勝つためには、ミスは許されない。
100点満点の試合をして初めてゲームの流れによっては勝てる。こちらが100点満点の試合をしても、残りの14チームが100点満点の試合をしたらたぶん勝てない。
準備の段階からそういう姿勢で100点満点の試合をするための取り組みを続けることが重要。途中で変わった選手も、1分とか2分の間に本当にベストの選択のプレーができるか。メンバー全員が質の高いテストマッチをするための準備が必要」(瀬川HC)

プール戦で全敗に終わった後、もう一度、ドバイで戦っている意味を確認した日本は、前回は内側を破られるパターンで4トライを奪われて完敗(5―26)した相手に対して、立ち上がりから完全に試合をコントロールする。

キックオフからボールキープして攻め続け、3分に敵陣22m内のスクラムから、坂井克行主将が相手DFの穴をついて先制トライ。
前半終了間際にも、羽野一志、鈴木貴士、吉田大樹などが相手DFを翻弄して作った外側のスペースを副島 亀里 ララボウ ラティアナラが駆け抜けて連続トライ。
前半を12-0で折り返す。
「アタックし続ければ、日本は勝てる。ボールキープさえできればトライを取り切ることができるので、焦らずに日本のペースでゆっくりとボールをつないで、つないで。継続してというのが大事」(鈴木)
後半も同じペースで試合を続けたかったが、よりダイレクトにプレッシャーをかけるようになったアメリカのプレーにミスが出るようになり、3分にサポートが一瞬遅れたために、密集で反則を取られて、そのPKからトライを奪われて12―7。
直後のキックオフでミスした後、自陣深くまで攻められ、再びブレイダウンで反則。最後はフィジカルに勝るアメリカのパワーランナーにタックルを外されて連続トライを奪われ12 –14。
日本も試合終了間際に羽野のロングゲインなどでチャンスをつかむが、最後にミスが出るパターンで逆転には至らず、そのまま2点差で敗れた。

「たとえば、オールブラックスなら最後のところでミスは絶対にしない。最後ワンプレーで逆転できるのは彼らに勝つ文化があるから。ひどいパスでも、しっかり取ってトライまで持ってく。たぶん、いまのセブンズメンバーはあそこでノックオンしてしまう。みんなミスしたいと思ってしているわけではないが、そこの部分がまだまだ足りない。そういう勝ちにこだわる文化を築き上げていかないと、結果を出していくのは難しい」
いまの男子セブンズ日本代表に足りないものをそう語るのは坂井キャプテン。

あと1歩のところで」コアチームとしてのSWS初勝利を逃した後、シールド準決勝のカナダ戦でも、いきなり羽野のロングゲインで敵陣深くまで攻め込むが、ブレイクダウンでボールを出せずに仕留めきれず、逆に直後のスクラムから一気に走られてカナダに先制を許した点に象徴されるとおり、ミスやブレイクダウンの劣勢が響くパターンでハーフタイム時点で0-17。
後半、途中出場した首藤の思い切ったプレーなどで流れを変えた日本が2トライを奪って3点差に追い上げるが、やはり勝負どころでハンドリングエラーが出て、決定的なトライを奪われて最終スコアは14-29。
コアチームとしてのSWS初勝利は、12月13、14日にポートエリザベスで行われる南アフリカ大会以降に持ち越しとなった。

「他のチームは簡単にトライが取れても、日本はゴールまでが遠い。どうしてもフェイズを重ねるごとにミスが出る。そこからの失点を重ねている。
アメリカ戦もカナダ戦もそう。もう一度、継続の意識を高めないと。単純なパスミスだったり、コミュニケーションミスだったり、ボールが下に落ちるケースがある。結局、その状況になって失点している。ラグビーの基本の部分。そこが上がってこないと、世界では戦えない」

他のコアチームと違い、大会ごとにメンバーを大幅に入れ替えなければいけないのが日本の苦しいところではあるが、幸いにしてドバイ大会から南アフリカ大会の間には1週間のインターバルしかなく、同じメンバーでひとつのチームとして成長しやすい状況にあるのは確か。
「本当にやるごとに強くなることを信じて、南アフリカではプール戦から、今回のアメリカ戦のように、みんな101%出していくという気持ちで臨みたい。また、このチームでできるのはありがたいことだし、南アフリカで見返してやりたい」(桑水流)

「ほとんどの部分が世界のレベルに達していないが、アグレッシブに走り続けるという部分では通用するところはあった。もっとセブンズを理解して、走る部分で貢献できたら」(後藤)
SWSでの厳しい戦いを経験しながら、若い選手たちがプレーの部分でも意識の部分でも成長していることも間違いない。

SWS第3ラウンド南アフリカ大会では、日本は3大会連続となるNZとサモア、そしてイングランドと同じプールDで戦うことが決まっている。

ベテランらしく状況判断のいいプレーで米国戦ではトライにつながるチャンスをつくった鈴木。「SWSを回れるなんて夢のよう」
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カナダ戦でトライを決める坂井主将。短期間での若手の成長もあり、コアチームとしての南アフリカ大会で初勝利を記録したいところ
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何度もラインブレイクして多くのゲインを稼いだ羽野。「一番成長している」と瀬川HCも高い評価を与える
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サモア戦でトライを決める鶴ケ崎(*崎は正しくは「山」へんに「竒」)。コアメンバーではない若手の成長も南アフリカ大会で初勝利を得るためのキーとなりそうだ
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