準備も経験も圧倒的に劣るメンバーが大きく成長
改めて世界の壁を知る5連敗も収穫の多い大会に

10月11、12日、HSBCセブンズワールドシリーズ(SWS)2014-2015第1ラウンドとなるオーストラリア大会(ゴースドコーストセブンズ)が行われ、初めてコアチームの一角として臨んだ男子セブンズ日本代表は初日の予選プールAでサモア、ニュージーランド、フランス、2日目のボウル準々決勝でアメリカ、シールド準決勝でケニアと、計5試合を戦って5敗。
記念すべきコアチームとしてのSWS初勝利は第2ラウンドのドバイ大会(12月5、6日)に持ち越しとなった。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP Kenji Demura
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アジア競技大会での金メダルから1週間。
韓国・仁川でのゴールドメダルメンバーから8人が入れ替わり、メンバー揃っての国内合宿もなしという厳しい条件の下での戦いとなったゴールドコーストセブンズ。
男子セブンズ日本代表チームにとっては、世界で戦うことの意味を突きつけられる大会となった。

「このレベルでの経験をしているかしていないかの差が出た。強化に費やしている時間の差も大きい。ほとんど準備期間がない中、選手はよくやってくれた」(瀬川智広ヘッドコーチ)

坂井克行キャプテン、桑水流裕策、レメキ ロマノ ラヴァ、羽野一志のコアメンバーを除けば、セブンズ経験がほとんどなかったり、長いブランクのあるメンバーばかり。
それでも、5戦5敗とはいえ、最後は09年W杯3位のケニアと互角の勝負ができるようになるほどの急成長を見せたのは間違いなかった。

「集まった時には『セブンズとは』から始まったメンバーがここまでできるようになった。練習をしていても、どんどん良くなったので、もう一度このメンバーでやりたいと思っているくらい」

コアチームとして初めて臨むSWS初戦は、そんなふうに今回のチームに可能性を感じていた坂井キャプテンのトライで幕を開けた。
いきなり相手キックオフをキープして、59秒で先制。
ただ、その後は後半5分までにサモアに6連続トライを許す一方的な展開に。
終了寸前にレメキ ロマノ ラヴァが意地のトライを返したものの、14-40での大敗。
しかも、サモアに奪われたトライは自分たちのミスやブレイクダウンでのターンオーバーからトライまで持っていかれたものばかり。
「このレベル相手に小さなミスが出ると、そこからカウンターされてしまう。もう一度、ボールを大切にプレーするということを徹底して、サポートをしっかりしないといけない」
「いいプレーもたくさんあった」と振り返りつつも、サモア戦大敗の問題点をそう語っていた瀬川HCだったが、続くNZ戦でも4年連続年間王者を続ける相手に一度ボールを渡すと、そのまま日本ゴールまで持ち込まれる同じパターンで、0-59での惨敗。

3試合目のフランス戦は、日本がボールをキープして攻める時間帯も多くなり、前半終了間際に粘りに粘って攻め続けて桑水流が飛び込み、後半早々にも「ニュージーランド戦ではチャンスがなかったキックを使ってみようと話していた」という羽野一志のキックを追った長野直樹が難しいバウンドをうまくキャッチして連続トライ。
前半にも坂井キャプテンが外で待つレメキヘキックパスを通そうとしたシーンがあったが、バウンドが変則となって逆に相手にトライを奪われるという不運な面もあって、最終スコアは14-33。
「このレベルだと、ブレイクダウンでもひとつも手を抜けない」(桑水流)
「改めてレベルの高さを実感している」(長野)
それぞれの立場でSWSのレベルの高さを実感しつつ、「フランス戦ではブレイクダウンでボールが出るようになったし、良くなっている部分もたくさんある」(桑水流)、「相手との間合いなど、少しずつセブンズのプレーがわかってきた」(長野)と、翌日のボウルトーナメントへ向けてポジティブさも感じさせた予選プール戦となった。

photo by RJP Kenji Demura
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「セブンズとは」から始めた若手がW杯3位に肉薄

2日目の初戦はプールD3位のアメリカとのボウル準々決勝。
「新しいコーチになって、しっかりした戦いをするチームに変わってきている」
瀬川HCが警戒していたとおり、過去にイングランド、昨季はケニアを指導したマイク・フライデーが監督に就任した米国は、予選プール戦でも昨季のグラスゴーセブンズで準優勝のカナダに競り勝ち、今回のカップ準々決勝でニュージーランドを破ることになるイングランドとも接戦(7-14)を繰り広げていた。
前日の反省から日本は「ポゼッションを大事に、いかにミスを少なくするか」(坂井キャプテン)というテーマで臨んだが、結果的には「いきなり僕とロマノがオフサイドをしてしまった」(同キャプテン)というやや入れ込み過ぎた部分の反動もあって、ディフェンスが中途半端になり、スクラムから内側のスペースを破られるパターンで失点を重ねた。

後半5分までに4連続失トライ。ただ、終盤、途中出場したベテランの三木亮平が若いメンバーたちに「セブンズはこうプレーするんだ」と手本を見せるように、落ち着いて自陣からでもボールを持ち出すと、それまでの停滞が嘘のようにチーム全体が動き出して、6分には途中出場の児玉健太郎がトライを返すなど、ようやくいい感覚をつかんで試合を終えた(最終スコアは5-26)。

その感覚は間違いなくチーム全体に残っていた。
結果的に最終戦になってしまったケニア戦では、試合の多くの時間帯を日本が支配した。
試合開始のキックオフからいったんはボールキープしながら、ケニアにトライを奪われても、4分には163センチの首藤甲子郎がサイズの大きなケニアディフェンスの隙間を強引に突いてチャンスを作った後、敵ゴール前のスクラムからレメキのハードタックルが相手の反則を誘い、最後はPKから児玉がトライ。
直後のキックオフをキープして、そのままレメキノブレイクで10-7とリードして前半終了。
後半早々にキックオフをキープできずにケニアにトライを返されて逆転されたが、日本も3分に羽野が自陣から持ち出した後、レメキ、首藤がしっかり相手ディフェンスを打ち破って、最後はよくフォローした芦谷勇帆がトライを奪って、再びリード。
終了1分前にも、再び羽野が前に出てケニアゴールに迫るがブレイクダウンで反則を取られ、そこから一気のカウンターでケニアにトライを奪われて15-17。

最後のワンプレーでハーフウェイから攻め続けたジャパンは児玉、長野、百武優雅など若いメンバーが必死にボールをつないでケニアゴールへ。最後はモール状態となってインゴールになだれ込んだが、グラウンディングは認められずにそのまま無情の試合終了の笛。
本当にあと一歩のところで、コアチームとしてのSWSでの初勝利を逃す悔しい一戦となった。

「我々は代表選手なので、頑張るのは当たり前。日本では結果でしか見られないので、結果を残さないと誰も評価してくれない」
坂井キャプテンが潔く認めるとおり、5戦5敗は真摯に受け止めなければいけない結果ではあるだろう。
ただ、国内合宿もなく大会開幕5日前に現地入りした時点では「セブンズとは」から始めざるを得なかったメンバーで、世界の強豪と互角に戦えるようになったことはしっかり評価するべきことでもあるだろう。

「準備期間が短い中、一戦一戦、チーム自身も自分自身も成長できた。試合の中で間合いだったり、セブンズというものがちょっとずつわかるようになった」(長野)

「何が何だかわからず来たのが正直なところだったが、フィットネスには元々自信があるので、試合に出たら走ることだけは心がけた。ひとりひとりのレンジが広いので、その分仕事量が増えるところなど、セブンズというものが頭というよりは体で少しは覚えることができたし、次も出てみたい欲も出てきた」(芦谷)

「セブンズを始めて1週間しか経っていないので大丈夫かなと思っていたが、試合を重ねるごとに、ここは行っていいところとか、どうすべきかというのがちょっとずつ、わかってくるようになった。(ケニア戦は)負けたらラストということで、最後は行っちゃおうかなと、それまでは遠慮していた部分をも出し切ろうと積極的に行った。自分よりもデカいし、速いし、うまい相手にどこで勝つのか、考えるいいキッカケになったと思う」(児玉)

多くの若手にとって得るものが多かった大会である一方、ケニア戦では揃ってフル出場ならなかった坂井キャプテン、桑水流の経験豊かな2人をはじめとするコアメンバーにとっても「最後持たなかったところが自分自身情けない。足が動かなかった。もう少しフィットネスレベル上げないと」(坂井キャプテン)、「あそこで変えられちゃうのが自分たちの甘いところ。『もう走れないな』と思わせないようにもっと頑張らないといけない」(桑水流)と、改めて世界で戦うために必要なことを実感した大会となった。

photo by RJP Kenji Demura
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