日本代表「ラグビーワールドカップ2015」南アフリカ代表戦 レビュー

RWC史上最大のアップセット達成!
世界3位の南アフリカに劇的な逆転勝ち

英国時間19日(日本時間20日深夜)、イングランド南部ブライトンでラグビーワールドカップ(RWC)2015プールB、南アフリカ対日本戦が行われ、24年間、RWCで勝ち星のなかった日本が過去2度の優勝を誇る世界ランキング3位の南アフリカを34—32で破る大金星を挙げた。
RWC史上最大のアップセットを成し遂げ、目標とするベスト8入りにこれ以上ないスタートを切った日本は中3日という厳しい日程で、23日にプールB第2戦の対スコットランド戦を迎える。

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最後のワンプレーから攻めてWTBヘスケスが逆転トライ。世界のラグビーの歴史を塗り替えた
photo by Kenji Demura

2015年9月19日、ブライトン・コミュニティ・スタジアム。
約3万人の大観衆がRWC史上最大のアップセットに酔いしれた余韻が残る中、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは務めて冷静に宣言した。
「いま、歴史は変わった」

変えたのは、RWC2015の組み合わせが決まって以来、初戦の大切さを訴え続け、「南アフリカに勝ちにいく」ことを公言してきた同HCがリードする猛練習についてきた31人の男たち。
「4年間、それ以上はできないというくらいハードトレーニングをしてきた。そういうことがワールドカップのグラウンドに立ったら出てくる」(FB五郎丸歩)
間違いなく、全員がそういう気持ちで南アフリカに立ち向かっていた日本は、立ち上がりからRWCではニュージーランドとオーストラリアにしか負けたことのない世界ランキング3位の強豪相手に一歩も引かない戦いを繰り広げた。

試合開始直後の時間帯は、サイズも経験も勝る南アフリカにボールをキープされ、攻め込まれるシーンが続いたが、ブレイクダウンで3度ターンオーバーするなどしてピンチをしのぎ、得点を許さない。
「まずはフィジカルで対抗する。相手に与えたボールを奪い返すことも重要になる」
ジョーンズHCが南アフリカに勝つための戦い方として挙げていたベーシックな部分をしっかり押さえながら戦える感触を掴んだ日本は、ファーストスクラムのマイボールをクイックで出した後、自らのラインブレイクもあって得たPGチャンスをFB五郎丸が確実に決めて先制。

17分に南アフリカにモールでトライを奪われて逆転を許すが、29分には「目には目を」とばかりにモールにこだわり、BK陣も加わって相手ゴールになだれ込み、最後はFLリーチ マイケルキャプテンが抑え込んで10—7と逆転に成功する。

両チームともに、まずはラグビーの最も根源的な要素であるコンタクトの部分で上回らなければ勝利はないという点にこだわった結果だったのか、32分にまたも南アフリカがモールでのトライを奪い返して逆転し、日本は10—12という2点のビハインドで前半を折り返した。

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ひとりで24得点を叩き出しマンオブザマッチ級の活躍を見せたFB五郎丸。後半28分には自らトライも決めた
photo by Kenji Demura

 ニッポン、ニッポン、ジャパン、ジャパン…
3万人の大観衆を熱狂させたジャパンウェイ

「ハーフタイム時点で選手たちはこのゲームを勝つポジションに入ってきていることを感じていた」(ジョーンズHC)

「まだベストのラグビーはやっていないと感じていた。いつも後半良くなるのが日本のラグビー。スコアは競っていたし、本当に勝つチャンスがあるとみんな感じていた」(リーチキャプテン)

そんな勢いそのままに、後半開始早々のキックオフからチャンスを掴んで、同2分にFB五郎丸のPGで逆転。

このあたりから、日没を迎えたブライトン・コミュニティ・スタジアムは3万人のほとんどが日本を後押しする一体感で高揚を続ける一方となる。
日本語による「ニッポン、ニッポン」というかけ声と、英語の「ジャパン、ジャパン」というかけ声が一体化。
異様な盛り上がりを見せる中、後半3分、同21分と、南アフリカFWがパワーとはこういうふうに見せつけるんだとばかりに、縦にまっすぐ日本DFを突き破ってトライを奪うが、日本も8分、12分、19分と五郎丸がしっかりとPGを決めて、食らいついていく。

そして、28分には敵将ヘイネケ・マイヤー監督が「とても才能のあるファンタスティックなプレーヤー」と絶賛した五郎丸が自らトライ&ゴールを決めて、試合は再び29 –29の同点に。

なりふり構わず何とか勝ち切りたい南アフリカは同32分の日本陣深くのPKで攻めるのではなくPGを選択して勝ち越し(29—32)。

一方、日本は試合終了直前に同じように訪れた敵陣深くのPKのチャンスでスクラムを選択。
その前のプレーで南アフリカFWにシンビン退場者が出て数的優位だったこともあったが、「同点じゃなく、勝ちに行くという気持ちだった。みんなもそうだった」(リーチキャプテン)という攻めの気持ちで臨んだラストプレーで、ジャパンウェイを完結。
まさに全員が前に出ながら相手のプレッシャーをものともせずにボールをつないで、最後は途中出場のNO8アマナキ・レレイ・マフィから冷静に大外で余っていたこちらも途中出場のWTBカーン・ヘスケスが左隅に飛び込んで史上最大のアップセットは完結した。

「最高です」
最年長で3度目のRWCで初勝利をものにしたLO大野均も、初めてのRWCで生まれ故郷の南アフリカと対戦していきなり大金星を奪って見せた最年少のWTB松島幸太朗も同じ感想を口にした。

同点に追いついた五郎丸のトライも、SO小野晃征、CTB立川理道のコンビで相手DF陣を翻弄した後、逆サイドのWTB松島が走り込んで大きくゲインしてラストパスを通す完璧なアタックだったが、最後のワンプレーでミスすれば終わりという状況でひとりひとりが見せた攻めの姿勢こそ、このチームが4年間求めてきた「ジャパンウェイ」の結晶とも言えた。

ジョーンズHC率いる日本代表によるRWCの歴史変革は、まだまだ続く。

text by Kenij Demura

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強い南アフリカの象徴LOマットフィールドを止めるSO小野とLOトンプソン。コンタクトでも一歩も引かなかった
photo by Kenji Demura
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前半29分にはBKも加わったモールでトライ。南アフリカの度肝を抜いた
photo by Kenji Demura
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最後まで攻め切って南アフリカに逆転勝ち。日本代表を後押ししてくれた観客の興奮も頂点に達した
photo by Kenji Demura
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公言通り南アフリカを倒し、選手たちと喜びを分かち合うジョーンズHC。RWC8強を見据える
photo by Kenji Demura

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