同志社大学 36-8 慶應義塾大学

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同志社対慶応といえば、現在まで継続している日本のラグビーでの定期戦の最古のカードである。この定期戦はここ数十年、9月のシーズン初めや春季に行われているが、昭和30年代以前を知る超オールドファンにとっては、正月第一週の風物詩ともいえる名カードであった。東京のファンにとって同志社大の試合を見るのは久しぶりだと感じたのだが、秩父宮での同志社大の試合は2011年12月の大学選手権での試合以来、4年ぶりになる。
同志社大は1週間前に天理大に勝利して関西大学Aリーグを8年ぶりに制覇したが、その勢いのまま、フィフティーンが一体となっていいパーフォーマンスを発揮し、慶応大に快勝した。

試合開始直後から、同志社大がいいペースで試合を進めた。開始後1分、左WTB氏家柊太が左サイドを抜け、これにフォローしたCTB林真太郎が敵陣に入ると、今度は右に大きく展開し、右WTB松井千士がゴール前へ迫る。すると、FW/バックスが一体となってゴール前でフェイズを重ね、最後はPR才田智がゴールライン直前に持ち込むと、そのラックから、PR海士広大がトライ(ゴール失敗)。その数分後にも、WTB松井を意識的に使ってゴール前に攻め込み、ゴール前5mでのスクラムを獲得すると、慶応大がアーリープッシュ。同志社大はFKで再度、スクラムを選択し、スクラムをプッシュすると、慶応大はたまらずコラプシングの反則。同志社大は更にスクラムを選択し、スクラムをプッシュ。最後は、No.8秦啓祐がスクラム左サイドをついてトライをとり(前半9分。ゴール失敗)、試合開始早々に同志社大FWがスクラムで大きな自信をつかんだ。
同志社大は14分にも敵陣22m付近でのスクラムからのアタックでよくフェイズを継続し、最後、SO渡邉夏燦からのパスに対して慶応大がインターセプトを試みたが、ファンブルしたボールは同志社大切り札のWTB松井につながり、松井がそのままインゴールへと、早くも3つ目のトライを取った(17-0)。慶応大もマイボールのセットプレーから、FL鈴木達哉などを軸としてシェイプ攻撃を継続しようとするが、同志社大のしっかりしたディフェンスに、ノッコンやペナルティでプレーがつながらず、23分にPGで3点を返すのが精一杯。17-3で、ハーフタイムとなった。

後半に入っても同志社の勢いは止まらなかった。後半2分、同志社大はFWがモールを10m押すと、バックスに展開、アタックのフェイズを重ねた後に最後はFB崎口銀仁朗が慶応大ディフェンスのタックルを2人外し、そのまま左中間に走り込んで早くもチーム4つ目のトライ(ゴール成功、24-3)。6分にもWTB氏家のラインブレイクから敵陣ゴール前に攻め込み、これはすぐにはトライにつながらなかったが、SO渡邉が狙ったDGを慶応大FL廣川翔也がチャージすると、右に弾んだボールは同志社大WTB氏家の前に転がり、これをキャッチした氏家がゴールに飛び込んだ(ゴール成功)。慶応大もよく敵陣に入りチャンスはつかむが、同志社大ディフェンスの前に、肝心なところでミスや反則が出て、全くペースをつかめない。結局、同志社大は、慶応大を後半24分のFL廣川の1トライだけに抑え、逆に慶応大の足が止まってきた後半26分にはLO山田有樹がこの日チーム6つ目のトライをとり、ファイナルスコア36-8とし、同志社大にとって会心の勝利となった。同志社大は関西リーグ1位のアドバンテージでの勝ち点3、4トライでの勝ち点1を加え、勝ち点9となり、リーグCの中での順位争いを大きくリードして、いいスタートを切った。

同志社大の今年のスローガンは「覚悟」。3.11の津波で大被害を受けた気仙沼市階上中学校での震災直後の卒業式での卒業生代表梶原裕太君の言葉「苦境にあっても天を恨まず」を、部員全員で共有し、15歳の少年が覚悟を決めていることに見習い、「部員全員でもっと覚悟を決めよう」と、気持ちを一つにしてシーズン後半の重要な試合に臨み、結果を出してきている。「死のプール」とも言われるプールCで、「覚悟を決めた」関西1位の同志社フィフティーンが臨む筑波大との第2戦、大東文化大との第3戦が楽しみになった。(正野雄一郎)


 

■慶應義塾大学

○金沢篤ヘッドコーチ

「見ての通り、同志社さんのパフォーマンスは明らかに慶應より良かったと思います。特にタックルのところではうちはプレッシャーをかけられて、同志社さんのハンドリングも良かったです。前半、最初に3つ立て続けに獲られたのが全てです」

——定期戦の時との違いは?

「特にディフェンスとブレイクダウンのプレッシャーが違いました。天理戦(関西大学ラグビーAリーグ・12月5日)の後で同志社さんのディフェンスがかなり良くなったと思います。セットプレーも才田君という素晴らしいキャプテンがいて、うちも押されながらもデリバリーしたかったのですが、できませんでした」

——苦しいパフォーマンスだったが?

「慶應の選手のプレーが高いためにミスも起こり、ボールもこぼれました。終始プレッシャーを受けていました。そこが一番大きかったと思います」

 ○矢川智基キャプテン

「本日はありがとうございました。セットプレーだったり、ブレイクダウンだったり、ディフェンスの所でボールキャリアーを押して圧倒したかったのですが、試合を通して自分たちのラグビーが全くできなかった印象です」

——修正すべき点は?

「セットピースもブレイクダウンもこちらのボールキャリアーの姿勢が高く、いずれもボールが出なかったので、この2点は慶應のキーとなるところなので、アタックに関してはここが一番の問題だと感じています」

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■同志社大学

○山神孝志監督

「戦いが終わって、ほっとしています。勝利してこうして話せるのは本当に嬉しいです。関東で戦うのは同志社としては久しぶりで、入りの10分で機先を制しようと送り出しました。5年前、帝京さんに秩父宮で敗れているので、ここで勝つことが8年ぶりの関西での優勝より大きいと言って鼓舞しました。おそらく、慶應さんは同志社の弱点を狙ってくるので、そこを修正してターンオーバーしていけと。ピックアンドゴーも今までできなかったので、やろうと。非常にアタックの判断が良かったと思います。セットプレーでは、ラインアウトの獲得を増やせたが、スクラムよりゲーム全体で支配していこうと。中盤もペナルティを取られず、良かったと思います。この後のチームも強いとはいえ、あと2勝したいと思います」

——パスも良かったが?

「まあ、練習はしています。アーリーキャッチして、パンチでできるだけフラットに投げていくというのをFWもやっています」

——ディフェンスが前に出ていたが?

「天理戦では、後半になって50cmくらい食い込まれて中へ押し込まれオフサイドを取られました。その後、しっかり穴を埋めて、ラインをつくることをやってきました。ボールゾーンでは9番が持ち出したら、寄りのディフェンスをやろうと狙っていました。今日は慶應さんの持ち味を出させないようにすることができました」

——天理戦の前と後では?

「同志社は日本で一番遅い時間、夜7時から練習しています。今は心を整えようとしています。この代は四回生が『覚悟』というスローガンを決め、学生コーチも自分たちで決めていました。東北の15歳のラグビー少年の言葉『天を恨まず』を引用させてもらって、『覚悟』を考えようや、と投げかけ、彼のエネルギーを使わせてもらいました。言葉の持つ力を感じてくれたと思います。力をいただきました」

——残りの2試合については?

「監督1年目で筑波さんに負け、再びチャレンジができます。新しいページを開くべく、選手の力に期待したいと思いますし、スタッフも全力で備えたいと思います」

○才田智キャプテン

「今日の試合の前から、この初戦が全てだとメンバーに言ってきました。良い勝ち方ができて、チームにとっては大きな勝利でした。筑波さんと大東さんは強い相手なので、そこで勝ってベスト4につなげたいと思います」

——パスも良かったが?

「同志社ラグビーはFWとBKが一体になったラグビーです。FWもミスはするけれど、やり切ることだけ考えてやっていこうとしています」

——ファーストスクラムでは?

「前3人が何を感じるかなのですが、僕は十分にいけると感じました」

——前日のトップリーグを選手が観戦したそうだが?

「秩父宮は初めてなので、大観衆の雰囲気に慣れようと前の日に見に行きました。試合も熱くて、観戦して良かったと思います」

——残りの2試合については?

「先週から一週間、この慶應戦が全てと思いやってきました。来週は筑波さんですので、ここから良い準備をしたいと思います」

doshisha