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快晴微風の秩父宮ラグビー場での準決勝第2試合は、帝京大と天理大が対戦。
天理大の10mラインへの浅いキックオフに備えた帝京FWは、このボールを確保するとSO松田力也のキックでプラン通りに前進を図る。それに対し天理は真っ向から攻めた。FLフィリモニ・コロイブニラギをインパクトプレーヤーとして使いながら、素早い球出しでSH佐藤慶、SO立見聡明が外側にボールを散らす。王者の闘いで決勝を目指す帝京と、攻めてこそ勝機が生まれる天理の激しい攻防が始まった。

確実な蹴り合いで天理BKを深く下げ、カウンターアタックをしかけるバックスリーに帝京の激しいタックルが突き刺さる。
早くも4分、天理陣内での攻撃から帝京のアタックがDFラインを突破する。前に出たラックサイドをFWが一気に攻める。ランナーとして走り込んだNO8ブロディ・マクカランが、天理のダブルタックルを引きつけてLO飯野晃司へクイックパス。ラインブレイクした飯野からCTB金村良祐にボールが渡ってトライ。(7-0)
その後もSO松田のキックを起点にエリアを獲得してゲームを優位に進めたい帝京に、天理は攻撃のスタイルを貫いた。19分、帝京ゴール前でのスクラムから最後尾にポジションを取ったFLフィリモが右にサイドアタック。順目にしかけたSH佐藤にFBジョシュア・ケレビがオーバーラップしてゴールに飛び込んだ。(7-5)
この一戦にかける天理のアタックは続く。黒いジャージの動きの速さが、再三、帝京DFを突破する。軽量FWはスクラムでも強さを見せ、一歩も引かぬどころか優位に立った。しかし、赤いジャージ帝京の重量感は、スピードに乗って前に走ると威力が倍増する。自陣からは確実なキックで前進し、中盤からはHO堀越康介の強いヒットから雪崩のような前進を繰り返す。39分、SO松田の正確なキックで前進し、ラインアウトモールで天理FWを消耗させると、最後はHO堀越がトライ。(14-5)
安定したゲームプランが帝京大の強さを印象付けた。

ハーフタイムでグラウンドに戻った帝京の動きが一気に変わっていく。天理の闘志を受け止めるのではなく、攻撃のスイッチが入ったのだ。
後半6分に連続攻撃から、CTB矢富洋則がショートステップでタックルの間をすり抜けトライ。それまで落ち着いたDFでほころびを見せなかった天理フィフテーィンに疲れが見え、動きが止まる。13分にはPR渋谷拓希、18分にはSO松田と3連続トライで勝負を決めた。(35-5)
その後、天理は試合終了まで攻める姿勢を貫いた。FBジョシュアの連続トライもあり、結果トライ数では帝京6に対し4トライを奪う激しい戦いでこのシーズンを終えた。(42-24)

帝京大SO松田は冷静なゲームコントロールで、この試合の帝京に無駄な動きをさせることなく確実な勝利を与えた。自陣からの相手FWを後ろに下げるハイパント、ペナルティを得て5mラインへの正確無比なタッチキック。誰かが相手DFラインを突破すれば、一気に加速するアタックスピードは大学レベルを圧倒する。それに対し、天理SO立見は、1年生ながらひたむきに戦いを挑んだ。前に出て、スピードと伸びのあるパスワークは天理のラインを動かし、テンポを上げた。松田と向き合ったこの経験を糧に成長が期待される。

帝京は順当に決勝に進んだ。これまでの連覇の記録も見事だが、このチームの一年の成果を出し切って大学ラグビーの魅力をファンに見せつけてほしい。
(文責:照沼 康彦)


■天理大学

○小松節夫監督

「今日の試合は強い帝京大学さんに良い意味で勝負しようと臨みました。帝京大学さんのアタックに対してうちのディフェンスがどれだけ通用するかがキーポイントでした。前半、トライを2本取られて、少しずつ帝京大学さんの圧力を受けてしまいました。通用する部分もありましたが、エリアの取り方だとか、ちょっとのところで差があったと思います。帝京大学さんとの試合は、点差が開くゲームが多いですが、最後まで点差を詰めて天理も成長の跡があったかと思います。日本一のチームにチャレンジできたので、さらに強いチームを作って、日本一目指して行きたいと思います」

——あと、もう一つ必要なものは?

「ゲームの運び方です。トライを取った後のキックオフだとか、ゴールキックだとか、細かいところです。松田君はきちんとゲームコントロールしていました。ゲームマネジメントのところで少し差が出たかと思いました」

○山口知貴キャプテン

「帝京大学さんに対してイーブンに善戦でなく、勝ちに行こうという気持ちでやりました。ディフェンスに関しては身体を張って頑張ろうと臨んで、通用できた部分もありましたが、負けたのは、上手いパス回しに間を抜かれて後手を踏んだからだと思います。ただ、メンバーが変わってもターンオーバーできたのは成長でした。継続して経験値が加わればさらに良くなります。後輩たちには、良いチームを作って、帝京大学さんを倒してもらいたいと思います」

——スクラムは?

「今まで組んだ中で一番強かったのですが、フロントローはヒットの瞬間、持って行けました。ただ、相手の8人は全員が強いので、それでも押し切れなかったのですが、ペナルティーをもらったり、少し押し込んだりしたことで相手のディフェンスにもプレッシャーを掛けられたと思います。相手がスクラムを組むのが嫌、というマインドになってくれたかと思います」


■帝京大学

岩出雅之監督

「準決勝は勢いのあるチームがやって来るので、しっかり自分たちも勢いを持って、と送り出しました。我々も良い勢いを出しましたが、天理大学さんは関西の優勝チームらしい素晴らしいチームで、要所要所で取れたので結果として勝てましたが、天理大学さんはしっかり強みを活かしていたなというのが、卒直な感想です。試合前の分析では、もう少し相手のフルバックが蹴ってくるので、しっかり切り返してと思っていたのですが。もう少ししっかりディフェンスしないと、と感じる、色々な課題をいただいたゲームでした。次のチケットをいただいたので、学生も決勝戦では厳しくやってくれると思います」

——相手の外国人選手対策は?

「大東大学戦でできたことを全うしようと臨んだのですが、ゲームが変わったら(全うすることが)できませんでした。決して緩いわけではありませんが、選手もわかっているので、次は気持ちの入ったタックルをしてくれると思います」

——ハーフタイムの指示は?

「闘志だとか、喝を入れることはせず、意思統一が感じられなかったことを指摘しました。1点差ゲームのつもりで、厳しく我慢強く攻防していこうと。しかし、微妙な空気を感じました。張り詰めた金属音の鳴り響く感じではなかったです。トータル的にはまだまだ甘さのあるプレーもありましたが、良い攻防があって、次に繋がるプレーも出たのは、天理大学さんが素晴らしいチームだったからだと思います」

——決勝に向けては?

「まず、『決勝戦』ということが大切です。学生もやって来たことを感じると思います。東海大学さんも去年対戦して我々が勝たせてもらった分、期するものがあるでしょうし、力もあります。我々も1年積み重ねたものをしっかり出し切ろうと。外国人選手二人も元気ですから、当然モールもあるでしょうし、15人でしっかり攻め切って帝京のラグビーをしていきたいと思います」

亀井亮依キャプテン

「帝京として、アタックでコンタクトして出ていこうとしました。FWが出て良い場面もありましたが、一つ引いたり、高いタックルがあったりしたのがトライを獲られた理由だと思います。課題をいただいたゲームだったと思います」

——立て直しは?

「前半、スタートのところで、天理大学さんは良く走っていました。自分たちの強みであるディフェンスからチャンスを掴もうと言っていました。特に前半はスコアが開かなかったのですが、だんだんゲームコントロールできるようになりました」

——決勝戦への意気込みは?

「まず、ファイナルで日本一のチャンスをいただけたことを嬉しく思います。しっかり全員で準備をして、この時期新しいものはないので、どれだけ本物を積み重ねて来たかを出すだけです」