プレッシャーはねのけ国立での有終の美
8大会連続となるRWC本大会出場決める

25日、東京・国立競技場でラグビ―ワールドカップ(RWC)2015アジア地区予選を兼ねたアジア五カ国対抗2014最終戦、日本 - 韓国戦が行われ、計8トライを奪った日本が49-8で快勝。
8大会連続となるRWC出場を決めた。来秋のイングランド大会で、日本は南アフリカ、サモア、スコットランド、アメリカと同じB組でプール戦を戦うことになる。
尚、先発したLO大野均はこの試合で日本代表キャップ数を81として、WTB小野澤宏時と並んで同代表の歴代最多キャップホルダーとなった。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP H.Nagaoka
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今季最大の目標であることを公言し続けてきたRWC出場権をものにした後、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチは高らかに宣言した。
「次のターゲットはワールドカップで準々決勝に進むこと。その目標達成のために、全力を傾けていく」
もちろん、まだ道半ばであることは、現・国立競技場での最後のテストマッチでもあった、この日の香港戦の内容に如実に表れていたと言っていいだろう。

「自分たちの納得いくラグビ―ができなかった」
試合後、そう振り返ったのはFLリーチ マイケルキャプテン。
前半12分に敵陣深くのラインアウトを押し込んだ後、右に展開してWTB藤田慶和が右隅に飛び込んだのを皮切りに計8トライ。
最終的には40点差以上をつけての大勝となったが、ハンドリングエラーなどのミスも多く、確かに完全には満足いく内容ではなかったかもしれない。
「汗で少しボールが滑った。集中していなかったわけではない。国立最後の試合、ワールドカップ予選最終戦、相手はアジアの中で最強。少しプレッシャーがあった」(リーチキャプテン)

来秋のイングランド行きを決めた国立最後のテストマッチという大舞台で日本代表最多キャップに並んだLO大野均も「(トライを)取り急いだというのはある。その結果、やめようと言っていたフィフティフィフティパスをしてしまったり。自分では緊張していないつもりだったが、いつもよりトイレに行く回数が増えたり、体は緊張していたのかもしれない」と、知らず知らず重圧を感じながらのプレーだったことを認める。

前述の先制トライの後、28分に再びラインアウトから右展開して藤田が連続トライ。
30分に今度は左サイドから内側に切れ込んだWTB山田章仁を外にフォローしたCTB立川理道が香港ゴールを駆け抜け、37分にはモールをしっかり押し込んだ。

「前半までに勝負を決められたのは良かった」
試合後、ジョーンズHCがそう振り返ったとおり、27―3で迎えたハーフタイム時点で現実的にはほぼイングランド行き切符を手中に収めていたと言っていい日本代表だったが、折り返した後の後半は、27分、途中出場のLO真壁伸弥が追加トライを奪うまでは無得点のままというやや苦しい時間帯が続いた。

photo by RJP H.Nagaoka
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「我慢強さ、対応力がついてきた」(堀江副将)

「ブレイクダウンで日本にプレッシャーをかけて、試合をスローダウンさせることを意図していた」(香港FLニコラス・ヒューソン主将)

試合前のセレモニーではグラウンド上に2019、そして2020の人文字が作られ、「ウェブ・エリスカップ」との記念写真には長蛇の列。“最後の国立”らしく、聖火が見守る中での試合でもあった。
そんな華やいだ雰囲気の対極にあるような香港の泥臭いプレーにテンポを崩された面も確かにあった。

「日和佐(篤=SH)は今頃、香港のバスに乗っているんじゃないか。試合の中で我々がコントロールできない部分もある」と、独特な表現でなかなかテンポをつかめなかった試合を振り返ったのはジョーンズHC。
ただし、「我慢強くプレーできたのは良かった」とも。
この「我慢強さ」こそ、いろんなプレッシャーがかかる状況下で行われた試合で見せた日本代表の進化だったかもしれない。

「レフリーが反則を取ってくれない状況でも、ボールはキープできていた。スクイーズしながらボール出したり。ミスもあったけど、ミスのことより次のことやろうという意識はみんなの中にあったと思う。そこで我慢できたのはチームとして良くなった部分。対応力がついてきた」
今回プレーした選手の中では、最も高いレベルでのラグビ―に慣れていると言っていいHO堀江翔太バイスキャプテンはそんなふうにチームの成長ぶりに関する手応えを語る。

「エディーさんになってから、スタートで出ようが、リザーブから出ようが、役割があるという感じでみんなやっている。チームに勢いを与えるという役割は果たせたかな。少し香港のテンポを遅らせてくる感じにはまっていたので、それを打破しようと考えていた」(真壁)
意図どおりにインパクトのある突破で香港DFを突き破って30分ぶりの日本の得点となった真壁のトライの後も、藤田の3本目のトライ(後半32分)以外は同37分にHO木津武士、同39分にWTBに入っていた内田啓介と、途中出場組がトライを加えて、まさにチーム全員が仕事をするかたちで最終的には49―8までスコアを引き離して、国立での有終の美を飾った。

「今日からワールドカップの準備が始まる。11年ワールドカップでは試合の中で問題が起きた時、対応できなかった。今度はそういうことにならないように、対応できるようにしっかりシステムつくっていきたい」
試合後の記者会見。少なくなかったプレッシャーをはねのけてイングランド行き切符をつかんだ余韻にひたることなく、リーチキャプテンはそう言って前を向いた。

16ヵ月後に控えるRWCイングランド大会で「準々決勝に行きたい」(FB五郎丸歩バイスキャプテン)という目標達成のため、日本代表はいまどの地点にいて、どこを強化していかなければいけないのか。

華やかだった国立競技場での最後のテストマッチから5日後に行われる『リポビタンDチャレンジカップ2014』のサモア代表との前哨戦で、現在のエディー・ジョーンズHC率いる日本代表の立ち位置がある程度、明らかになる。

photo by RJP H.Nagaoka
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