苛酷な条件が揃っていたアウェー戦で大勝
RWC出場権獲得へ着実な第一歩を踏み出す

日本代表の今年最初のテストマッチとなるアジア5カ国対抗(A5N)2014のフィリピン代表戦が3日、フィリピン・カランバで行われ、日本は開始1分のFLヘンドリック・ツイのノーホイッスルトライを皮切りに計15トライを挙げて99―10で大勝した。今年のA5Nは来年9月に開幕するラグビ―ワールドカップ2015のアジア地区最終予選を兼ねており、8大会連続出場を目指す日本にとって幸先いいスタートとなった。A5Nの日本の第2戦、対スリランカ代表は10日、愛知・名古屋市瑞穂公園ラグビ―場で行われる。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP H.Nagaoka
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「今季最大の目標はワールドカップ予選を通過すること。スコアは大した問題ではない。7対6であっても、勝つことが重要だ」。1年前に121点差をつけて圧倒した相手との対戦だったにもかかわらず、試合前にエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが強調していたのは、あくまでも勝利へのこだわりだった。

最高気温は35度を超え、グラウンド上の体感温度は40度以上だろうことが容易に想像できる厳しい暑さ。すぐ横を高速道路が走り、ロッカールームもない試合会場。ピッチサイズもひとまわり小さく、グラウンドの表面を覆うのも日本の感覚では雑草といいたくなるハードな芝--。ジョーンズヘッドコーチでさえ「これほど厳しい環境で試合をするチームをコーチするのは初めて」と語るほど、苛酷な条件下で行われたA5N初戦だった。最終スコアは昨年より22点減ったものの、最大目標であるイングランド行きの切符獲得に向けて確実な第1歩を踏み出したと言っていいだろう。

開始1分、いきなりフランカーのヘンドリック・ツイがフィリピンディフェンスを打ち破り、ノーホイッスルでの先制トライを奪う。その後、4分にPG、5分にはインターセプトからトライを許して一度はフィリピン代表にリードされる場面もあったが、全く焦らずに自分たちのプレーに集中し、最終的には15トライを重ねた。

「相手がどういうプレーをしてくるかわからない状況で、スクラムをしっかり押すことができ、スクラムトライも取れた。ラインアウトもキャッチ後のオブストラクションはあったが、それ以外は100%獲得でき、そこのコントロールは良かったと評価を受けた」。セットプレーのキーマンであるフッカー湯原祐希が振り返ったとおり、スクラムでもラインアウトでもフィリピンを圧倒した。

「バックスラインには、できるだけフラットになるように要求している。そこから常にゲインラインをアタックして、勢いのあるラグビ―をしていきたい」(ジョーンズヘッドコーチ)。スクラムトライやモールでのトライだけでなく、FWからの安定したボールの供給を受けたバックスも、内に外にとアタックを続ける「ジャパンウェイ」を披露して、トライを量産した。

この日のバックスはCTB村田大志とWTB松島幸太朗の初キャップ組やテストマッチ初先発のCTB中村亮土、さらに唯一の大学生であるWTB藤田慶和と若手が並ぶ布陣だった。厳しい条件のアウェー戦にもかかわらず、全員が落ち着いたプレーを続けて勝利に貢献した。

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前半36分に外側のスペースを走り抜けて代表初トライを記録した松島は、後半7分には敵陣22メートルライン付近のスクラムから出たボールをもらうと「スペースを見つけて相手ディフェンスを抜いて行く、自分らしさが出せた。イメージどおりに走れたし、アピールもできたと思う」という快走。縦にフィリピンディフェンスを切り裂いて、いきなりマルチトライを奪う決定力を披露した。

1週間前のアジア・パシフィックドラゴンズ戦同様、インサイドCTBの中村とともにソリッドなプレーぶりでバックスラインを締めたアウトサイドCTBの村田は「入りの部分では前の試合よりコミュニケーションは取れていたが、ラスト20分で集中力が続かなかったところもあった。コミュニケーションと、どういう状況でも80分間集中力を切らさないようにするのが次に向けての課題」。ジャパンでプレーし続けることへの手応えを感じたテストマッチデビューとなった。

「A5Nの1試合目としては悪くなかった」。日本代表キャプテンとしてのテストマッチ初勝利を挙げたリーチマイケルの総括は、チーム全体で共有している感触でもあるだろう。アジア・パシフィックドラゴンズ戦での課題だったコミュニケーションで進歩が見られ、アタックシェイプの精度も向上。セットプレーが進化し続けていることも間違いない。

ジョーンズヘッドコーチが挙げた「キックオフからのリスタート。そして、攻守における判断の遅さ」という大勝の中でみつかった新たな課題を修正して、スリランカ代表戦に臨む。

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