真の国際レベルの強敵に逆転負けも
若手に手応えの「完璧な強化試合」に

26日、大阪・近鉄花園ラグビ―場で、今季、日本代表の初のお目見えとなる強化試合、ジャパンXV対アジア・パシフィックドラゴンズ(APD)戦が行われ、前半24分までに2 トライ、1ゴール、1PGで15点をリードした日本だが、同26分以後APDに4トライを重ねられ29―35で逆転負けを喫した。

(text by Kenji Demura)

photo by RJP H.Nagaoka
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「ちょっとガッカリね」
それが、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチの試合後の記者会見での第1声だった。

JAPAN XV名義とはいえ、日本代表にとって今季初戦。
「ワールドクラスの選手もたくさんいて、強い相手。自分たちが試される試合になる」
FLリーチ マイケルキャプテンがそう警戒していたAPDに対して、立ち上がりはほぼ一方的にもボールキープして攻める展開に。

前半10分に敵陣深くの相手ボールラインアウトのこぼれ球を拾ってLO真壁伸弥が先制トライ。
19分にも「(トップリーグ)シーズン中はあまりチャンスがなかったが、今日はいいプレーをしていた」とジョーンズHCが高評価をしたSH日和佐篤のキックを追ったWTB山田章仁が右隅に飛び込んだ。
24分には手堅くCTB中村亮土がPGを加え、早くも点差は15点に。

「最初の25分で30点とっておかなければいけなかった」と、ジョーンズHCが振り返ったとおり、2トライこそ挙げたものの一方的に攻め込みながらも細かいミスが重なり、チャンスを失ったケースも多々あったのは紛れもない事実ではあった。
その意味では15点はあくまでも最低限のものではあり、立ち上がりの時間帯にさらに点数を重ねられなかったことが、終盤APDに逆転を許した要因ともなった。

photo by RJP H.Nagaoka
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元ニュージーランド代表CTBタナ・ウマガHCが率い、FLニリ・ラトゥ(NEC=トンガ代表)がキャプテンを務めるAPDは、リーチキャプテンが警戒していたとおり、個々の能力では世界レベルの選手たちが揃ったチーム。
ラトゥキャプテン以外にも、PR菅原崇聖(キヤノン)、タウファ統悦(近鉄)、SOトゥシ・ピシ(サントリー)、CTBセイララ・マスプア(元クボタ)、WTB徐吉嶺(ヤマハ発動機)、FB高忠伸(近鉄)など、日本のファンにも馴染みのある実力者がズラリ。

さらに元フィジー代表CTBルペニ・ザウザウニンブザ、サモア代表WTBサイニバラティ・ラムワイなど、新旧のスピードスターなども加わっていた。

「2日間しか練習できなかったし、まだ名前の分からない選手もいる」と、ウマガHCが認めるとおり、立ち上がりの APDはチームとして機能していなかったのは明らかだった。
それでも、時間の経過とともに意図的なアタックも見せられるようになったAPDは日本陣深くのスクラムから展開してWTB徐が走り切って反撃開始。
28分には自陣から、いずれもフィジー出身のCTBザウザウニンブザ、SHヘンリー・セニロリ、WTBピリタチ・ソキベタなどがボールをつないで最後はSOピシが日本ゴールに飛び込んだ。
いずれのゴールキックもFB高が確実に決めて、あっという間に点差は1(15―14)に。

「今日は立ち上がりにいいアタックができた点、2トライを取られてからもう一度、盛り返せた点は良かった」
日本代表としては7年ぶりとなるSOとしてプレーした廣瀬俊朗の試合後の自己評価とおり、前半終了5分前にFLヘンドリック・ツイがインターセプトからトライを決めた日本が22―14に点差を広げて、後半を迎えた。

「FWは負傷の選手や不参加の選手がいるため、非常に経験豊富な布陣。反対にBKは経験が浅く若いが、中村、村田、石井ら非常に可能性を秘めているがインターナショナルレベルを未経験の選手が、フィジカルなFW、速いBKが揃う相手にどのくらいできるか見られる良い機会になる」

試合前に、そう若手への期待感を語っていたジョーンズHC。
後半に入ると、「ディフェンスラインのセットが良かったが、プレッシャーを与え切れなかった」(同HC)点を突かれて守勢に回るケースが多くなる。
9分にFB高がPGを加えたAPDは18分に途中出場のWTBラムワイが個人技で日本ディフェンスを破って同点トライ(FB高ゴールキック成功で22-24と勝ち越し)。

さらにAPDは24分にSOピシのDG、30分にFB高のPGで点差を広げるが、日本も33分のFB藤田慶和のトライとCTB中村のゴールで逆転に望みをつないだが、終了間際にAPDがモールからダメ押しトライを決めて、振り切った。

寄せ集めとはいえ、インターナショナルレベルの選手が揃うAPDに惜敗した日本代表だが、「中村は強さを見せたし、村田(大志=CTB)はサントリーではケガであまり活躍できていなかったがしっかりしたプレーをしていた。石井(魁=WTB)、藤田の2人の大学生もボールを持った際には良かった」と、ジョーンズHCも賞賛した若手の活躍など、少なくない収穫もあった。

「ボールキャリーにしろ、ディフェンスにしろ、大きなミスはなかったが、試合の中でコントロールしなくてはいけないポジションなので、試合の中で相手がこういうディフェンスしてきているので攻め方をこう変えていくというような修正ができなかった」(CTB中村)

「慣れないWTBで出て、最初はボールを落としたり良くなかったけど、少しずつ慣れてきてゲインもできるようになった。これからかなと思っています。もっとボールキープしないといけない」(途中出場のWTB松島)

「今できることをしっかりやろうとした。ワークレート、ボールタッチ、もっと積極的にいかないと。自分の意思をしっかりまわりに伝えられるように、コミュニケーションをとっていかないといけない」(WTB石井)

「去年はほとんどケガで棒に振って、久しぶりに80分間プレーしたんですけど、暑さもあってキツかったし、集中力が切れた部分もあった」(CTB村田)

今季は来年に控えるラグビーワールドカップのアジア予選も兼ねるアジア五カ国対抗開幕前に組まれたAPDとの強化試合。
若手が貴重な経験を積めただけではなく、チームの戦い方に関しても、「細かいところで相手にボールを渡したり、FWの近いところのオプションでSOとのリンクが良くなかったりした点」(リーチキャプテン)など、実戦の中で課題が明らかになったのは、今の時点ではプラスと捉えていい。

次週のフィリピン戦から始まる負けられない戦いを前に「パーフェクトプラクティス」(ジョーンズHC)になったことは確かだろう。

photo by RJP H.Nagaoka
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