8強入り掲げたRWC2015で最も重要な試合に
フィジカルかつスマートな80分間で目標達成へ

3日、イングランド中部ミルトンキーンズでラグビーワールドカップ(RWC)2015プールB、サモア対日本戦が行われる。
南アフリカからRWC史上最大のアップセットを成し遂げた後、スコットランドにはあと一歩まで攻め込みなが中々トライを奪えず、逆に後半5トライを重ねられて敗れた日本のプール戦での勝ち点は4。
現在、勝ち点で日本を上回るスコットランド、(勝ち点10)、南アフリカ(勝ち点7)を押さえて、準々決勝進出を果たすために、サモア戦こそが「ワールドカップで一番重要な試合」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)となる。

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RWC2015で最も重要な試合で「フィジカルでスマートな80分間」を目指す日本代表
photo by Kenji Demura

「ここで負ければ、自分たちが掲げた『ワールドカップでベスト8』という目標が達成できなくなる。まずは自分たちのパフォーマンスにフォーカスする。デカい相手に体を張る。その結果、勝てれば、目標に近づくことになる」(FLリーチ マイケルキャプテン)

間違いなく後世に語り継がれる南アフリカ戦勝利から2週間。
日本に敗れた南アフリカは、次戦で後半サモアを引き離して勝ち点5を挙げ、現在の総勝ち点は「7」。
日本から5トライを奪ったスコットランドは続くアメリカ戦でも同じように5トライを奪い、2試合終わっての勝ち点はパーフェクトの「10」。

一方、現地での人気ぶりはスコットランドよりも南アフリカよりも上と言っていい日本だが、勝ち点ではその2ヶ国の後塵を拝するかたちで「4」にとどまっており、リーチキャプテンの決意表明どおり、目標のベスト8入りのためにはサモア戦勝利が絶対条件と言っていい状況にある。

極端な話、ここで負ければ南アフリカに対する歴史的勝利の価値さえ半減してしまうような重要さを持つサモア戦。
ジョーンズHCは当然ながら「最強メンバーかつ日本代表として最も経験豊かなチーム」をピックアップして、南太平洋の大男たちとの戦いに挑むことを宣言した。

総キャップ数は615キャップ。基本的には、ブライトンでスプリングボクスを奈落の底に追いやった2週間前のメンバーとほぼ同じ構成で、「最も重要な試合」に臨むことになる。

先発15人中、南アフリカ戦で先発しなかったメンバーはPR稲垣啓太とNO8ホラニ龍コリニアシ。
この2人の起用に関してジョーンズHCは「稲垣は運動量が多い。我々はタイトファイブの運動量で勝たないといけない。
コリー(=ホラニ)は大きくて、フィジカル。サモアのような相手に対して力を発揮してくれる。ボールキャリーでチームに勢いを与え、相手がボール持った時には勢いを止めてくれることを期待している」と説明する。

中3日で戦わなければいけなかったスコットランド戦に比べて、中9日という十分な間隔が与えられるサモア戦だが、コンディションという意味では決して万全ではない面もある。

「田中(史朗=SH)は少しずつしかトレーニングしていない。晃征(=SO小野)と山田(章仁=WTB)はマイナーな負傷をしていたが、フルトレーニングを開始している。ナキ(NO8アマナキ・レレイ・マフィ=スコットランド戦で負傷退場)の回復ぐあいは順調で、すでに2日間トレーニングした。100%ではないが、後半30分間ほどプレーすることになるのではないか」

現地時間の1日に行われたメンバー発表記者会見時に、現在の各選手のコンディションに関して、そんなふうに説明したジョーンズHC 。
もちろん、「ワールドカップの第3戦目ともなると、ケガなどの問題で十分にトレーニングできない選手がいるのは当たり前」(同HC)であるのも確かだ。
その厳しい条件で結果を出すために、ジョーンズHCは「メンタルの強さが試される」との見解も示す。当然ながら、「メンタルな強さを持つメンバー」(同HC)であることを信じて選手たちをスタジアムMKのピッチに送り出すことになる。

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スコットランド戦で得意の低いタックルを決めるPR稲垣。「FW前5人の運動量が鍵」(ジョーンズHC)になる
photo by Kenji Demura

「タスクは南アフリカ戦と同じ」(ジョーンズHC)

サモアの先発メンバーに関しては「興味深い」との印象を語るジョーンズHC。
「バックロー(FW第3列)に大きな選手を揃えた。どう戦ってくるかシークレットはない」。

すなわち、セットプレーやブレイクダウンでプレッシャーをかけながら力でねじ伏せようとしてくるということ。
そんな「パワフルな相手」に対峙する日本の戦い方としては、「タスクは南アフリカ戦と同じ」(同HC)とも。
「ラグビーは衝突のあるスポーツ。相手の勢いを止める必要がある。そして、ボールを奪い返したら、できるだけ速く動かしていく。
テストラグビーでは常にセットピースが重要。
相手をチョップダウンする、ブレイクダウンでファイトする。マイボールは賢くプレー。行き当たりばったりではいけない。時には速く、時にはあえて遅く。テンポをコントロールすることも必要だ」

パワフルなプレーを前面に出してコンタクトエリアで優位に立ってボールを奪った後は、アンストラクチャーな状況でのアタックを得意とするサモア。
SOトゥシ・ピシ、WTBアレサナ・トゥイランギなどBKのキーマンには日本の選手たちが熟知しているプレーヤーも。

「相手の強さも弱さもわかっている。みんなで意思統一して臨む」とFB五郎丸歩が言えば、サントリーでSOピシとコンビを組むSH日和佐篤は「弱みは握っている(笑)。プレッシャーを与えるといいプレーができない。前に出ている時はいいプレーをするが、後ろに下がりながらだと、いい判断ができない」と、相手の指令塔にいかにプレッシャーをかけていくかも試合のポイントになるとも。

「スマート、フィジカルなラグビーをする。80分間続けられれば勝てる、できなければ勝てない」(ジョーンズHC)

この4年間、ハードトレーニングを重ねてきた日本代表が最も重要な試合を自分たちのものにする準備は整った。

text by Kenij Demura

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NO8は満を持してホラニが先発。攻守両面でチームに勢いをつけるプレーを見せたい
photo by Kenji Demura
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サモア系ニュージーランド人のCTBサウにとっては特別な思いを持つ試合となる
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スマートに戦うにはキックの使い方もポイントに。WTB山田の決定力に期待がかかるのはもちろんのこと
photo by Kenji Demura