現在の国立競技場を舞台として行われる最後の大学選手権決勝は、これを祝うかのように穏やかに晴れわたった。第50回を迎え、キックオフ前に歴代の優勝キャプテンが出席し記念セレモニーを行った。その中で、第30回大会で優勝した元木由記雄氏は、「この日にふさわしい歴史に残る試合が行われることを期待する」といったコメントで挨拶を行った。
帝京のキックオフで始まった試合はあまりにも劇的な幕開けとなった。帝京キャプテン中村亮土選手が浅めに蹴ったボールを確保した早稲田。ラックから出たボールをSO小倉順平→FL布巻峻介とつないで、布巻が帝京ディフェンスラインを突破して帝京陣に入ったところでWTB荻野岳志にパス。荻野はそのまま50m近くを走り切って左中間にノーホイッスルトライ。30数秒しか経過していないところで早稲田が先制した。SO小倉のゴールも決まって0-7とする。
しかしながらこの後、帝京がブレイクダウンで強烈な圧力をかけて、早稲田は防戦一方になる。かつての早稲田を彷彿させるような低いタックルで耐える状況となり、早稲田陣での戦いが続く。しかし帝京もリズムにのれず、ミスを繰り返してすぐには得点に結びつけることができない。
そして12分、早稲田が密集で圧力を受けたところで思わずペナルティ。これを帝京はタッチに蹴り出してラインアウトモール。ゴールライン目前でサイドを突き、ピック&ゴーからLO小瀧尚弘がインゴールに抑えてトライ。ゴールははずれて5-7とする。
この直後のキックオフ。帝京の中村キャプテンが蹴ったボールはダイレクトタッチ。そしてセンタースクラムで帝京がコラプシングの反則。早稲田SO小倉順平がゴールを狙うが惜しくも右側にはずれ畳み込むことはできなかった。
次の得点は帝京。早稲田ゴール前でのラインアウト。早稲田はうまく対応してモールを作らせなかったが、サイドを突く帝京が圧力をかけ続け23分、密集サイドでPR深村亮太が早稲田の低いタックルの上から手を伸ばしてトライ。ゴール決まって12-7と逆転。
この後も帝京が攻め続け、早稲田が守る展開が続くがなかなか得点は動かない。次に動いたのは終了間際、早稲田SO小倉が帝京ディフェンスライン裏へ自分で取りに行こうとするキックを蹴る。帝京SH流大がキャッチしたところに小倉が自らプレッシャーをかけたところで40分のホーンが鳴るが、早稲田は攻め続け左右に展開する。ここで帝京がたまらず反則。42分早稲田SO小倉順平がPGを決めて12-10と点差を縮めたところで前半終了。
後半はまたもやノーホイッスルトライで始まった。早稲田が深く蹴ったキックオフボールを帝京は大きく蹴り返す。早稲田も負けじと帝京陣内へ攻め込むが、10m付近でできたラックから帝京LO小瀧がLOとは思えぬほどの見事な走力で60m近く大きく前進する。早稲田はゴール前でかろうじて止めるが、そこでできたラックから大きく左へ展開しWTB磯田泰成が左隅にトライ。ゴールも成功、19-10とする。
ここから帝京は驚異的な集中力を発揮する。8分にSO中村が蹴ったPGがゴールポストに当たって失敗となるが、早稲田はこの跳ね返りボールをノックオン。ここで得たゴール前正面のスクラムで早稲田が反則。9分にSO中村がPGを決めて22-10としたあと、帝京らしい素晴らしいトライが生まれる。12分、自慢の快足を飛ばしてキックチェイスしたWTB磯田が早稲田WTB荻野を早稲田陣内左側10m付近で止める。ここでできたラックでターンオーバー、右へ大きく展開。12→10→14→15とつなぎ、FB竹田宜純が縦に割って前進。直前にパスをした、この大学選手権で1年生ながらその才能を買われてSOに起用されている松田力也が外側にフォロー、そのまま20mを走り切って右隅へトライ。ゴールも決まって29-10と突き放す。
その直後またもや帝京SO松田力也が才能を発揮する。早稲田が深く蹴りこんだキックオフを帝京FL杉永亮太が大きく前進ハーフウェイまで戻す。ここでできたラックから出たボールを受けた松田がそのまま縦突破、ステップも織り交ぜて50mを走り切ってまたもや右隅にトライ。ゴールは失敗、16分34-10、24点差と大きく差を広げた。
早稲田ここまでかと思われたが、ここで息を吹き返す。浅く蹴ったキックオフボールを確保。左右に振りつつ、垣永慎之介主将、金正奎副将が前進する。左右に振ったラックを連取して最後にWTB荻野が左隅にこの日二つ目のトライ。難しいゴールをSO小倉が決めて34-17と喰らいつく。
続けて早稲田。蹴りあいから約50mを繋ぎ切ってFB藤田慶和から内に返したボールを受けたCTB坪郷勇輝が粘って左隅になだれ込んでトライ。ゴールは失敗したものの、20分22-34と追いすがる。早稲田は次のキックオフからもなお攻め続ける。ここへきて早稲田がブレイクダウンで帝京に対抗できるようになってきた。しつこく攻め続けたところ、ゴール前で帝京がたまらず反則。WTB荻野岳志がクイックタップからそのままゴール左中間へ持込みこの日3つ目のトライ。荻野は14番を付けていながら右左関係なく動き回った。ゴール決まって34-29、残り12分となったところで1トライ差と迫る。
しかし王者帝京も黙ってはいない。直後のキックオフから早稲田ゴール前に攻め込み、ラックをしつこく繰り返し、30分HO坂手淳史が左中間にトライ。ゴールを決めて41-29と突き放す。
この後早稲田が帝京陣内で攻め続けるも帝京にボールを渡してしまう。帝京は自陣ゴール前で時間を使う作戦に出て密集を繰り返すが反則を犯してしまう。早稲田はなんとかCTB坪郷勇輝がこの日2つ目のトライを返したところで80分のホーン。ゴールを失敗したところでノーサイド。41-34、双方で11個のトライを取り合う死闘に終止符が打たれた。
帝京大学がブレイクダウンを制圧、後半開始から15分間の圧倒的集中力で貫録を見せつけて前人未到の五連覇を達成した。このまま当初からの目標である打倒トップリーグにむけて磨きをかけてほしい。
一方、敗れた早稲田も前半圧倒されたブレイクダウンでも徐々に対応できるようになるなど、かなりの部分で通用しているなど、確実に差が縮まっているという印象を受けた。このまま覇権奪還に向けて切磋琢磨を続けてほしい。
(澤村 豊)
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