第46回 全国大学選手権大会
帝京大が攻め、早大が守る我慢比べに?
ビッグプレーがどちらに出るかも鍵か

12日、第50回全国大学ラグビーフットボール選手権大会ファイナルステージ決勝が東京・国立競技場で行われる。

全国大学選手権大会組合せ
1月12日(日)at 東京・国立競技場
13:00キックオフ
帝京大学 vs 早稲田大学


CTB中村主将率いる帝京大は早大を破り5年連続大学王者の座にたどり着けるか
photo by RJP Kenji Demura


「気合いと根性」で帝京大を破ることを宣言する早大PR垣永主将
photo by RJP Kenji Demura

11月のファーストステージに始まり、12月のセカンドステージ、そして新年1月2日のファイナルステージ準決勝の激闘を経て、決勝戦に勝ち残ったのは前人未到の5連覇に王手をかけた帝京大学と、大学選手権最多優勝回数(13回)を誇る早稲田大学。

記念すべき50回大会、そして現在の国立競技場では最後となるメモリアルシーズンの大学選手権王者を争うに相応しい顔合わせとなったと言っていいだろう。

関東大学対抗戦時(11月3日)での対戦では40-31で帝京大が勝利。
前半13分のWTB深津健吾のトライなどで立ち上がりは早大が主導権を握ったが、同28分以降、帝京大がハーフタイムまでに3トライを重ねて一気に逆転。
粘る早大が後半30分に同点に追いついたものの、最後の10分間で再びギアを上げた帝京大が2トライを奪って引き離した。

「通用した部分はたくさんあった」(早大・後藤禎和監督)
「いい試合になった」(帝京大・岩出雅之監督)

両監督がそんなふうに語るとおり、お互いにとって得るものが多かった2ヵ月前の直接対決以降、対抗戦2試合、大学選手権での4試合と白星を重ねて、頂点を争う場に勝ち上がってきた両チーム。
一戦一戦、目の前の敵を倒すことに集中しながらも、決勝戦で再戦することもどこかにイメージしながらチーム力を高めてきたことも間違いないところだろう。

1月2日に行われたファイナルステージ準決勝では共に2ヵ月間のチームの熟成を感じさせる印象的な戦いぶりを披露して、頂上決戦の場に勝ち進んだ。

V5を目指す帝京大は対抗戦での対戦では75-0と圧倒した慶應義塾大に対して、前半を10-7で折り返すなど苦戦。
ただし、大学選手権を制覇する術を知り尽くしていると言っても過言ではない岩出監督にとっては、そんな厳しい戦いも想定済み。
後半、5トライを重ねて最終的には45-14と点差を広げて決勝に駒を進めた後の記者会見では、「厳しい試合になることを望んでいたが、慶應大学さんの素晴らしいファイティングスピリッツもあり、とてもいいゲームになった」と、チーム力を上げるため一番いいかたちで準決勝を乗り切れたことに満足げだった。


1年生SO松田のプレーぶりも帝京大V5の鍵を握る
photo by RJP Kenji Demura

FB藤田は自らの走りで早大を5年ぶりの大学日本一に導けるか
photo by RJP Kenji Demura

松田のSO起用で攻撃の多彩さが増す帝京大BK
対抗戦では藤田抜きで王者から4トライの早大

その帝京大は大学選手権セカンドステージ第2戦からは、対抗戦時にはFB起用の多かった新人・松田力也をSOのポジションに据え、大黒柱の中村亮土主将をインサイドCTBに配するBK布陣を敷いている。
自ら積極的に仕掛ける松田と安定感のある中村、さらに強さとしなやかさを兼ね備えるアウトサイドCTB牧田旦というタイプの異なるフロントスリーを中心に構築するBK攻撃は多彩さを増している。
元々、チーム全体が攻守に手抜きを全くしない勤勉さを持ち合わせているところに、さらにアタックバリエーションも一段と深みを増した印象で、まさに鬼に金棒状態。
ジュニアジャパンにも選ばれたNO8李聖彰を欠いているが、全く穴を感じさせない戦いぶりで、選手層の厚さは圧倒的だ。

一方、挑戦者の早大にとっても、昨季のファイナリストだった筑波大学を29-11で破った準決勝は、チームの成熟ぶりを感じさせる一戦となった。

SO山沢拓也や、福岡堅樹、竹中祥の両WTBなど、ジャパンクラスの逸材を揃えた筑波大に対して、セットプレーやブレイクダウンでしっかり圧力をかけながら、我慢強く守った末に、「ボールを持ったら自由にやっていいと言っている」(後藤監督)と、フリーハンドを与えられている切り札のFB藤田慶和が2トライを挙げる想定どおりの試合運びで、3年ぶりの大学選手権決勝にたどり着いた。

「精神力」(後藤監督)
「気合いと根性」(PR垣永真之介キャプテン)
その早大首脳陣は、決勝戦で王者・帝京大を倒すためには、まずは“気持ち”の面で受けないことが重要になると強調する。
80分間を通して最高の精神状態でプレーし、筑波大戦で見せたように、セットプレーで圧力をかけ、ブレイクダウンでしっかりとファイトした上で我慢強いDFを重ね、FB藤田の爆発的な走りなどによって効果的にトライを取っていくことできるか。
双方に成長途上だったとはいえ、2ヵ月前の対戦時に藤田抜きの布陣でベストメンバーの帝京大から4トライを奪ったことは、4連覇中の王者にもつけ入る隙があることを体に染み込ませたという意味からすると、意外と大きなプラスかもしれない。

とはいえ、2ヵ月ぶりの再戦となる頂上決戦でも、恐らくは多くの時間帯で帝京大がボール支配を続ける試合となるはずだ。
我慢強くボールキープしながら規律正しくアタックをし続ける帝京大に対して、早大もどこまで我慢強くDFを続けられるか。
帝京大側の我慢のアタック対早大側の我慢のDFという我慢比べと言える時間が多くなるだろうが、それぞれ準決勝で帝京大SO松田が慶大DFを切り裂き、早大FB藤田が筑波大を諦めさせたようなビッグプレーがどのタイミングでどちらのチームから飛び出すかも試合の趨勢を左右することになりそうだ。

(text by Kenji Demura)

 


5年連続で赤いジャージに歓喜の瞬間が訪れるのか、それとも……
photo by RJP Kenji Demura