9月16日、東京・青山の日本ラグビーフットボール協会において、新しい日本代表のヘッドコーチとして、ジャン-ピエール・エリサルド氏が就任したことが発表されました。会見の場では、今後の日本代表の予定、基本的なゲームプランなどについて説明が行われました

浜本剛志常務理事
    浜本剛志常務理事

太田治ジェネラルマネージャー
太田治ジェネラルマネージャー

◎浜本剛志常務理事
「日本代表の初めての外国人ヘッドコーチとして、ジャン-ピエール・エリサルド氏と契約をいたしました。
エリサルド氏の就任にあたっては、世界8強進出対策会議を中心に人選を進め、昨日、細部に渡る合意がなされまして、契約に至りました。これで太田ジェネラルマネージャー、エリサルド ヘッドコーチという代表チーム事業部の体制が整いました。さらに強い、魅力のある日本代表をつくるべく、努力してまいります。よろしくお願いいたします」

◎太田治ジェネラルマネージャー
「エリサルド氏の就任につきましては、我々が目指す日本代表の方向性、エリサルド氏のフランスでの経験・指導力、春からのアドバイザーとしての実績などから決まりました。契約は私と同じく2006年の12月31日までですが、実質的には2007年のワールドカップまで、と考えております。
直近のスケジュールとしては、明日から開幕するトップリーグの視察後、フランスに帰国をして、(11月5日の)スペイン戦の前に再び来日ということになります」

◎ジャン-ピエール・エリサルド ヘッドコーチ
「まず最初に、日本ラグビーフットボール協会から今回ご指名いただいたことを大変名誉に思います。また前回、滞在中に大変お世話になった萩本さん(前日本代表監督)にもお礼を申し上げたい。

私の基本的な考え方としては、まず日本のアイデンティティを尊重したい。それからチームワークを大切にしていきたいと思っています。私はヘッドコーチの役割を、責任感をもって担っていきたいし、また謙虚な気持ちも忘れずにいたいと思います。
日本のラグビーは、観客を楽しませる素晴らしいものだと思います。そこに私の経験・確信・熱意をプラスしてより競争力のあるラグビーを目指します。
日本は、太田ジェネラルマネージャーが掲げておられます、2007年のワールドカップで2勝、世界ランク10位以内、を狙うだけの潜在能力はじゅうぶんにもっている。焦らず、現実を見据えながら、目標を高く設定して、全員で力を合わせれば、この目標は達成できるはずです。
ゲームプランのキーワードはアダプタビリテ(Adaptabilite=適応)です。力で上回っていれば、力で支配する、力が不足していれば、適応して戦うという考え方です」

――11月5日のスペインまでのスケジュールは。
◎太田ジェネラルマネージャー
「10月31日に集合して、合宿を行う予定です。短期間ではありますが、集中して行いたい。日本代表メンバーは、10月のアタマくらいで考えています。ヘッドコーチとはそれまで、ビデオを送るなどして協議していきます」

エリサルド ヘッドコーチ
    エリサルド ヘッドコーチ

――春に代表に帯同したことをふまえて、改善すべき点は。
◎エリサルド ヘッドコーチ
「ひとつは、ボールの争奪、特にスクラムです。まだ日本の能力をすべて出し切れていないと思っています。もうひとつは、ぎりぎりまで相手のボールの球だしを遅くすること。相手がいやがるプレーです」

――セレクションにあたっての評価基準は。
◎エリサルド ヘッドコーチ
「チームワークを大切にしたい。それは選手だけでなくスタッフも含めてです。ですから太田GMをはじめ、スタッフの皆さんと密接に連携をとりながら考えていきたい。昨日も1日、太田さんと50~60人、潜在能力のある選手がいるのではないかと、ずっと議論していました。そうはいいながら、やはり焦らずにやることが大切であり、公平無私にやっていきたい」

――日本人選手は体格で劣る面があります。世界と戦ううえでどのようにお考えですか。
◎エリサルド ヘッドコーチ
「たしかにご指摘のように、いわゆる5カ国はもとより、ルーマニア、イタリア、グルジアなども肉体的には日本より優っています。しかしラグビーにはいろいろな選択肢があります。たとえばスクラム、ラインアウト、1対1の局面、そういったところで強化していきたい。またボールをどう動かすか、そこで日本人の特性が出てくるであろうし、相手に当たるのではなく、スペースをうまく使っていく、そういったゲームプランを考えていきます。一方では、上体の筋力は必要です。それぞれ選手個人で強化に努めていただきたい」

――瞬時に判断して適応していく、といったプレーは、ラグビーに限らず日本人が苦手にしている点だと思うのですが。
◎エリサルド ヘッドコーチ
「いい質問をありがとうございます。そこをどうしていくかというのが私の仕事です。毎回の練習のなかでそれを追求していかなければならない。たとえば1対1の練習であっても、いろいろな状況を想定したうえでの練習が考えられます。横への広がり、縦の深さ、さらにサポートプレーヤーをつけるかつけないか、いろいろです。そういった練習を積み重ねていきたいと思っています。フランスでずっと指導者として経験を重ねてきました。適応ということについてのノウハウは、フランスには豊富にあります」


ヘッドコーチ
ジャンピエール・エリサルド/Jean-Pierre Elissalde

1953年12月31日生(51歳)ラ・ロシェル(フランス)出身
ラ・ロシェル、アビヨン・バイヨンヌでプレー
ラ・ロシェル、ベジエで監督
現役時代のポジション:SH
フランス代表キャップ:5

【ラグビー略歴】 1973年ラ・ロシェルで一軍デビュー、78年から3年間アビヨン・バイヨンヌでプレーし、1980年イブドマヌワール杯で全国制覇。ラ・ロシェルに戻り、プレイングマネージャーに。1981年南アフリカ戦で初キャップ。1983年にはフランス・バーバリアンズのキャプテンとして日本代表と対戦。

ラ・ロシェル監督時代に長男(ジャン・バティスト)が一軍デビュー。長男は現在スタッド・トゥールーズでプレー。フランス代表キャプテンとして今夏の対南アフリカ戦、豪州戦に出場。ラ・ロシェル監督時代、2002年・2003年フランスリーグカップ優勝に導く。
フランス代表キャップは5。祖父(ジョルジュ)は、バイヨンヌでプレー。父(アルノー)はバイヨンヌ、ラ・ロシェルでプレーし、ラ・ロシェルで監督。義父(ローラン・ビダール)はフランス代表キャップ1。フランスでも有数のラグビー一家

【プロフィール】 ●家族構成:妻、5男2女
●趣味:子育て、ラグビー
●好きな食べ物:日本食(特に米、また醤油味を好む)
●お酒:ワイン少々フランスの赤ワイン(ボルドーメドック)
●好きな言葉:

  1. 信頼
  2. 尊重
  3. 寛容