多くのファンを秩父宮に惹きつけた今季公式戦2度目の早慶戦は、前半でセーフティーリードを奪った早稲田が逃げ切り、新春2日(国立競技場)の準決勝に駒を進めた。

立ち上りから優位に立った早稲田は3分、敵陣22m中央のラックから左へSO曽我部→CTB今村→FB五郎丸と渡ったボールを、この日からようやく復帰のWTB首藤がインゴールへ持ち込み先制。8分CTB谷口のトライに続く3つ目も首藤。敵陣22m中央のスクラムから左サイドへのサインプレー、パスを受けた首藤は慶應ディフェンダー2人をハンドオフで落とし、その決定力を見せつけた。早稲田は33分にも逆サイドのWTB菅野が鋭い走りからトライして、28-5と前半で23点差を付けた。

前半は散々だった慶應がやっと攻勢に出たのは後半10分過ぎから。早稲田にラインアウトモールからのトライで点差を広げられた後の13分、敵陣ゴール前ラインアウト後のラックから直接ボールをもらったWTB山田が早稲田の高いタックルをかき分け強引に持ち込んだ。さらに19分、山田のカウンターでできた右サイドのラックから左へ、逆サイドのWTB中浜が一旦捕まるがタッチライン際のSO川本へパスが渡りトライ。33-22まで追い上げた。しかし慶應の反撃もここまで。後半は得点で上回った慶應だが、全体にタックルが甘く、スクラムで反則を取られ過ぎた。

早稲田は前半、矢富、今村、五郎丸などが強引に突破を図ることなく、パスを繋いでいくプランが成功していた。しかし後半8分のトライ以降は無得点。20分過ぎから再三敵陣で得たPKでも、執拗にラインアウトモールのトライを狙うが取り切れず、曽我部が試みた2回のDGも失敗。これも余裕の安全運転なのだろうか。(米田太郎)

早稲田大学 33-22 慶應義塾大学 早稲田大学 33-22 慶應 早稲田大学 33-22 慶應大学
 

松永監督(右)、青貫キャプテン
松永監督(右)、青貫キャプテン

 

早稲田大学 33-22 慶應義塾大学(12月24日)

◎慶應義塾大学
○松永敏宏監督
「今日は、後半勝負と思っていましたが、前半、特に首藤君に2トライ獲られたのが大きかったと思います。前回も8月も前半は2本1本で勝っていて後半にやられたので、そこを修正すればと思っていましたが、前半4本獲られたのが誤算でした。2本に抑えたかったですね。基本的にドリフトディフェンスでしたが、早稲田さんは思ったより浅いラインで、修正できませんでした。
(山田選手について)彼におんぶにだっこで、今日も1本獲ってくれました。やはりマークがきつくなる中、十分にやってくれたと思います。今日は早稲田さんはロッカーから出て行くとき、いつも以上に気迫を感じました。我々も負けない気持ちで当たりましたが、この1戦に賭ける気迫を感じました。我々のやってきたことは決して間違いではないと思います。今年も、去年があって、ここまで成長したのですから、来年も成長してくれれば、前半も後半もやってくれるようになると信じています」

○青貫浩之キャプテン
「松永さんの言うことがすべてです。立ち上がりが悪いのが今年の慶応でした。それにしても、前半の入りが悪過ぎて、トライを獲られすぎました。早稲田さんの気迫が上回っていたということでしょう」

早稲田大学 33-22 慶應義塾大学 早稲田大学 33-22 慶應義塾大学 早稲田大学 33-22 慶應義塾大学
 

中竹監督(右)、後藤ゲームキャプテン
中竹監督(右)、後藤ゲームキャプテン

 

◎早稲田大学
○中竹竜二監督
「やはり、思ったとおりの接戦となり、最後まで分からない試合となりました。前半のまま、流れをつかみたかったが、ディフェンスを崩されてトライを獲られて、最後まで慶応さんの勢いを止められませんでした。これが今シーズン4度目の試合で、お互いやることが分かっていて、しかも伝統戦、こういう厳しい試合を経て選手たちは一歩成長してくれたと思います。
(首藤選手について)今シーズン、1回もAチームで出ていなかった選手ですが、去年までの実績から信頼感のある、勝負どころでトライを獲ってくれる選手です。万全な状態ではなかったが、相手の山田選手がボールを持たせると素晴らしい動きで、抑えられるのは首藤だけですので出しました。慶応さんは勢いに乗ると歯車が噛み合ってくるチームですので、そこを封じ込める意味もありました。慶応さんの速い出足につかまっていたので、今日はチェンジアングルというか、内を1回使ってというゲームプランでした。
(決勝戦について)見ないようにしています(笑)。対抗戦から1戦1戦進化するという目標で、こういうモチベーションの中、非常に楽しみです。京産大さんは、ディフェンスに自信を持っているチームで、大きくないがスクラムも安定しています。本当に『芯』のあるチームだと思いますので、FWの力が試されると思います。この壁をぶち破らなくてはなりません」

○後藤彰友ゲームキャプテン
「前半、自分たちの形で先制できたのは大きかったと思います。やはり慶応さんの意地を感じました。粘られて点を取りきれなかったことに悔いが残ります。しかし、あれがあったから次につなげられますので、慶応さんの分まで、次の試合、頑張ります。負けたら終わりの試合で、試合に出られない4年生がアップを手伝いに来てくれて、彼らもアカクロを着るチャンスをもう1週間、絶対に僕らが勝ち取るという気持ちでした。個人的には、東条キャプテンが今日は出られなくて、『東条組』なのに、ここで負けられないという特別な気持ちがありました」