■3月28日 第2戦 U20日本代表 25-45 ウェールズ大学カーディフ校

誰が世界と戦えるメンバーなのか。

6月に控える「U20世界ラグビー選手権」に向けて、セレクションマッチの位置づけもあった、遠征2試合目のウェールズ大学カーディフ校(以下、UWIC)戦。
U20日本代表は初戦のウェールズ学生選抜戦(現地時間3月25日)の先発メンバーから9人を入れ替えて臨んだ。

試合前には両チーム揃っての記念撮影も行われた  
試合前には両チーム揃っての記念撮影も行われた  

「今回の遠征の中では、チームとしてのまとまりは一番上ではないか」
ウェールズ遠征の対戦相手の中で唯一の単独チームであるUWICについて、そんなふうに警戒していた薫田監督だったが、試合自体は日本ペースで始まった。
開始2分。この試合から復帰したHO有田主将の突破からチャンスをつかんだ日本は、CTB仲宗根、LO安井とつないで、あっさりと先制トライを奪ってみせた(仲宗根ゴール失敗、5-0)
7分にSOとCTBの間のスペースをブレークされてトライを返されたものの、10分にはWTB長野がスピードで相手DFを次々に抜き去って、UWICゴールに飛び込んだ(仲宗根ゴール失敗、10-7)。
「ここまではDFだけやってきた」(薫田監督)という日本だが、いきなりスピードある攻めが機能して、立ち上がりは優勢に試合を進めた。

ところが、いきなりアタックが通用したことで守りがおろそかになったわけではないだろうが、この後、重点的に取り組んできたはずのDFが破綻する場面が多くなる。
15分にラックを連続支配された後に外に振られて、同点トライを許してしまう(ゴールも決まって10-12)。17分にはパスをインターセプトされて独走トライ(10-19)。30分に再びラックからのピック&ゴーで後退を余儀なくされて、あっさりインゴールを明け渡した(10-26)。
立ち上がりの日本ペースの時にUWICが全員で声をかけ合ってチームの士気を上げようとしていたのとは対照的に、日本は一度劣勢になると声も出なくなり、悪い流れを断ち切れないままハーフタイムを迎えることになってしまった(前半終了間際に仲宗根のPGが決まり、13-26)。

試合開始直後にLO安井のトライで幸先よく先制したU20代表だったが……   前半10分のWTB長野のトライ(写真)など、いいかたちでBKにボールが回ればトライをとる能力があることを示したU20日本代表   ウェールズ大の突進を必死に食い止めるPR稲垣(左)とNO8山下(右)   シャープな走りで何度もチャンスをつくったCTB立川
試合開始直後にLO安井のトライで幸先よく先制したU20代表だったが……   前半10分のWTB長野のトライ(写真)など、いいかたちでBKにボールが回ればトライをとる能力があることを示したU20日本代表   ウェールズ大の突進を必死に食い止めるPR稲垣(左)とNO8山下(右)   シャープな走りで何度もチャンスをつくったCTB立川

「みんな、ちょっとおとなしいというか、まだ遠慮している面があるし、コミュニケーションが取りきれていない」(FL杉本)
あるいは、チームを盛り上げようという意識が見られなかった背景には、セレクションマッチという位置づけがあったため、チームメイトもライバルという意識が働き過ぎたことが影響したのかもしれない。
ただ、薫田監督がこの試合のポイントに挙げていた「ひとりひとりがどれくらいファイトできるか」という面でも、残念ながら物足りなさは残った。
「戦いきっていない」という古田コーチのコメントは、端から見ていても同感できるものだった。

後半に入っても、「全然練習していない」(薫田監督)というモールからトライを奪われるなど致し方ない面もあったものの、自分たちのミスからターンオーバーされてトライまで持っていかれる点は修正できずに失3トライ。
その一方で、8分にFKからSH滑川が素早く仕掛けてボールをつなぎFB竹下がトライ。33分にもラインアウトからSO南橋、CTB立川がラインブレークした後、フォローしたFL杉本が飛び込むなど、アタックではトライを取り切る力はあることも証明してみせた(最終スコアは25-45)。

SO市原に代わって途中出場し、第1戦に続いて指令塔としてプレーした南橋   全く練習していないというモールからトライを取られたのも痛かった   ケガから復帰した有田主将はフル出場。後半途中からはFLとしてもプレー   後半出場したSH滑川は球さばきだけではなく激しいタックルでも試合を締めた
SO市原に代わって途中出場し、第1戦に続いて指令塔としてプレーした南橋   全く練習していないというモールからトライを取られたのも痛かった   ケガから復帰した有田主将はフル出場。後半途中からはFLとしてもプレー   後半出場したSH滑川は球さばきだけではなく激しいタックルでも試合を締めた

「テンポアップした時にはいい攻めもできたんですけど、全体的にはコミュニケーションも運動量も足りない。まずはDFでしっかり前を見て止めていくことが課題」
試合後、そう振り返ったのは、国内合宿にも参加しないまま復帰戦を迎え、十分なリーダーシップを発揮できなかった面もあった有田主将。
その有田主将はHOで先発したものの、後半20分過ぎからはFLとしてプレー。セットピースに関しては、HOに鈴木が入ってからの方が安定していたようにも見受けられた。
そんなふうに有田主将の起用法をどうするかも含めて、まだまだチームのコアなかたちが見えてこないU20代表。

例えば、薫田監督自身、「一番のキーマンなのに、絞り込みができていない」と頭を悩ませるSOを取り上げてみても、UWIC戦では市原が先発したが、キックミス、タックルミスを連発したため、前半20分過ぎに早くも南橋に交代。
遠征初戦のウェールズ学生選抜戦でもSOとしてプレーした南橋は、DFは計算できるものの、キックを使ったエリアマネージメントに関してはSOでの経験が少ないだけに未知数と言わざるを得ない。
一方、キック力が期待されて後半途中出場した田村は、ほんの数分プレーしただけで、右ヒザを痛めて退場を余儀なくされた。

セレクションマッチと位置づけられていた2試合が終わり、ウェールズ遠征も残り2試合。
「軸になるメンバーが見えてこない」(薫田監督)と言いつつも、4月1日に予定されているU20ウェールズ地域選抜戦で、6月に向けた薫田ジャパンのひな形がある程度、明らかになる。