「U20世界ラグビー選手権」はレフリーにとっても成長の場

6月15日(月)、IRBレフリーマネージャーで「U20世界ラグビー選手権」のマッチオフィシャルズマネージャーを務めるパディ・オブライエン氏が、IRBの目指すレフリーの育成強化について日本ラグビー協会で会見を行いました。

IRBは「U20世界ラグビー選手権」のような年代別のトーナメントをホストユニオンのレフリー育成・強化の場として活用しており、大会を通したレフリーの成長を「レガシー」(遺産)として重要視しています。

会見には、日本からパネルレフリーとして今大会に参加している平林泰三レフリー、そして麻生彰久、大槻卓、河野哲彦のアシスタントレフリー3名も同席し、自らの貴重な経験について語ってくれました。

左から、オブライエン氏、平林氏、麻生氏、河野氏、大槻氏
左から、オブライエン氏、平林氏、麻生氏、河野氏、大槻氏

◎パディ・オブライエン氏

パディ・オブライエン氏
パディ・オブライエン氏

「この大会に参加しているのは、20歳以下のベストプレーヤーが集まっているチームばかりです。『U20世界ラグビー選手権』は2年前から現行の体制で始まりましたが、これにより、レフリーにとってもこの場を活用して次のステップへ進む強化が必要になってきました。今大会のレフリーを選考するに当たっては、IRBとして次に(国際A級の)テストマッチレベルのレフリーにステップアップするであろうと期待をかけている人を選出しています。

それに加えて、開催ユニオンの協会に関しましても、抱えているレフリーの中に期待できる人がいるかを見ています。今年の大会につきましては、日本開催が決まった時点で、既に平林泰三レフリーが日本協会の大会や7人制の大会などで活躍してくれていましたので、そうしたレフリーの存在は大きかったです。平林レフリーのこれまでの功績は素晴らしいので、彼が筆頭となって、ほかのレフリーを引っ張っていって欲しいと思います。

また、アシスタントレフリーとして日本のレフリーの皆さんに経験を積んでいただくことも重要です。麻生さん、大槻さん、河野さんは日本協会から推薦を受けて(今大会のアシスタントレフリーに)決定しました。IRBとしては、今大会のレガシーの1つとして、大会が終わったら日本のレフリーに何かしらの功績を残していただくことも重要なテーマとしています。

アシスタントレフリーの皆さんには、今大会に任命され世界各国から集まっている13名のパネルレフリーの方々と交流していただきながら、日常(試合)はもちろんのこと、試合以外でも練習や、試合前後のやりとり、試合後のミーティングなどを通して経験を積んで欲しいのです。大会が終わった後に、成長して、いいレフリーになって帰って欲しいと思っています。このようなレベルの高い大会を経験することが財産となりますので、今後に生かして欲しいです。

今大会に限らず、レフリーは試合の笛を吹いてさまざまな評価を受けています。昨年のウェールズ大会を経験した2人のレフリー──フランス人のポワントさんとヒッツギボンさんがステップアップし、テストマッチデビューを果たしました。今大会でも13名のレフリーのうち2名は、近い将来テストマッチレフリーにステップアップしていくと考えています。そのほかにも、2名ほど将来が期待されるレフリーがいます。

日本のレフリーに関して申し上げますと、平林レフリーは過去に年代別の大会や7人制の大会で笛を吹いていますし、今後も続けていってほしいです。ほかの3名のアシスタントレフリーの方々は今大会で培った経験を生かして活躍し、来年行われるジュニアワールドトロフィーにレフリーとして参加していただくよう、協会から推薦を上げていただくようになって欲しいです。

今大会を通して、IRBが具体的に実現したい取り組みは2つあります。1つは『ゲーム分析』です。IRBのスタッフが2名、専用のソフトを使ってゲーム分析を行っているのですが、レフリーの皆さんにもこれを使って自分のパフォーマンスを上げていく指導をしていきます。もう1つは『ルール適用の一貫性』です。ゲームは人と人が行うものですが、今大会が終わるころには、レフリー全員が一貫性を持ってルールを解釈し、これを適用していけるようになることを目指しています」

◎平林泰三レフリー

平林泰三レフリー
平林泰三レフリー

「『U20世界ラグビー選手権』が日本で開催されるということで、招致してくれた日本協会と大会関係者に感謝したいと思います。私は2005年のU19世界選手権からレフリーとしてIRBの大会に関わり始めたのですが、こういう大きな大会が日本に来ることなど、当時は考えたことがありませんでした。今回、日本で笛を吹く機会を与えられたことを光栄に思います。

2005年当時の大会と今の大会を比べると、選手もコーチたちも躍進し、ラグビー自体も変わってきていると思います。非常にプロフェッショナルになってきている中で、レフリーもパディさんを中心にしっかりとした組織になってきています。前に比べて自身の活動も変わってきました。前に比べてコミットメント(責任)も多くなっていますし、自分の目標達成もクリアに見えるようになりました。将来どこを目指すかが分かりやすくなり、やるべきこと、課題をこういう大会を通して克服していきながら目標を持ってやっています」

◎麻生彰久アシスタントレフリー
「今大会に参加させてもらい、運営の面やレフリー同士のミーティングなどを通していろいろなことを学んでいます。試合ごとに、足りないところを指摘され、いいところは評価を受けています。これから力をつけて、いろいろな大会に参加できればと思っています」

麻生彰久アシスタントレフリー
麻生彰久アシスタントレフリー

◎大槻卓アシスタントレフリー
「今回はこのような貴重な体験をさせていただいて感謝しています。大会期間中ですので、残りの与えられた仕事を100%やり切ることが、まずは自分の仕事だと思います。13名の中には以前に会ったことのあるレフリーもいますし、また新しい仲間ができたりという中で、自分が吸収しているものは多いです。グラウンド内外でできるだけ多くのものを吸収できるように、そして得たものを微力ながら日本のレフリーに還元していければ最高だと思います」

大槻卓アシスタントレフリー
大槻卓アシスタントレフリー

◎河野哲彦アシスタントレフリー
「今大会は戸田(京介)レフリーの代役で参加していますが、最初はびっくりしました。自分が代役を果たしていいものかと悩みましたが、結局いつもの自分を出すだけでいいのかなと考え、試合に臨みました。普段通りよくできることもあれば、ミスをすることもありますが、このような機会を得られたことは幸せだと思います。この二度とあるかないかの経験を、微力ながら日本のラグビーに還元できればと思います」

河野哲彦アシスタントレフリー
河野哲彦アシスタントレフリー