日本ラグビーフットボール協会
審判委員会委員長 岸川 剛之

日頃、自己研鑽に努め、献身的に活動されている全国のレフリーの皆様及びレフリーの指導・育成戴いているレフリーコーチ他3地域・都道府県協会レフリー委員会の皆様方に深く御礼を申し上げます。
また、IRB主催JWC大会運営に際しては、多数の方々にIRBレフリー他関係者をご支援戴きました。この場を借りて重ねて御礼申し上げます。
さて、審判委員会として新しい体制でスタートして2ヶ月あまりですが、今シーズンの活動方針及び2009年レフリング指針をご報告しますので、各指針項目をご確認戴き、レフリー活動へ展開して戴きたいと思います。

1.活動方針 : 活動スローガン “リバイス”
2008年活動内容を継承し、新たな目標を設定し、更なるチャレンジをもって活動推進する。
日本協会公認レフリーは、協会関係者、チーム関係者からの信頼を得ると共に、全国レフリー各位の模範となるハイパフォーマンスのレフリングを展開する。また、審判委員会は、組織を活性化させ、レフリーの指導・育成の最大限のサポートをするように、委員会スタッフが一体となって運営を行なうこととする。
そして、関東、関西及び九州の三地域及び全国都道府県との連携を強化して、レフリーの発掘、育成を積極的に推進して、優秀なレフリーを継続して輩出する育成システム及びプログラムを構築していく。
具体的な活動方針を以下に示す。

  1. 日本協会レフリー公認基準の明確化
    日本協会公認レフリーは、トップリーグを含めて、日本協会主催試合のレフリーを担当することが任務であり、ハイパフォーマンスのレフリングを行うためにフィットネス基準を設定し、相当数の試合を担当できることが条件となる。レフリーパフォーマンスをシーズン通して適切に評価していくこととする。
    また、3地域から新規に日本協会公認に推薦されるレフリーについても、公認選考基準(例:フィットネス基準:マルチフィットネステストレベル110以上、担当試合基準:TOP下部リーグ+主要大学試合を年間20試合程度等)を作成し、シーズン公式戦、春季プレシーズンマッチ及び夏季3地域トップレフリー研修会にて評価していく。
    そのために、レフリーコーチを増員し、レフリー指導・育成の強化及び3地域、都道府県のレフリーコーチ
    の指導・育成とその活動を拡大展開していく。
  2. レフリー育成プログラムの確立
    IRBトレーニングプログラムに基づき、レベルにあったトレーニングを行い、レフリーの早期育成を推進する。特に、アカデミーや3地域若手有望レフリーには、地域交流や全国大会研修会等でレベル向上の機会を積極的に提供する。
  3. 情報の伝達
    テクニカル部会の活動をスピードアップさせて、マニュアル・研修会教材の整備を図り、3地域及び全国都道府県協会に研修会資料の情報を提供する。
    また、映像データをレフリー及びレフリーコーチに提供すると共に、ルール部会を新設し、競技規則やルーリングに関する情報伝達を早めていく。
  4. レフリーの発掘・育成
    レフリー発掘・育成のためには、レフリーコーチの育成及び体制確立が必要であり、3地域及び全国都道府県のレフリーコーチ研修会を実施し、地域、都道府県単位で体制を整備すると共に、レフリー発掘のための認定講習会(C級、B級)を充実させ、レフリーの発掘及び育成を推進する。日本協会、3地域及び都道府県が連係して活動を進めていく。
  5. IRBパネルレフリーの輩出
    IRBパネルレフリー育成のために、レフリー個人の能力・適正を精査して、個別のチャレンジプログラムを作成して推進する。そのために、国際部会を強化し、海外派遣・研修のプログラム作成、アジア・北半球・南半球へのレフリー交流システムを構築していくが、本年度は、そのステップとして香港協会とレフリー交流計画を調整している。
  6. 尊敬されるレフリーの育成
    ラグビー競技におけるレフリーの資質は、ゲームにおけるジャッジだけでなく、コミュニケーションスキル や日常における態度、言動など多方面にわたっていることである。トップレフリーとして、レフリングスキルと共にレフリーの資質の向上を様々な研修を通して研鑽していく。
  7. 安全性を重要視したレフリングの実践
    安全推進委員会から出された方針に基づき、特に高校生以下のスクラムの組ませ方に十分注意するとともに、重症事故につながるような姿勢でのプレーについては厳しく対応してきた。
    ラグビー競技を発展させるためには安全性の確保は絶対条件であり、今後も安全性を最優先したレフリングに努めていく。

「2009年レフリング指針」を下記の通りとした。レフリー関係者はもちろんのこと、チーム関係者にも是非一読願い、レフリーを含むマッチオフシャルとチーム関係者が協力し合いながら、魅力あるラグビーが展開されることを強く願うものである。

2009年レフリング指針

1.基本方針
安全性、公正及び一貫性を持ったレフリングで、ダイナミックかつ継続性のあるラグビーを創出し、チーム、プレーヤー及び観客に最高の感動を与える。

2.具体的目標
(1)安全性を最優先したレフリング(カテゴリーに応じた対応)
(2)不正なプレーに対して厳格かつ一貫性のあるレフリング
(3)クリアーなブレークダウンの判定とコントロール
(4)継続性の重視
(5)アシスタントレフリーとの連係によるチームオブスリーの機能発揮

3.具体的レフリングスキル

(1)セットプレー

  1. スクラムコントロールの強化
    • レフリーのコールに合わせたスクラムエンゲージを徹底する。(コールのタイミングに注意)
    • スクラムのフォーム(バインド、アングルなど)を終了までしっかりとコントロールする。
    • スクラム周辺のオフサイド、オブストラクションなどの確認をチームオブスリーで実践する。
    • 正しいボールの投入により、イコールコンディションでのボールコンテストをコントロールする。
  2. ラインアウトの整理及びギャップ確認
    • ラインアウトに参加する人数を整理し、1mギャップ等正しいライウンアウトのフォームを良く確認する。
    • レシーバーの位置及びボール投入の反対側ポジションニング等を良く確認する。
    • 速やかなボール投入をマネージメントする。
    • ラインアウトからモールに移行する前のコンテストを的確に確認する。
    • オブストラクションプレーへの見極めを的確に行う。
    • ジャンパー及びサポートプレーヤーへのチャージ等危険なプレーを良く確認する。

(2)ブレイクダウン

  1. タックルの成立及び立っているプレーヤーかどうかの見極めを的確に行う。
  2. 継続を妨げるプレー(シーリングオフやノットロールアウェイ)の適切な判定及びコントロールを行う。
  3. タックル後の最初のボール獲得及びラック形成後のボール争奪の継続の見極めを的確に行う。
  4. 効果的なプリベントコールにより、プレーヤーとのコミュニケーションを的確に行う。

(3)不正なプレー

  1. ファウルプレー(ゴール前のインテンショナル含む)に対しては毅然として対応する。
  2. タックル部位を確認し、一貫した基準で適用する。
  3. 安全性を最優先したゲームコントロールを行う。
  4. アシスタントレフリーのレフリーサポート強化(基準の統一と連係強化)

(4)その他(競技規則の正しい適用)

  1. モールの成立と解消、モール離脱のオフサイドの確認を確実に行う。
  2. クイックスロー成立と投入位置の確認を確実に行う。
  3. モール成立後の引き倒す行為(反則)を的確に確認する。(アシスタントレフリーとの連係強化)
  4. タックル成立後の立ったままのプレーヤーのタックルへの参加

(5)ゲーム全体を通じて

  1. 試合を通して一貫したレフリングを実践する。
  2. 必要最小限のコミュニケーションスキルによりダイナミックで継続性のあるゲームを創出する。
  3. チームオブスリーの機能強化を図り、マッチオフシャル全員によるゲームマネジメントを行う。