●試合日 2011年8月21日(日)19:00キックオフ
●会場 東京「秩父宮ラグビー場」
●試合結果

日本代表 20-14 アメリカ代表 (前半8-14)

マッチレポート

日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表

日本代表が、終盤のトライでアメリカ(米国)代表を突き放し、辛くも2011ワールドカップ壮行試合に勝利した。試合後ピッチ上での『リポビタンDチャレンジカップ』表彰式インンタビューでJ・カーワンは、「日本はワールドカップのためにたくさん仕事(練習)してきました。今日いい試合しました」と全て日本語で応えたが、イタリア遠征やこれまでのトレーニングの疲れもあってか、思い通りの内容とは言えなかったようだ。

東日本大震災被災者のための黙祷に続き、前回の対戦以来、約3年振りにあの勇ましい『星条旗』(米国国歌)が秩父宮に流れた。30分前位から再び強まってきた雨の粒が、ナイトゲーム照明の回りではっきりと見える中のキックオフ。早くも6分に日本が先制する。やや膠着したブレイクダウンから始まった展開で、CTBニコラスとシザースしたCTBトゥプアイレイが大きくゲイン。オフロードパスを受けたFB上田のトライ。ところが日本は、直後のキックオフリスタートの処理ミスを突かれ、米国WTBスウィリンにノーホイッスルトライを献上してしまう。すぐにニコラスのPGで3点返したものの、以降前半は無得点。逆に前半終了直前、米国バックラインのオフサイド気味の飛び出しに慌てたバックスが味方同士で交錯している間、こぼれ球を拾ったスウィリンに2つ目のトライを奪われ、日本は前半を8-14とリードされる。

雨も収まってきた後半、日本最初のチャンスはラインアウトからの左ラインアタック。上田が参加してオーバーラップとなったWTB小野澤はカバーに捕まるが、そこから折り返しの右アタックでゴール前まで迫った。が、ノックオン。その後もいくつかチャンスになりかけるが、多数のファンで埋まったスタンドからは「オーッ!」の後に「あぁ~」という溜息が続く展開が続いた。やっと日本が逆転したのは14分。敵ゴール前スクラムから左へいくつかフェーズを重ねた後、No.8菊谷主将が抜け出してインゴールへ。さらに26分、やっと胸のすくトライが生まれる。ラインブレイクしたトゥプアイレイのオフロードを受けたCTB平(途中出場)がよく粘り前進、さらに菊谷がWTB宇薄に繋いで右隅に決めたもの。その後の米国の反撃を凌ぎ、後半は無失点で逃げ切った。

この日日本は、ブレイクダウンからの球出しにもたつく場面がよく見られ、テンポに乗った早いアタックはできず仕舞い。後半途中、SH日和佐が入ったあたりからは若干改善したが、それまでのSH吉田が悪かったわけではなく、吉田はディフェンスで強いところも見せていた。他のポジション同様、ワールドカップでのSHのポジション争いも厳しい。翌日の最終メンバー発表を控えたJ・カーワンは、今晩眠れないだろう。

一方、これまで代表チームを牽引してきた名手SOマイク・ハーカスが去り、今回はクレバー主将やWTBングウェニアを欠く米国は、日本遠征前のウォームアップマッチでカナダに連敗。この日はブレイクダウンで日本にプレッシャーをかけ、接戦に持ち込むことに成功したが、挙げたトライは日本のミスに助けられた2本だけと、ワールドカップに向けてはアタックが課題となるだろう。(米田太郎)

日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表

会見ダイジェスト

アメリカ代表◎アメリカ代表

○エディー・オサリヴァン ヘッドコーチ

「タフなゲームでした。日本は良くプレーしたと思います。後半、日本ももう少しスコアしたかったと思うが、こちらもボールを保持する時間が少なかったと感じています」

──主力の選手を起用せずとも、良いゲームになったが?
「確かに、うまくいけば最後に逆転できるスコアでしたが、全体から見ればUSAは非常に多くの選手交代をせざるを得ず、残念な結果になりました。日本の非常に良いディフェンスでのプレッシャーの下、選手は良くやったと思います」

──ワールドカップ前にレフリーのジャッジをチェックしたかった部分での収穫は?
「今日はグラウンドコンディションが難しく、ボールが手に付かない面が両チームともありました。私自身、このようなコンディションでやることは好きではありませんが、NZでもこのようなコンディションはあり得ますので、良い経験になったと前向きにとらえています。レフリーのジャッジについても、それに慣れるようにしなければなりません」

──ワールドカップへの準備は?
「ワールドカップの試合とその前の試合はまったく違うものです。今日はセレクションの意味もある試合でしたが、これからの戦略として、ワールドカップは厳しく、ティア1強国とのタフな試合が続くので、ボールをキープすることと、タックルでのプレッシャーなどディフェンスを整備して臨みたいと思います」

──日本とカナダを比較してみると?
「カナダは危険なチームです。ランニングもパススキルも良く、思いがけないところからスコアする力を持っています。先週と先々週、2試合、カナダと対戦しましたが、ゲームのペースをカナダに握られて、厳しくブロークンプレーをされました。日本にとって大切なことはゲームコントロールでしょう」

○マイク・ペトリ ゲームキャプテン

「我々も頑張ったが。日本は良くプレーしたと思います。日本に対してプレッシャーをかけ続けて選手は良くやったと思います。スクラム、ディフェンスの面で日本は良いプレーがあり、ワールドカップでも頑張ってもらえるのではと感じました」

──カナダと日本はどちらが危険か?
「両方とも良いチームです。カナダはあらゆるところから攻めてくる危険なチームであることは言うまでもありませんが、日本もタックルが良く、カナダ、日本の両チームスタッフとも優れていますので、興味深い良いゲームになるでしょう」

日本代表 20-14 アメリカ代表 日本代表 20-14 アメリカ代表

日本代表◎日本代表

○ジョン・カーワン ヘッドコーチ

「(日本語で)まあまあです。試合は勝ちましたが、激しい、ゆっくりのプレーでした。前半はちょっとミスが多いけれど、後半はセットプレーが良くなり、ボールをキープしました。ワールドカップ前、最後の試合は好きじゃない。まあまあの試合でした。準備は終わりました」

──今日のチームのプレーを評価すると?
「(英語で)一言で言うと、平均的。前半、USAのプレッシャーを受けましたが、後半はリズムが出て本来の動きを出せました。勝って課題を感じることができたので、ワールドカップに向けて良い準備のできた試合でした」

──「最後の試合は好きじゃない」のはどうしてか?
「今までを振り返ると、フランス大会前のポルトガル戦、イタリア代表監督時代の時もスコットランド戦で良くない試合をして、メンタル面でどこか足りない状態でワールドカップに臨んでいました。今回は怪我なく終わったのがポジティブなところです。選手は地に足を付けてワールドカップに行けます。交代の選手がポジティブだったことも良かったです。谷口、日和佐、畠山を必要なときに送り込めました」

──スクラムハーフの交代は予定どおりか?
「交代は予定どおりです。トモキ(吉田朋生選手)は前半、良かったが、日和佐はさらにスピードを加えてくれました」

──今日の戦い方をフランス戦でもするのか?
「フランスチームの関係者がいるので答えにくいが(笑)、ワールドカップで日本を知らしめる最初の機会ですからね。ボールを使って、プレッシャーの下でもエキサイティングなゲームをお見せしたいですね。今日は、後半、ディフェンスは日本スタイルを少しは見せることができました」

──チーム編成については?
「(日本語で)ぼく、今日の夜は寝ていないね。セレクションについては、明日の朝、判断します。30人と15人のバックアップメンバーです」

──セットプレーはイタリア戦と比べて?
「前半はまあまあ、スクラムは半分くらい良く、半分くらい良くなかったです。後半はレベルが上がりました。多分、スローとラインアウトさえしっかりできれば、セットプレーはうまくいけると思います」

──準備は万全か?
「準備は良い具合です。アジア五カ国、パシフィックネーションズカップの両方で優勝できたのは良くやったと思います。イタリア戦も接戦に持ち込めました。しかし、ワールドカップで勝たないと意味がありません。結果を出すことです。4年前と今を比べると、19位から12位まで世界ランクを上げることができました。ワールドカップ最初の2戦では接戦にすることができると思います。それまでにセットピースを修正して、ジャパンスタイルを全うして、自信を持って臨みたいと思います」

○菊谷崇キャプテン

「(JKに合わせて)まあまあの試合です(笑)。JKの言うとおり、前半はセットプレーで自分たちのミスからトライを譲ってしまい、そこをハーフタイムに檄を飛ばし合って切り替えることができました」

──ハーフタイムではどんな檄が飛んだのか?
「プライドを持って戦おう、基本のプレーをしましょうということです。しっかり日本の速いテンポをつくろうとしました」

──今日の試合でのミスは個人のミスか、それともチームとしてのミスなのか?
「最終的には個人のミスです。この天候にしては、ディフェンスは良かったと思いますが」

──ずっと課題であった、試合の入りがまだ良くなかったのでは?
「スタートは悪かったわけではないのですが、この天候で、最初にトライを取ったすぐあとのキックオフをミスしたのは良くなかったと思います」