Text by Kenji Demura

オールブラックス戦に次いで大事なカナダ戦で先発として真価が問われるPR藤田(中央)
オールブラックス戦に次いで大事なカナダ戦で先発として真価が問われるPR藤田(中央)
photo by Kenji Demura (RJP)

残念ながら、すでに目標だった「2勝」には届かないまま、W杯を終えることが確定してしまっているJKジャパンの最終戦は、4年越しに決着をつける試合となる。
2007年9月25日、フランスボルドー。予選プール最終戦でカナダと対戦した日本はロスタイムに飛び出したCTB平浩二のトライで2点差に追い上げ、最後のコンバージョンをCTB大西将太郎が決めて引き分けに持ち込んだ。
この前回大会のカナダ戦こそ、1991年のジンバブエ戦以来、16年ぶりに日本がW杯で負けなかった試合だった。

それから4年間、07年から継続するかたちでジョン・カーワンヘッドコーチの下、世界ランキングを18位から13位に上げるなど、着実に強化を重ねてきたはずのジャパンだったが、今回のW杯でも勝負を懸けて臨んだトンガ戦に敗れるなど予選プールで3戦3敗。
奇しくも前回と同じカナダとの対戦となった予選プール最終戦で20年ぶりのW杯勝利を目指すことになった。

カーワンHCは、そのカナダ戦にトンガ戦とほぼ同じメンバーを起用。
トンガ戦時点ですでに離脱していたLOジャスティン・アイブス、NO8ホラニ龍コリニアシ、SH吉田朋生、CTB今村雄太、同・平浩二以外に、FL/NO8谷口到もトンガ戦で負傷し、今回はメンバーから外れたが、そんなケガ人を除けば、この15人、そして22人がJKジャパンのベストメンバーということになる。
ちなみに、数少ないメンバー変更である畠山健介から藤田望への右PRに関しては(トンガ戦とは反対に藤田が先発、畠山がリザーブに回る)、カーワンHCは「スクラムで進歩している藤田を先発に回して、畠山には後半フィールドプレーで頑張ってほしい」と、その起用意図を説明する。

当然、オールブラックス戦での大敗に続いて、ターゲットとして考えられていたトンガ戦にも敗れたことで、チーム全体がショックを受けていたことは間違いない。
「日本らしいラグビーが見せられなくて、本当に申し訳ない気持ち」(SH田中史朗)
「(トンガ戦当日に)今日だけは落ち込ませてください」(HO堀江翔太)
多かれ少なかれJKジャパンの面々がそんな気持ちを抱いていたのは紛れもない事実だっただろう。

トンガSH/SOモアにタックルにいくカナダFLクリーバーガー(右)とCTBファンデルメルヴァ。トンガにも力強さで上回ったフィジカルの強さは要注意だ
トンガSH/SOモアにタックルにいくカナダFLクリーバーガー(右)とCTBファンデルメルヴァ。トンガにも力強さで上回ったフィジカルの強さは要注意だ
photo by Kenji Demura (RJP)

それでも、菊谷崇主将を中心に選手側からの提案で試合前々日に予定されていた練習をオフにするかわりに、長めにしたという3日前の練習では「みんな試合と同じような気迫を持って、体を張ってくれた」(同主将)と、どうやらうまく気持ちを切り替えられているようではある。
2年前に来日したカナダには2連勝(46-8、27-6)している日本だが、その時のことは忘れて臨んだ方がいいかもしれない。
「カナダはもの凄く進歩している。チーム戦術もしっかりしているし、8番や13番などのキープレーヤーもいい」(カーワンHC)
「2年間に比べてすごいいいチームになったという印象。トンガ戦にもフィジカル面でも上回っていた」(菊谷主将)
確かに、フィジカル面での強さは相変わらずだが、しっかりフェイズを重ねながらアタックを構築していくスタイルは過去にはなかったもの。
初戦のトンガ戦と2試合目のフランス戦の間隔は中3日しかなかったが、ほぼ同じメンバーで戦い、トンガに鮮やかな逆転勝ちした後、フランスにも粘りのプレーで善戦した。
日本戦メンバーも基本的には過去2戦と同様。今度は中8日という休養十分の状態で立ち向かってくる。

「まずはフィジカルでしっかり対抗すること」
カーワンHCと菊谷主将は、そんなふうに口を揃える。
トンガ戦敗戦のショックからわずか6日後の試合。
「セット、キックオフ、ブレイクダウン」(WTB小野澤宏時)
「コミュニケーション」(SH田中史朗)
トンガ戦での敗因となったポイントをどこまで修正して臨むことができるか。
「トンガ戦も普段どおりできていれば勝てていたのに普段どおりできなかった。相手のプレッシャーもあったけど、自分たちでプレッシャーに負けていた気がする。それがワールドカップなのかもしれないけど、普段どおりしにくい中でいかに普段どおりできるか。80分間楽しめるようにしたい」(菊谷主将)
課題である立ち上がりにしっかり入れるかなど、メンタル面の充実ぶりも試合の勝敗を左右することになりそうだ。