「アタックの進化」を証明して欧州遠征初勝利を
世界ランキングでは同じ10位台のロシアと対戦

リポビタンDツアー2013で欧州滞在中の日本代表が、英国時間15日夜(日本時間15日早朝)英国ウェールズ北部のコルウィンベイでロシア代表とのテストマッチを戦う。

(text by Kenji Demura)

6月のPNC以来の先発となるWTB藤田にとっては欧州でのテストマッチデビュー戦となる
photo by RJP Kenji Demura
グロスター戦ではSOとしてプレーした田村はCTBでのゲームコントロールを担当する役割を担う
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IRB世界ランキング9位のスコットランドに17―42。
元NZ代表SHジミー・カウワン、元イングランド代表CTBマイク・ティンドルなど、本物のインターナショナルプレーヤーも含まれていたイングランドプレミアシップの強豪、グロスターに5―40。

アタックし続けるジャパンウェイは随所に感じさせながらも、敵陣深くに攻め込んだ後の細かいミスや精度の問題でトライを取り切れないことも響いて、英国に入って2連敗。

欧州遠征3戦目となる、現在、同世界ランキング19位のロシア(日本は11日付けで14位にランクアップ)とのテストマッチは、絶対負けられない一戦であることは間違いない。

グロスター戦から中2日。スコットランド戦から見ても中5日という強行日程。その間に2度に渡る移動もあった。

ギリギリまで選手のコンディションをチェックしたこともあって、通常は試合2日前に行われるメンバー発表も試合前日にずれ込むほど。

そんな厳しい条件でのメンバー選考となったが、それでもスコット・ワイズマンテルヘッドコーチ代行は「重要なテストマッチ。もちろん、現状のベストメンバーで臨む。最後までメディカルチェックをしたのも、全ての選手にチャンスを与えたかったからで、いい準備はできている」断言する。

その「現状のベストメンバー」をスコットランド戦と比較するなら、3つのポジションで先発メンバーが入れ替わる。

LOが真壁伸弥から大野均、インサイドCTBがクレイグ・ウィングから田村優、そして左WTBが福岡堅樹から藤田慶和。

2010年にロシアと対戦した経験を持つ大野は「必ず勝たなくてはいけない試合だし、スコットランド、グロスターでの教訓と反省を生かして、ブレイクダウンで危険分子になりそうな相手の選手がいたら、しっかり排除していく」ことが自分の仕事のひとつだと説明。

一方、グロスター戦ではSOで先発した田村はCTBでの出場となるが、当然、意識しているのはゲームコントロールの部分。

「一貫性あるプレーをしてFWが前に出られるように、まわりとコミュニケーションとってゲームコントロールしていく。ランとパスをミックスして、僕とマレ(=CTBサウ)のところでゲインライン切っていくことが重要になる。もちろん、オプションにはキックもあるし、蹴るべきところは蹴るという練習はしている」

そんなふうにロシア戦のポイントを語る田村のグロスター戦でのパフォーマンスに関して、ワイズマンテルHC代行は「ソリッドだった。試合の初めで足首を痛めたがしっかりBKラインを統率できていたし、いい仕事をした」と評価する。

そして、田村同様テストマッチとしては6月以来の先発となる藤田も、グロスター戦からはポジションが変更になる(FB→左WTB)。

「個人的にはFBをやりたいが、WTBでも違和感なくできる。右でも左でも」というのが、現時点での藤田のポジションに対する捉え方だ。

「スピードはかなり良くなってきているので、しっかりトレーニングしてきた結果が出ている。勝つためにしっかり自分の役割を果たしたい。ボールを持って前に出ることはもちろん、ボール持たない時の動きも重要。DFでもここまではタックルを外されたこともあったけど、しっかり止められるようにしていきたい」と抱負を語る。

NZ戦以来の先発となるLO大野はブレイクダウンでの仕事を強く意識してのプレーとなる
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グロスター戦でのパフォーマンスが評価されてリザーブ入りするWTB山田。代表初キャップなるか
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2年後のスプリングボク戦を想起させる面も

ロシア戦の3日前に、実際に2年後にアジア代表が2試合を戦うことになるグロスターで試合をしたことに端的に表れているとおり、今回の英国での3試合は2015年ラグビーワールドカップイングランド大会を念頭に置いたもの。
その意味で、ロシア戦に関しては初戦の南アフリカ戦を意識した対戦と言えなくもない。

前述のとおり、3年前のロシア戦(75-3で日本が勝利)を知るLO大野は「3年前のロシアとは別のチームと考えている」と前置きした上で、「W杯では南アフリカとも戦うので、体の大きなロシアに対して、まずはしっかりフィジカルで対抗して、FW勝負」と、試合のポイントを語る。

WTB廣瀬俊朗キャプテンも「ゲームの最初のところのフィジカルの部分を制することがゲームを優位にする。そこを大事にしたい」と同意する。

あるいは、「BK スリーバックスリーが速いので、キックチェイスちゃんとして、相手スペース与えないようにしないといけない」(大野)というのも、WTBブライアン・ハバナ、JPピーターセンといった決定力のあるBKスリーを揃える南アとの共通点かもしれない。

もちろん、現在、世界ランキング2位の南アフリアとロシアではレベルが違うのも確かだが、スプリングボクスと対戦するのと何ら違わない準備・心構えで臨むということ。

2年後の南ア戦が行われるブライトンはイングランド南部、今回のコルウィンベイがウェールズ北部という違いはあれ、同じ英国の港町で行われるという意味での共通点もある。

そんなふうに、2年後のスプリングボクス戦を想起させる面もあるロシア戦。

ここまで、リポビタンDチャレンジカップ2013のニュージーランド、そしてリポビタンDツアー2013初戦スコットランド、第2戦グロスターという強豪と戦いながら、「アタックに関しては良くなっている」(廣瀬キャプテン)と選手たちが手応えを感じている部分を、結果として証明する試合となる。

厳しいコンディションの中、ワイズマンテルHC代行は「現時点でのベスト」でロシア戦に臨むことを断言
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