ファーストチョイス8人欠くも若手の成長に手応え
チームの底上げを印象づける好パフォーマンスを

11月1日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸でリポビタンDチャレンジカップ2014、日本代表(JAPAN XV)対マオリ・オールブラックス第1戦が行われる。

(text by Kenji Demura)

テストマッチ10連勝中の日本代表。15年W杯に向けて真価が問われるリポビタンDチャレンジカップ2014の2試合となる
photo by RJP Kenji Demura
稲垣、垣永のノンキャップ組PRも揃ってリザーブ入り。HO湯原も先発・木津のコンディションが完璧ではないため、重要な役割を果たしそうだ
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昨秋からテストマッチ10連勝中。6月にはカナダ、アメリカをアウェーで撃破し、欧州の強豪イタリアにもしっかり勝ちきって、正々堂々の世界ランキングベスト10入り(現在のランキングは11位)。
開幕まで1年を切ったラグビーワールドカップ(RWC)2015イングランド大会へ向けて、日本代表の新たな進化を国内のファンの前で披露する貴重な機会となるリポビタンDチャレンジカップ2014。
マオリ・オールブラックスを迎えて行われる2試合は、世界トップ10入りを成し遂げた時とはやや特徴が異なるメンバーで「世界ランキングで言えば、6、7位くらいの実力ポテンシャルのある」(エディー・ジョーンズヘッドコーチ)強豪に立ち向かうことになる。

「ファーストチョイスの8人がいない、計200キャップほど少ないチーム」とジョーンズヘッドコーチが説明するとおり、PR平島久照、HO堀江翔太、FL/LOジャスティン・アイブス、FL/NO8マイケル・ブロードハースト、FL/NO8堀江恭佑、NO8ホラニ龍コリニアシ、SH田中史朗、WTB福岡堅樹(10月21-24日の合宿のみ参加)の8人が主にコンディションの問題で不参加。
神戸で行われる第1戦の先発メンバーでは、FLリーチ マイケルキャプテンやFB五郎丸歩バイスキャプテンなどの経験豊富なメンバーの一方で、NO8に日本代表として2試合目のヘイデン・ホップグッド、そしてWTBに21歳の松島幸太朗と、春シーズンには日本代表としては余りプレーチャンスのなかったメンバーが加わっている。

さらに、初々しい顔が並んだのはリザーブ陣。
三上正貴、畠山健介という圧倒的な存在感を誇る先発PR陣をカバーすることになるのは、稲垣啓太、垣永真之介のノンキャップ組だ。

セットプレーに、フィールドプレーにハードワークが求められるポジションだけに、リザーブが途中出場するケースが多く、2人揃って日本代表として初お目見えとなりそうだ。
「まずはスクラム」と、揃って自らの仕事に関して共通認識を語る2人。
昨季のトップリーグで新人賞に輝いた稲垣が「個人的に試したいのは、トップリーグでは僕のタックルは通用していると思っているが、それが世界のトップレベルではどうなのか。相手はボールを動かしてくるチームなので、僕の長所であるディフェンスや仕事量を生かせるのではないかと思っている。楽しみです」と抱負を語れば、1年目ながらサントリーの一員として今季のトップリーグで全試合出場を果たしている垣永も「(日本代表のラグビーを)完璧にはわかっていないが、方向性は理解してきている。相手に押されないように、スクラムをしっかりやった上で自分の得意なことやっていきたい」と、チームへの貢献を誓う。

また、今季のトップリーグで彗星のようにデビューし、一気に日本代表入りを果たしたNO8アマナキ・レレイ・マフィもリザーブ入り。
09年のIRBジュニア・ワールド・チャンピオンシップで出身国であるU20トンガ代表としてプレーした経験も持つが、「自分がプレーするのはトンガ代表だけと思ってたけど、日本代表としてもチャンスが出てくるなんてビックリ。どちらを選ぶか難しかったけど、大好きな日本の代表としていいプレーをしたい気持ちが強くなった。トンガにいる家族も全員が応援してくれている」と、重大な決断を経ての日本代表入り。
マオリABには、「トップリーグでプレーする時よりもっとフィジカルにプレーしないとダメ」と、一種のセンセーションを起こした感さえあるNTTコミュニケーションズでのプレーよりもさらにギアを上げた状態で暴れまくることを宣言する。

宮崎合宿でSO田村にタックルに行くNO8マフィ。トップリーグでセンセーションを起こしている突破力は国際舞台でも通用するか
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トップリーグきってのインパクトプレーヤーとして宗像サニックスでトライを重ねるWTBヘスケスは母国チーム相手の代表デビューとなるか?
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世界ランキング6、7位に匹敵の強敵相手に
いかにボールキープし続けるかがポイントか

バックスのリザーブ陣にも期待の新顔が。
先発WTBの山田章仁、松島に負けず劣らない決定力を誇る、インパクトプレーヤーのカーン・ヘスケスだ。

「2年前から日本代表でプレーすることを目標にしてきた。いきなりニュージーランドが相手だし、特別な思いで臨む試合となる」と、高ぶる思いを隠しきれずにいるヘスケスが、体全体を躍動させるような走りでスタンドを湧かせるシーンが目に浮かぶようでもある。

10月21日に集合した後、10日間に渡って九州・宮崎で行われてきた合宿を終えたジョーンズHCは「今回の合宿で主にやってきたことはチームとしてのベースの部分のオーガナイズ。キャンプ終盤はこのチームで試合をするためのいい練習もできた。新しい選手たちの態度もすばらしい。熱意がすごくて、チームは活性化している」と、短期間での選手たちの成長に手応えを感じつつも、「マオリ戦はパーフェクトコンディションではない。フィットネスレベルにばらつきがあるし、まだまだ学ぶことはたくさんある」ことも認める。

来日したマオリABに関しては「若いチームだが、キックも効果的に使ってくるし、もちろんターンオーバーからのアタックには要注意。ニュージーランドのチームは全部アスレティックだし、ペースもパワーもある」と、当然ながら厳しい相手であると分析。
前述のとおり、合宿終盤にはマオリAB対策もチームに落とし込まれたが、チームリーダーたちが語ってくれた勝つためのポイントは以下のとおり。

「最初からファイトするのとディフェンス。アタックはどの試合でもトライを取っているから心配していない」(リーチ キャプテン)

「相手はカウンター能力が高いので、ボールキープをしっかりしないといけない。タッチに出す時もしっかりスタンドにボールを蹴り込んだり」(五郎丸バイスキャプテン)

「新しい選手は思い切ってプレーしてもらえれば。型にはまろうとするとミスしてしまう。ボールを持ったら思い切っていくというように。最低限のラインアウトやムーブのサインを覚えておいてもらえれば。あとは他のメンバーがしっかりサポートしていくことが重要」(畠山)

RWCイングランド大会まで1年を切った状況では初めてとなる日本代表の試合。
ファーストチョイスの8人不在でも、しっかりボトムアップした日本代表の強さを印象づける内容を期待したい。

NO8で先発するホップグッドは自らの出身国ニュージーランドのマオリABとの対戦に「ワクワクする」
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若いメンバーも多い中、最後列から全体を締めるFB五郎丸副将の存在は心強い。当然プレイスキックでの得点も重要だ
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強敵マオリABに対して「いま選べるベストフィフティーンで臨む」と語るジョーンズHC
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大会公式記者会見に臨んだマオリ・オールブラックスのクーパーHCとナタイ主将。日本のセットプレーを警戒する
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CTB陣は「C.スミスのようになってほしい」とジョーンズHCが期待をかける立川がアウトサイド、サウ(右)がインサイドに入る
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