マッチリポート 第50回 全国大学選手権大会

流通経済大学 24-27 慶應義塾大学
【セカンドステージ 2014年12月27日(土) /東京・江戸川区陸上競技場】
関東大学リーグ戦1部で優勝した流通経済大学は、No.8ジョージ・リサレ、WTBジョセファ・リリダム、合谷和弘らを中心としてダイナミックな展開ラグビーで悲願のファイナルステージ準決勝進出を目指す。一方、慶応義塾大学は魂のタックルで守り抜いてFWでトライを取って、しぶとく勝ちたい。実力もほぼ互角の両チームの対戦は、それぞれの特長を出し切ったナイスゲームとなった。
前半5分、慶応大は流経大のスクラムコラプシングで得たペナルティーキックからPGを狙わず、ゴール前でのラインアウトからモールでゴールラインを狙う。HO神谷哲平がうまくモールをコントロールし、PR吉田貴宏がトライ(ゴール不成功)、早くも0-5と慶応大がリードした。その後も慶応大はほとんどの時間を流経大陣で戦い、19分にもゴール前ラインアウトから今度はPR吉田がブラインドサイドにピールオフするサインプレーから最後はHO神谷が飛び込みトライ(ゴール不成功、0-10)、慶応大としてはFW第1列の活躍で思い通りのスタートが切れた。慶応大は27分にも流経大SO東郷太朗丸のキックをFL廣川翔也がナイスチャージ。廣川が自らボールを拾うと、これにフォローしたCTB石橋拓也にパス、石橋がゴールラインまで走り抜け、ゴールも決まり慶応大が0-17とリードを広げた。
しかし、流経大も自慢の展開ラグビーを見せる。34分にPGを失敗したが、その直後のドロップアウトでボールを確保すると、自陣から良くフェイズを重ね敵陣に入る。CTB木村海斗がラインブレイクしてポイントから出したボールをSO東郷→WTB合谷和弘→No.8リサレと素早くつなぎリサレが中央を突破してトライ(ゴール成功)、7-17のスコアとして、ハーフタイムとなった。
後半は、流経大がラインアウトで優位に立ち、ラインアウトからアタックを継続するシーンが多くなったが、流経大の切り札の選手1人に対し、慶応大は2人の選手での「ダブルタックル」を連発し、好ディフェンスで追加得点を許さない。後半12分には慶応大が自陣で流経大に攻め込まれながらも、PR青木周大がボールをターンオーバーし、CTB川原健太朗が右タッチライン際を70m独走してトライ、難しいゴールも決めて7-24とすると、慶応大に勝利が近づいてきたように思えた。
しかし、ナイスタックルを続けていた慶応大FWも運動量が多いため疲れが出てきたのか、流経大の選手がラインブレイクすることが増えてきた。17分、No.8リサレの中央突破にHO中村篤郎、FL廣瀬直幸がすばやくフォロー、後半途中からCTBにポジションを変えた合谷和弘につなぎトライ、ゴールも決め14-24とした。更に24分にもラインアウトから少し乱れたアタックの中でWTBリリダムが大きくブレイク、ラックから出たボールをSH木村友憲から素早くブラインドサイドに展開し、HO中村がタッチ際をゲイン、最後はNo.8リサレがトライ(ゴール不成功)、19-24と5点差まで詰めると、「勝負は最後までわからない」と思えるようになった。
その直後のキックオフからも、流経大は良くボールを継続しFB桑江健一郎が中央をラインブレイクしてゴール前に迫る。FWでラックサイドアタックを繰り返した後、ラックから出たボールをSO東郷がWTBリリダムによくコントロールされたキックパスを蹴る。リリダムがしっかりボールをキャッチしてゴールラインに飛び込み、流経大はノーホイッスルトライ(ゴール不成功)であっという間に24-24の同点となった。
残り時間は10分余り。このまま同点で引き分けとなると、勝ち点差でリードする流経大が準決勝進出となるので、慶応大としては3点でもいいから得点して勝利をつかみたい。この大事な最後の10分間に我慢が出来たのは慶応大だった。FWにリザーブの選手を入替で投入して、厳しいタックルも戻ってきた。SO矢川智基のナイスキックでのエリアマネジメントで敵陣に入ると、慶応大FW選手が流経大のアタックにタックルを浴びせる。我慢しきれなくなった流経大が自陣でオーバーザトップの反則を犯し、そのPKをSO矢川が冷静にゴールを決め、慶応大が残り時間4分で24-27とリードした。流経大は最後までトライを取りに敵陣でフェイズを重ねアタックを続けるが、最後にトライを狙いに行ったSO東郷のキックを慶応大にターンオーバーされノーサイドとなった。流経大としては、後半は自分たちのラグビーのかたちを取り戻していい試合運びにできたが、今年もトップ4に手が届かない結果となった。一方、これでプールB1位となった慶応大は昨年度に続き、正月2日、帝京大と準決勝を戦う。

(正野雄一郎)

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(c) JRFU 2014, photo by H.Nagaoka
会見リポート
 

監督・キャプテン
流通経済大学の内山GM兼監督と木村キャプテン

流通経済大学

○内山達二GM兼監督

「ありがとうございました。相手の強みがモールとタックルと分かっていましたので、しっかり止め切ること、テンポのあるダイナミックラグビーをしようと臨みました」

──個々は流通経済の方が上だったが?

「我々のスタイルでトライも獲れたので、前半からそのラグビーができていれば、違う展開にできたかもしれません。やはり、甘さがあるなと。前半から自分たちの強みが出せたらと思います」

──また4強の壁を突破できなかったが?

「去年と比べて、ずっとボールを動かしてチャレンジングなラグビーをしてきました。その精度を上げれば、この壁は破れると信じています。木村キャプテンは厳しい状況で臨んで結果が残せず、本人は本当に悔しい思いだろうと感じます。この一戦を後輩たちが励みにしてくれればと思います」

○木村海斗キャプテン

「ありがとうございました。慶應さんは、大学でもトップクラスのタックルをしてくると分かっていました。後半はタックルの強度に慣れてきて、ゲインする部分もあったかと思います」

──最後のSOのプレー選択は?

「まあ、SOというポジションでもあり、僕よりも周りを見ることができる選手です。時間、点差を考えて彼の判断で、あそこが開いていると思ってやったプレーですから。ゲーム中は、チームは彼の判断で動きます。彼なりのシナリオがあって、あそこで獲れると思ったプレーですから」

──引き分けでも上に行けたが?

「引き分けで良いというのは、チーム皆が分かっていました」

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(c) JRFU 2014, photo by H.Nagaoka
 

監督・キャプテン
慶應義塾大学の和田監督と木原キャプテン

慶應義塾大学

○和田康二監督

「本日はありがとうございました。最後まで厳しい試合でしたが、4年生中心に、苦しい時間帯を守り切ってくれました。選手の頑張りに尽きると思います。流通経済大学さんは留学生中心に非常に良いラグビーをされました」

──青木君、廣川くんのタックルが良かったが?

「とにかく、今日は一人目が下に入り、二人目がボールに行くことを徹底しようと臨みました。前半から廣川も青木もとても良いロータックルをしていました。ただまあ、もっと厳しく、ああいう大きな選手を止めたかったですが、獲られたところがありましたから、もう一回ディフェンスからしっかり整備していきたいです」

──次の試合に向けて?

「中5日、できることは限られています。まず選手をフレッシュな状態にして、セットプレーに関しては、ラインアウトは慶應の強みにしたいと思います。正直、今日の後半の苦戦の原因はラインアウトの精度の問題でした。修正の余地があるなと思います」

○木原健裕キャプテン

「本日はありがとうございました。前半の入りはしっかり陣地を取って、用意したFWのモールで点差をつけることができました。しかし相手のNO8、後半から出てきたWTBと、個の強い選手にゲインされました。最後に守り抜いて勝ったことは、まだまだ満足はできませんが、これが勝負と思いました。1週間しかありませんが、次の試合に向けてしっかり準備したいと思います」

──どのあたりを修正していきたいか?
「やはり調子が狂ったのは、セットプレーのラインアウトのところです。一番のターニングポイントでした。リアクション、タックルした後のディフェンスのセット、回りを見て強い選手を見て、一人目はロー、二人目はボールを徹底したいです」

──序盤からトライを重ねたが?
「春の試合では、最初に2トライして、そこから相手の強いランナーに走られて点差をつけられました。今日も2トライ獲ったあと、しっかり獲らないとやられると言いました。入りはイメージどおり、3トライ目を取れたのが大きかったと思います」

──追いつかれたが?
「やはり、選手もイメージしていないものが試合で出て焦っていました。慶應も、もう少し意思統一して、グラウンドレベルで相手にリアクションしてしっかり起き上がって、頭をクリアにする必要がありました」