盤石の王者・帝京大が破竹の6連覇を果たすか
勢いに乗る筑波大が初の頂点にたどり着くのか

1月10日、東京・味の素スタジアムで全国大学ラグビーフットボール選手権大会ファイナルステージ決勝戦が行われる(14:30キックオフ)。

text by Kenji Demura

第50回 全国大学選手権大会
決勝に勝ち残ったのは、共に関東大学対抗戦Aグループに所属する帝京大学と筑波大学。
大学選手権5連覇中の帝京大に対して、初の大学日本一を狙う筑波大学という図式だけではなく、頂点を争う場にたどり着く道のり自体も、実に対象的なシーズンを過ごしてきた。

ディフェンディングチャンピオンとして5度目のシーズンだった今季の帝京大は、関東大学対抗戦Aグループでの7試合で2つの100点ゲームも含めて総得点が499に対して、総失点はわずかに35という圧倒的な強さを見せて全勝優勝。

大学選手権に入っても、セカンドステージの3試合(43-3=対天理大、83-12=対朝日大、98-15=対法政大)、そしてファイナルステージ準決勝の慶應義塾大学戦でも53-10と、全く危なげない戦いぶりで7年連続の決勝戦へとたどり着いた。
2日に行われた慶應義塾大との準決勝という大舞台においても「たぶん次の試合は筑波大学さんになると思うので、(慶大と同じように)キック多くなるかなと思い、少しキック多くなってもいいからキック処理をしていきながら我慢強く戦っていこうと。ここまではカウンターアタックばかりだったので、キックを取り入れるとどうなるのかイメージを持ちたかった」(岩出雅之監督)という“次”に向けた新たなゲームプランを試すことができるほどの余裕しゃくしゃくぶり。

大学選手権での前人未踏の6連覇を目指す一方で、その先に控える日本選手権での打倒トップリーグを公言しているだけに、そんな余裕も当然と言えば、当然かもしれない。

そんな王者は昨秋10月18日の関東対抗戦での対戦で筑波大に31-10と快勝している。

常にチーム全体の成長に目配りをしながら先を見据えた戦いを続けて常勝軍団を作り上げた岩出監督は、決勝戦でのポイントを以下のように語る。
「秋はブレイクダウンで受け身になる場面もあった。筑波大が手応えを持ったようにも感じているので、しっかり対応して、プレッシャーを与えていく。筑波大にはスピードある選手がいるので、そこをしっかり抑えて決勝戦で勝つための正確なプレーを心がけたい」

一方、「(準決勝では)慶応大の方が激しかった部分もある。自分たちのひ弱さが出た。ブレイクダウン、スクラム、ディフェンスで修正点がある。筑波大はブレイクダウンが強いので真っ向勝負したい。そこが一番のキー。FWのセットプレーを安定させて、FWとBKが一体となるダイナミックラグビーを見せたい」というのは、落ち着いた判断力と正確なプレーで帝京大アタックの方向性を統制するSH流大主将だ。

準決勝からCTB権裕人が復帰したのに続いて、決勝戦では日本代表合宿に呼ばれた経験を持つHO坂手淳史も先発メンバー入り。
大学選手権での勝ち方を知り尽くしている帝京大らしく、きっちりピークを合わせて2年ぶりとなる筑波大との頂上決戦に臨む。

試合写真

2年生ながら落ち着いた司令塔ぶりを見せるSO松田。SH流主将とともにFW、BK一体のダイナミックなスタイルでV6を目指す帝京大のキーマンとなる

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試合写真

準決勝では東海大に接点で重圧を受ける場面も多かった筑波大。王者・帝京大にブレイクダウンで健闘できた時、初の大学日本一が見えてくる

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「ブレイクダウンで勝負」(帝京大・流主将)
「接点がキーワード」(筑波大・古川監督)

全く持って揺るぎのない盤石なシーズンを過ごしながら6連覇に王手をかけた王者・帝京大に対して、苦しい戦いを続けてきたのが筑波大学。
関東対抗戦Aグループでは、帝京大だけではなく、早稲田大、明治大、慶應義塾大に敗れて5位となり、ギリギリ大学選手権出に滑り込んだ。

それでも、「(シーズン序盤は)ケガ人も多く、チームとしての方向性も定まっていなかったのが、試合を重ねるごとに自分たちの強み、負けてはいけない部分が明確になってきた」と、今季戦列を離れ続けた松下真七郎主将に代わってゲームキャプテンを務めてきたFL水上彰太FWリーダーが振り返るとおり、厳しい戦いを続けることでチームは大きく成長。
セカンドステージでは、対抗戦で21-41と完敗していた明治大(43-7)、関西王者の関西学院大(60-12)、アタッキングラグビーで関東リーグ戦を盛り上げた大東文化大(44-22)を圧倒して、ファイナルステージ進出を果たした。

そして、迎えた準決勝では、大型FWの東海大に対してセットプレーで後手に回り、3-16と劣勢のままラスト10分を迎えたが、34分、36分と、わずか2分間に2トライを重ねて、鮮やかに逆転勝ち。
「1年間大事にしてきたキーワード」(古川拓生監督)という接点で劣勢な部分はあったが、「最後まで集中力切らさずプレーするのが目標。最後の10分で相手の足が止まったのを感じた」というフィットネスで勝ち切って、勝負強さを見せた。

前述のとおり、今季はケガ人に苦しんだ筑波大だが、日本代表WTB福岡堅樹はセカンドステージの明治大戦から復帰し、決勝でも先発メンバーに名を連ねている一方、対抗戦終盤に戦列に戻ったSO山沢拓也が再び負傷したのは痛いが、なんと松下主将が最後の大舞台でCTBとして先発復帰。
ブレイクダウン、そしてディフェンスというキーエリアでの健闘のためにも、チームの精神的支柱が陣頭指揮を執れる意味合いは大きい。

前述どおり、10月の対戦時にブレイクダウンでプレッシャーを受けた感触も持つ帝京大だが、筑波大が2ヶ月前とはまるで違う完成度を見せているのは間違いないところ。

接点でファイトし続け、ディフェンスを崩されずにロースコアの展開に持ち込めれば、準決勝で見せたとおり一気にトライを取り切る能力も高いだけに、ライトブルーのジャージが無敵艦隊と言っていい赤いジャージの軍団の連覇を止めて初の頂点に立つ可能性が見えてくる。

試合写真

昨季、中村亮前主将中心に5連覇を達成した帝京大。流現主将(右から7人目)率いる今季のチームも偉業を続けることができるか

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試合写真

2年前の決勝戦では帝京大が39-22で筑波大を退けV4。筑波大は2年越しのリベンジを果たし、悲願の大学日本一なるか

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